・51・助っ人
ぺったりした笑顔のまま、ウォーはかくりと首を傾げる。
「笹キムさんが来る…?彼は現在お仕事の最中のはずですが」
訝しげな声に、は、はいっ、とビクビクしながらも肯定する。
キムの仕事場がどこか分からないが、おそらくバイクで来るから、そんなに時間はかからないはずだ。
「それは…今、貴女が彼を呼んだ、という事ですか?」
すっと目を細めたその表情は全然笑っていない、とミーは気づく。
ひたひたと募る恐怖を感じつつも、それには首を横に振り。
連絡するよう言われていた事、するとここに来る、と返ってきた事を、おずおず説明した。
ウォーは一瞬考えるように目を伏せ、
「……分かりました」
言って、道路の方へ視線を向けた。
それにふぅ…、と息をつき、ミーも同じ方向を見る。
素直に待ってくれる人で良かった、と胸を撫で下ろした。
そして一秒でも早くキムに到着してほしい、と思う。
正直この全然笑ってない男のそばにいる事さえ、ミーは怖い。
表情と口調が穏やかでも、どこか隠しきれない冷たさが滲み出しているのだ。
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「……お待たせ。…大丈夫…?」
数分して現れたキムは、真っ先にミーの頬に手を添えた。
そっと顔を覗き込み、安否を問われたミーは、思わず涙が滲む。
うんうん、といつもの恥ずかしさもなくキムに目で訴えれば、眉を下げて、……ごめんね、と頭を撫でられた。
「ーーお仕事は宜しかったんですか?」
後ろからかかった声にハッとするミー。
急いで振り向くと、笑ってない笑顔でウォーが二人を眺めている。
ふと今自分がされた事と、今いる場所を思い出して、ミーは胸をかきむしりたいくらい恥ずかしくなった。
「……別に。……あなた、は?」
「灰原ウォー、と申します。笹キムさん、ちょうど貴方にも用があったので好都合です。ご一緒にお話しをさせて頂きます」
内心もがくミーの頭上で、そんな会話がなされ、三人は近くのカフェに入った。
ウォーは三方が囲まれた奥の席に座り、その対面にキムと並んでミーも座る。
お代はわたしが持ちます、とウォーが言ったが、キムは話を催促し、ミーも何も頼まなかった。
ウォーはコーヒーを注文し、ウェイトレスがいなくなった所で口を開く。
「さて、率直にお尋ね致しますがーーお二人はどこまでご存知なんですか」
手を組み、テーブルに身を乗り出して問うウォー。
その質問の内容に、ミーは……ん?と首を傾げてしまった。




