・71・意味深
悩みが増えた。
ミーは何度目か分からないため息をつきながら思った。
現在、大学後のいつものバイト中だ。
ミーは大学から15分程の通り沿いのファミレスで、ホールのバイトをしている。
その日の最終講義にもよるが、大抵午後6時から9時半までのシフトで働いていた。
高校時代からもう6年程働いていて、バイト仲間の中ではベテランだ。
注文を取るのも、掃除もほぼ無意識で行えるため、最近はバイト中に考え事をする事が多くなっていた。
前からあった悩み。
自分は本当にヘキサアイズかどうか、といもの。
誘拐された時の事を思い返すも進展はない。
実はヘキサだったらしいリリにさえ気づかれなかった事が、さらにミーに追い打ちをかけた。
そして、最近増えたもう一つの悩み。
それは、キムの意味深な発言の事だ。
そもそも、初めて言葉を交わした時から、キムはそんな物言いをしていた。
ミーには理解できない、またはすぐには分からない言い回し。
さらには、尋ねたとしてもごまかして、教えてくれない事も多い。
リリがヘキサだとミーに伝えた次の日に、キムはもう一度リリに会った。
そして連絡先を交換して、そこからミーはどんな展開があったのか分からないが、リリはミーに話しかけてこなくなった。
いや、正確には見かければ挨拶をするようになって、しかし、一定距離には近づいてこなくなった。
連絡先を交換して後、バイト先にミーを降ろしたキムは、
『……後は、オレが対処するから。……ミーはもう、あいつと関わったら…だめだ、よ?』
にっこりと笑ってそう言った。
圧力を感じるそれに、ミーは頷くしかなく、自分から声をかけることはしてない。
リリの態度を見るに、言葉通り何かしたのだろう。
けれど、ミーはいろいろと納得ができていなかった。
気になる事がたくさんあるのだ。
キムに言われた言葉。
『……ミーは、おいしそうなんだよ?……しかも、とっても』
『……あいつは、オレを狙ってるんじゃない。……ミーを、狙ってるんだよ』
以前キムが泣きそうな雰囲気を出した時、ミーの事を『おいしそう』とこぼした。
しかし、おいしそうと言われても、ミーは食べ物ではないのだ、どういう意味か全く分からない。
キムをどう悩ませているのか、ミーには検討もつかなかった。
そして、なぜミーがおいしそうだと、リリがミーを狙うのだろうか。
いや、そもそもミーを狙うという事自体意味不明だ。