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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
69/114

・69・リリは、

キムの微笑みは標準装備だ。


機嫌の良し悪しに影響されない。


実際、見かけはにっこりしたのに、ミーからすれば明らかに怒っていたりする。


オロオロと、唇を噛み締めて考え込むミーの唇を、キムが親指でそっとなぞる。


それにハッとして、目を上げれば、キムが真剣な眼差しでミーを見つめていた。


ミーの顎に指を添えて、キムは顔を近づける。


その瞳はすっと紫に光り、ミーは吸い込まれるように見つめ返した。


「……ミーは、さ…。……ここまで近づいても、オレのヘキサのにおいは…分からないでしょ?」


鼻と鼻が触れ合いそうな距離で、キムは囁く。


その低い声音に、わずかに湿り気が交じった

事に、ミーは気づく。


そして言われた言葉に、なんとなく、キムが言いたい事を悟ってしまった。


超至近距離。


あと少しでキスできてしまうような距離に置いても、ミーに分かるのはキムの髪の香りくらいだ。


以前気になって尋ねれば、某爽快感が売りの男性用シャンプーを使っているらしく、爽やかな印象を持った香り。


ミーはわずかに首肯して、目を伏せた。


「……オレはね、嗅覚が特化してる。……ミーの甘いにおいと、他の人間のにおいを……区別できる。……ヘキサのにおいも、同じ。……他のヘキサは、同種が分かるだけ。……でも、オレは、オレのにおいと…ヒロ達五人のにおい、そして他のヘキサのにおいが、区別できる」


囁くキムの声は、湿り気を増していって、ミーの胸を締め付ける。


あぁ、またキムが泣きそうになってる、と。


なにか、悩んでいる。


私のせいで、とも思う。


「……昨日、ミーからとても濃く…知らないヘキサのにおいが、した」


ミーはハッと視線を上げた。


キムは微笑みを取り戻していて、でもそれはどこか歪んでいる。


ミーには、もう事態が完全に理解できてしまった。


それって……、と言いかけたミーの唇に人差し指を立て、キムは止める。


「……ミーは、人とぶつかったって言った。……オレは、まだ偶然…だと考えたけど……」


次の日、私に声かけてきた、とミーが続けると、キムはうんと頷いた。


ミーはふー、と少し深呼吸をして、キムの瞳をまっすぐに見据える。











リリちゃんは、ヘキサアイズなんでしょ?











ミーの言葉に、キムはもう一度、歪んだ笑みで首肯した。

2016/3/21

誤字:自体→事態に修正。

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