・62・見えない気持ち
悩みはあれど、ミーの生活にあまり変化はない。
キムの過保護が少し強くなり、ますます恋仲という誤解が大きくなっていたり、ヒロとオルの元にも灰原ウォーが訪れ、二人が《協会》の会員になったりしていたが、ミーは『人間』という立場のため、それはできなかった。
また、スズとユンに対する警察の調査も、もうすぐ終わりそうだという。
おそらく灰原ウォーが警察の身分を使って、内部から《協会》が影響させているのだろう。
未成年のヘキサは、普通親もヘキサの事が多く、生まれた時から《協会》に所属しており、ユンとスズは、オルが保護者役になって会員登録したらしい。
キムも一回目のウォーとの接触の後、会員登録手続きをしたようで、ミーはそれを知った時、自分一人だけ取り残されたような気がした。
元々ヘキサの能力を外では必要としなかった上、キムに厳命されてから、なんとなく家の中でも使っていない。
そのせいかミーは自分がヘキサアイズであるという事を、最近実感できなくなってきた。
たまに不安になり、鏡の前で六角瞳に変化させてみる。
すると、確かに瞳は変形し、不可思議に青く光る。
それを見て、やっぱり自分はヘキサだよなぁ、と思うものの、未だ分からない本能とやらが気になり、感染のきっかけが分からない事が、心の隅にわだかまりを作っていた。
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その日も、最後の講義を終え、ミーは正門に向かって歩いていた。
過保護が加速したキムは、ミーの遠慮も押し切り、大学終わりにも迎えに来るようになっていた。
バイト先に行くほんの数分の事なのに、とミーは思うのだが、実際そのほんの数分の間にウォーに近づかれた事もあって、強く反対ができなかった。
反対した理由は、あのくすぐったい行為が恥ずかしいのと、恋仲の誤解がますます強くなりそうだと考えたからでもあったが、案の定の自体になっている。
何度やっても慣れないのは、きっとキムの行為が純粋な善意だからなのかもしれない、とミーは思う。
友人達が言うような好意や、恋愛感情なら、もっと別の感情を抱くだろう。
そんな事を考えていれば、ふと、そういえば私って恋した事あったっけ?と思い浮ぶ。
スキンシップも、送り迎えも、そもそも手を繋ぐのだって、好きじゃなかったらしないよ!と友人達には言われるし、自分もキムにそうされるのは嫌ではない。
じゃあ、キムはミーの事を好きなのか?と聞かれると、それは分からないし、自分はキムが好きかと聞かれても、やっぱり分からない。