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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
59/114

・59・ココアの笑顔

キムがそばにいればその残り香が付くらしく、なるべく二つの匂いが混じった状態になるようにしようとした。


六人はこの県にどれだけのヘキサがいるか分からない。


隣県からミーの家まで、かなりの人数に目撃されている。


実際灰原ウォーは数日でミー達の元に派遣されてきた訳で、あの日も目撃者の中に当然ヘキサアイズがいただろう。


その時、ヘキサと人間両方の匂いをまとうミーはどのように映ったのか。


どれだけ周囲に人間がいようともヘキサはお互いが分かるのに、どちらともつかないミーは、かなり異様に思えたのではないだろうか。


しかも、放っておけば、人間と見分けがつかなくなる。


「……今も、ミーは完全に……甘い、よ」


握ったミーの片手を持ち上げ、鼻を近づけるキム。


その声音がなんだかしっとりしていて、ミーは手汗が出そうな焦りを感じ始めていた。


単純に匂いを嗅がれる事も恥ずかしいが、この話をするキムの様子が少しおかしい。


優しい標準装備の微笑は乾いてるし、穏やかな声もその裏の重さを隠しきれてない。


出会ってからたった数日。


しかし、初めて言葉を交わした時から、キムはミーを気遣い、守ってくれている。


分からない事を教えてくれて、いち早く危険への対策をして、ミーが知らなかった部分も含めてミーを守ってくれる人。


何が彼を悩ませているのだろう、とミーはミーなりに考えていた。


キムには、なんというか、いつものようにゆるゆると笑っていてほしいのだ。


あまり変わらない微笑の中でも、朝と夜、ココアを飲み干した後の笑顔が一番好きだ。


しかし、さっきも、そして今も、そのざらざらした微笑みでは、まるでキムが泣きそうに思えてならない。


キムが教えてくれる内容も、ミーにとっては無視できない重要な情報だったが、それと同じようにキムの抱える物を軽くしてあげたいとミーは思った。


ねえ、なんでそんな泣きそうなの?とミーは問う。


直球すぎるか、と自分でも思ったが、思いがそのまま口から出てしまった。


キムはピタリ、と一瞬硬直して、上目遣いにミーを見た。


ミーはドキドキしながらも、その視線を真正面から受け止める。


数秒見つめあって、先にキムが目を逸らした。


ミーの手を離し、口を片手で覆ってキムは大きくため息を吐く。


やっぱりまずい質問しちゃった!?と思いつつ、ミーが様子を見ていれば、


「……ミーは、おいしそうなの」


まるで駄々をこねるような口調で、キムは言った。

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