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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
67/114

・67・キムとリリ

儚げに笑むキムはミーを見つめて、頭をそっと撫でる。


「……お疲れ様。……今日は、何もなかった…?」


優しい手つきにはにかみながら、うんと一つ頷く。


……良かった、と息を吐いたキムは、すっと視線をミーの横にずらした。


ミーは一気に緊張して、身体が強張る。


横目に見れば、リリは潤んだ眼差しでキムを見上げている。


恋する乙女そのものだった。


キムはわずかに首を傾げ、


「……君、は?」


とリリに尋ねた。


リリはそれにビクッとして、ミーの腕を掴む力が強くなる。


「ア、アタシは、その、えっと、ミーちゃんに、あの」


と、要領の得ないリリの言葉に冷静になったミーが、キムと友達になりたいんだって、と言ってあげる。


少し、いや結構シャイなリリの事だから、いきなり好きみたいとか、付き合ってほしい、とは言わないだろうと考えての言葉だった。


キムは一瞬ミーを見て、またリリに視線を戻すと、目を細める。


「……オレ、と友達…?……彼氏じゃ…なくて、いいの?」


ミーの気遣いも虚しく、キムが率直な質問を投げかけた。


すると、案の定、リリはもう林檎もかくやという程赤くなり、ぷしゅーという音が幻聴で聞こえそうな様子で俯いた。


あちゃー、やっぱりショートした、とミーはなんとも言えない気持ちでリリを見つめる。


と同時に、むっとキムを見上げ、せっかく私が気遣って遠回しな言い方をしたのに!という気持ちを込めてちょっと睨んだ。


キムはミーを見下ろすと、わずかに笑みを深める。


それがほんのりと冷たくて、ミーはあれ?と思う。


キム、怒って、る……?と。


なんだか冷や汗が出そうな、ピリピリとした空気をまとったキムに、ミーは戸惑って目を泳がす。


しばし頭頂に刺すような視線を感じていたが、


「……ミー、バイト遅れる。その子は、また後で、ね」


言ってミーの手を引いたキムに引っ張られ、慌てて前を向いた。


するりと腕がとかれ、リリを振り向けば、涙目で縋るようにミーを見つめている。


ま、また明日ね!と叫んだミーに、リリは黙ったままこっくりと頷いた。


ずんずんと大股に歩くキムに合わせて小走りしながら、ミーはこっそりとキムの表情を窺う。


――真顔だった。


ひっと息を呑んでしまった程、綺麗で、怖かった。

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