・66・気が進まない
ミーの言葉に目を輝かせたリリに、ミーは引っ込みがつかなくなってしまった。
じゃあ、今日ほんとにお願いできるかなぁ…?と尋ねたリリに頷き、気づかれないようにため息をつく。
心中に不安が垂れ込む。
最近の悩みより、重いかもしれない。
キムが初めてミーの家に来る時以来の不安感だった。
なんとなく、キムがリリを気に入ってしまうのではないか、と考えてしまう。
そうなっても、キムはミーの安全のために送迎を続けるかもしれないが、彼女持ちの人に図々しく頼れる程ミーは図太くない。
放課後が待ち遠しくないなんて初めてだ、と思いながら、ミーは昼食を終えた。
・
・
・
そして時は無情にも流れ、今日の講義が終わる。
いつもなら真っ先にキムに連絡を入れるが、今日はリリと合流するため、彼女がいるはずの講義室に向かう。
ミーがいた講義室からそれほど離れてないそこに歩きながら、キムに、
【終わったよ】
と共に、今日合わせたい人がいる、と送る。
ほんの数秒で返ってきた返事は、
【わかった。すぐ行く】
といつも通りの簡潔なものだった。
それになぜかむっとする。
少しは動揺するべきじゃない?と。
もちろん、ミーはこれまでに何十人と紹介してきたし、キムはされてきたのだから、一種慣れがあるのだろう。
しかし、リリは今までの女子たちとはタイプが違う。
その事が、知らずミーの心を揺らしていた。
他にもっと、こう、誰?とか聞いてほしかった、と言いようのない苛立ちを抱く。
「……あ!ミーちゃん!」
スマホを睨みつけていれば、リリが手を振りつつやってきた。
「大丈夫?なんか機嫌悪いの?」
覗き込んできたリリになんでもないよ?と笑いながら、キム来るって、と伝える。
途端に顔を赤らめてソワソワしだすリリ。
二人は並んで正門へと向かった。
・
・
・
キムは珍しく、門の内側にもたれて待っていた。
ミーが人を紹介する時は、バイクを離れた所に置いて、門の所にいるようにしているようだった。
ミーはキムに手を振る。
それに気づいて振りかえしたキムは、門から体を離して、二人に近づいてきた。
不意に腕を握られ、びっくりして横を見ると、
「どど、どーしよ……!?ほんとにイケメンだ!こっち来るしー!ほんとに彼氏じゃないの!?」
顔を真っ赤にしたリリが、小声で言ってくる。
それに苦笑し、大丈夫、違うよ、と否定し、安心させていれば、とうとう目の前にキムが来た。