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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
68/114

・68・怒りのキム

キムが怒っている。


それはもう、完全に怒っている。


ミーは慄いていた。


慄きを通り越して、もはや怯えてしまう。


美人の不機嫌顔は恐い。


真顔も恐い。


それと同じくらい、普段優しい人は、怒るととても恐いという。


めったに笑みを崩さないキムが、表情を無にしている。


それだけでも結構恐いのに、雰囲気さえもピリピリとして、いかにも怒ってます、という空気が恐い。


さらに言えば、その怒りの理由がミーには思い当たらないからなおさら恐い。


とにかくコワイコワイコワイと心中念仏のように連呼しながらも、ミーは大人しくキムについていった。


ヘルメットを渡され、装着。


先にバイクに乗り、次に跨ったキムの腰にしっかりと腕を回す。


これを、変に恥ずかしがったり遠慮すると、大変な事故に繋がると言い聞かせられたため、羞恥心を黙殺してやっている。


いつもは一言声をかけてから行う発進も無言で、キムの怒りの度合いが感じられた。


そのまま痛い沈黙と共に、バイクはなぜかバイト先のすぐ手前で止まる。


キムはミーの手を引いて、そばのカフェに入った。


二人ともホットの紅茶に、彼はベイクドチーズケーキ、ミーにはガトーショコラを注文する。


いつの間にか、好みは完璧に把握されていた。


キムはココアが好きな事といい、立派な甘党男子だ。


状況がつかめないミーが困惑していると、……バイトの前にお説教、とキムが説明する。


思わずえっ?と声が出たが、じとりと見据えられて、視線をそらす。


数分して注文したものが届くと、


「……ミーは、危機感が足りない」


開口一番、低い声音でキムは言い放った。


うっ、と言葉に詰まりながら、私何しちゃったんだろ!?とミーは必死に理由を探す。


正門にいた時は、まだ普通だったと思う。


キムが怒るようなきっかけは、どこにあっただろうか。


ちょっとイラっとしてキムを睨んだ時?


冷たい雰囲気はそこから感じたが。


いや、その前の、リリに率直な質問をした時?


普段のキムなら、もっと穏やかな言葉を選んだはずだ。


いや、もしかすれば、合わせたい人がいる、と連絡した時かもしれない。


何十人と言い寄られ、キムも本当は嫌気が差していたのではないだろうか。

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