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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
74/114

・74・情けなくて

……私は、そんなに弱く、ない、とミーは絞りだした。


キムが視線を上げる。


た、確かに、危機感足りなくて、危なかっしくて、全然、いろんな事分かってないかもしれないけどっ……、そこで喉が締まって、ミーは話せなくなった。


目からはボロボロと涙がこぼれている。


鼻も緩んで、グズグズしだした。


言っていて、自分の情けなさについに泣いてしまった。


悔しいのだ、とミーは気づく。


キムに守ってばかりで、自分の立場も分からず、頼りないミー。


キムを悩ませたくない。


苦しんでほしくない。


泣いてほしくない。


どうかいつもの柔らかい笑顔を見せてほしい。


けれど、ミーにはそれを可能にする手段もなければ方法も分からないのだ。


それが悔しくて、情けない。


ポンポン、と優しく背中を撫でられた。


……ほら、とティッシュを手渡され、ズビズビと礼を言って鼻をかむ。


「……ごめんね」


湿り気のあるそれに、あぁもう!とますます情けなさが募る。


隣で背中を撫でてくれるキムに腕を伸ばせば、そっと抱きしめられた。


自分も泣きそうなのに慰めてくれるキムの温かさに、涙が戻ってきそうだ。


肩口に額を擦り付け、キムにしがみついて、この胸の中で溢れかえる混沌とした感情を押し込めようとする。


キムはそんなミーの頭を優しく撫で続けた。











不意に目を覚まして、ミーはゆっくりと瞼を開いた。


視界には見慣れた天井。


視線を動かせば自分の家で、どうやらベッドに眠っていたようだ。


そこまで認識して、ミーはぼんやりとおかしい、と思う。


しかし、何がおかしいのか、すぐには分からない。


そこでガチャリ、と金属音が鳴って、扉を開けてキムが入ってきた。


外はまだ夜のようで、背景は真っ黒だ。


上目に見つめるミーに気づいたキムははんなりと微笑み、


「……起きた?」


と聞いてくる。


薄茶色の瞳と数秒見つめあって、唐突に線が繋がった。


あれ、なんで私寝てるんだ!?と。


ばっと身を起こして、キョロキョロと周りを見回す。


キムはいつの間に着替えたのか、服装が変わっていて、何か買ってきたのか、膨らんだビニールフクロをローテーブルに置いた。


ミーは頭に手を当てて、必死に考える。


私、さっきまで泣いてたはず…だよね?と。


泣いていた時から今の状況へと繋がる記憶が全くなかった。

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