・63・邂逅
ぼんやりと考え込んでいたせいだろう。
どん、と鈍い音と共に、
「きゃあ!!!」
ミーは誰かに真正面からぶつかって尻もちをついた。
びっくりしながら前を見れば、同じ大学生だろう、華奢な身体に紺色のワンピースをまとい、ベージュのコートを着た女の子が座りこんでいる。
耳下ほどのアッシュブラウンの髪はふんわりとセットされていて、猫のような目は、カラコンなのか鮮やかな緑色。
彼女も予想外だったのか、ぽかんと口を開けてミーを見ていた。
彼女のらしき紺色のバッグからは、教科書やノート、ポーチやスマホが道に散乱している。
ミーは、ごごごめんなさい!!!と慌てて立ち上がり、散らばった物を集め始めた。
それに我に返ったのか、女の子も、
「ーーはっ!あ、こちらこそゴメンナサイ!あの、ありがとうございますっ」
二人してしゃがみこんで、なんとかバッグに収めた。
ミーは改めて頭を下げる。
考え事してて、前をちゃんと見てなかったのだ、と。
すると女の子も、
「いえいえ!私もおんなじです!ほんとにごめんね!荷物拾ってくれてありがと!」
わたわたと手を突き出して振りながら、謝る。
謝罪合戦を数秒したところで、お互いに頭を下げて別れた。
あと少しで門に着く、という所でスマホが鳴る。
【何かあった?】
一瞬、今のを見られていたのかとヒヤリとしたが、ミーは講義が終わった直後にキムに連絡している。
キムは本当にすぐに来るため、謝罪合戦のせいで遅くなってしまっただけだろう。
小走りで正門を抜け、道路でキムを探す。
「……ミー、こっち。……大丈夫?」
ちょっと前方にいたキムが手を振り、ミーはそこに駆け寄った。
そして、さっきの出来事を伝え、何かあったわけではないと説明する。
ちゃんと言わないと、キムはかなり心配した上に、気に病むという事が分かってきたためだ。
ただでさえ、ミーが『人間』のように見える事で、キムは色々と気を張っているのに、加えて心労をかけるような事はしたくない。
そう思う程度には、キムの事を大切だと思ってるんだよなぁ、とミーは自分で納得する。
先程の思考の続きに、ひとまずの答えを出して、ミーはうんと頷いた。