・74・情けなくて
……私は、そんなに弱く、ない、とミーは絞りだした。
キムが視線を上げる。
た、確かに、危機感足りなくて、危なかっしくて、全然、いろんな事分かってないかもしれないけどっ……、そこで喉が締まって、ミーは話せなくなった。
目からはボロボロと涙がこぼれている。
鼻も緩んで、グズグズしだした。
言っていて、自分の情けなさについに泣いてしまった。
悔しいのだ、とミーは気づく。
キムに守ってばかりで、自分の立場も分からず、頼りないミー。
キムを悩ませたくない。
苦しんでほしくない。
泣いてほしくない。
どうかいつもの柔らかい笑顔を見せてほしい。
けれど、ミーにはそれを可能にする手段もなければ方法も分からないのだ。
それが悔しくて、情けない。
ポンポン、と優しく背中を撫でられた。
……ほら、とティッシュを手渡され、ズビズビと礼を言って鼻をかむ。
「……ごめんね」
湿り気のあるそれに、あぁもう!とますます情けなさが募る。
隣で背中を撫でてくれるキムに腕を伸ばせば、そっと抱きしめられた。
自分も泣きそうなのに慰めてくれるキムの温かさに、涙が戻ってきそうだ。
肩口に額を擦り付け、キムにしがみついて、この胸の中で溢れかえる混沌とした感情を押し込めようとする。
キムはそんなミーの頭を優しく撫で続けた。
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不意に目を覚まして、ミーはゆっくりと瞼を開いた。
視界には見慣れた天井。
視線を動かせば自分の家で、どうやらベッドに眠っていたようだ。
そこまで認識して、ミーはぼんやりとおかしい、と思う。
しかし、何がおかしいのか、すぐには分からない。
そこでガチャリ、と金属音が鳴って、扉を開けてキムが入ってきた。
外はまだ夜のようで、背景は真っ黒だ。
上目に見つめるミーに気づいたキムははんなりと微笑み、
「……起きた?」
と聞いてくる。
薄茶色の瞳と数秒見つめあって、唐突に線が繋がった。
あれ、なんで私寝てるんだ!?と。
ばっと身を起こして、キョロキョロと周りを見回す。
キムはいつの間に着替えたのか、服装が変わっていて、何か買ってきたのか、膨らんだビニールフクロをローテーブルに置いた。
ミーは頭に手を当てて、必死に考える。
私、さっきまで泣いてたはず…だよね?と。
泣いていた時から今の状況へと繋がる記憶が全くなかった。