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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
51/114

・51・助っ人

ぺったりした笑顔のまま、ウォーはかくりと首を傾げる。


「笹キムさんが来る…?彼は現在お仕事の最中のはずですが」


訝しげな声に、は、はいっ、とビクビクしながらも肯定する。


キムの仕事場がどこか分からないが、おそらくバイクで来るから、そんなに時間はかからないはずだ。


「それは…今、貴女が彼を呼んだ、という事ですか?」


すっと目を細めたその表情は全然笑っていない、とミーは気づく。


ひたひたと募る恐怖を感じつつも、それには首を横に振り。


連絡するよう言われていた事、するとここに来る、と返ってきた事を、おずおず説明した。


ウォーは一瞬考えるように目を伏せ、


「……分かりました」


言って、道路の方へ視線を向けた。


それにふぅ…、と息をつき、ミーも同じ方向を見る。


素直に待ってくれる人で良かった、と胸を撫で下ろした。


そして一秒でも早くキムに到着してほしい、と思う。


正直この全然笑ってない男のそばにいる事さえ、ミーは怖い。


表情と口調が穏やかでも、どこか隠しきれない冷たさが滲み出しているのだ。











「……お待たせ。…大丈夫…?」


数分して現れたキムは、真っ先にミーの頬に手を添えた。


そっと顔を覗き込み、安否を問われたミーは、思わず涙が滲む。


うんうん、といつもの恥ずかしさもなくキムに目で訴えれば、眉を下げて、……ごめんね、と頭を撫でられた。


「ーーお仕事は宜しかったんですか?」


後ろからかかった声にハッとするミー。


急いで振り向くと、笑ってない笑顔でウォーが二人を眺めている。


ふと今自分がされた事と、今いる場所を思い出して、ミーは胸をかきむしりたいくらい恥ずかしくなった。


「……別に。……あなた、は?」


「灰原ウォー、と申します。笹キムさん、ちょうど貴方にも用があったので好都合です。ご一緒にお話しをさせて頂きます」


内心もがくミーの頭上で、そんな会話がなされ、三人は近くのカフェに入った。


ウォーは三方が囲まれた奥の席に座り、その対面にキムと並んでミーも座る。


お代はわたしが持ちます、とウォーが言ったが、キムは話を催促し、ミーも何も頼まなかった。


ウォーはコーヒーを注文し、ウェイトレスがいなくなった所で口を開く。


「さて、率直にお尋ね致しますがーーお二人はどこまでご存知なんですか」


手を組み、テーブルに身を乗り出して問うウォー。


その質問の内容に、ミーは……ん?と首を傾げてしまった。

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