・65・狙い
「ね、ね、あのイケメンとはどういう関係なの!?」
恒例のように来た質問に、彼氏デハアリマセン、と機械のように答える。
「ど、どうしたの?すごい棒読み!」
驚いたように瞬きするリリに、ミーはその質問を百回はされたと、わずかにぶすっとして言ってしまう。
それを聞いたリリは納得したようにあー、と口を開け、うんうんと頷く。
「そうだよー。みんな気になってるもん。え、でも、ほんとに彼氏さんじゃないの?」
うんっ、と力強く肯定すれば、
「そっかー。彼氏さんじゃないのかー。……じゃー、アタシにもチャンスある?」
宙を見つめて呟いたリリ。
その内容に、あぁ、リリちゃんこっちのタイプか、とミーは納得する。
ミーがキムに送迎されるようになってから、友人含め、たくさんの人にキムとの関係を尋ねられた。
そしてミーが恋愛関係にないと否定すると、ほんとにぃ?と疑ったのは友人達。
それとは違って、じゃあ紹介して!と迫ってきた人達がいた。
いわゆる肉食系というのか、恋に飢えているのか、それともイケメンが好きなのか、キムにアプローチしようと躍起になる人達に、一応ミーはキムを紹介した事があった。
しかし、ミーがしたのはそこまでで、その後の結果は知らない。
ただ、二人が恋愛関係にないと知った時あんなにやる気に溢れていたのに、後日校内で見かけるとミーに近寄ってこないので、おそらく尽く惨敗したのかもしれない。
そんな様子に、友人達はやっぱりミー一筋なんじゃん、と恋人説を信じてしまったのだが。
これはあくまでキムのプライベートな事になるため、ミーもキムに聞く勇気が持てない。
そんな事があって、最近はほとんどいなかったのだが、まだキム狙いの子がいたようだ。
リリちゃんは、キムの事好きなの?と聞くと、リリはハッとしたようにミーを見て、
「そ、そそ、それは!その!えっと!……まぁ、うん」
顔を赤らめて俯くリリに、今までとは違う子だなぁ、と思う。
積極的でガツガツ系女子ではなく、このようなちょっとシャイで元気な女の子なら、キムは付き合うのだろうか。
そんな事を思ってリリを眺めていると、少しもやっとする。
ちょっと困るなぁ、と苦笑した。
「ア、アタシなんかじゃ、無理、だよねー!」
リリが慌てたように笑って、勘違いさせちゃった、とミーは焦る。
そんな事ないよ!大丈夫だよ!と励まし、今日キムに紹介してあげる!と勢いで言ってしまった。
直後にやばっ、と後悔するが、もう遅い。