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六角瞳  作者: 有寄之蟻
脱出編
5/114

・5・一人目、青年

すぐにガラスの雨はやみ、ミーはほっと息をついた。


そして、ガラスの時は壊し方を変えよう、と心に留める。


青年に目を戻すと、なんとガラスに傷つけられたのか血まみれになっている。


慌てて駆け寄ると、どこか覚えのある"いい匂い"に一瞬うっとりとする。


しかし、はっと我に返って彼に刺さっているガラスを取り除き始めた。


すると、


「………ぁ…の……」


青年が何か言った。


ミーはピタリと動きを止める。


じっと青年を見つめると、また、


「……あ……の…」


確かに青年が呼びかけてきていた。


ミーは返事するが、青年は反応しない。


そこではっと思いついて青年の耳を見れば、ミーが考えたように耳栓がされている。


それを外し、ミーはあらためて青年に声をかけた。


「……き、みは……だれ……?」


ミーは名前を言い、自分の今までの状況を話す。


そして、ガラスを取り除く作業を再開した。


その事に関して謝罪もする。


「……これ…ガラス……?き、みが壊、し…た…の?」


かすれ、所々途切れる青年の言葉。


ほとんど話してなかったんじゃないか、とミーは推測した。


その通りだと答えると、


「……同じ、にお…い……。君も、へ…キサ……」


青年は不思議な言葉と共に、かくりと力が抜けたように沈黙した。


死んじゃったのでは!?とミーが目隠しを外せば、端整な顔が現れ、どきりとする。


顔と胸に手をあて、心臓が動いている事、体温がある事を確認し、安心する。


どうやら気絶したらしい。


ミーはささっとガラスを取り終わり、青年の周辺から触手を使ってガラスを遠ざける。


さりげなく刺さっているが、触手は神経がないのか、感触も痛みもなく、さっと振れば簡単に抜けた。


そして、触手を包丁の形に変え、足枷を切るように考える。


叩く、殴る以外が可能かという実験も兼ねていたが、案の定すぱっと金属製の足枷は切断された。


触手の硬度だけでなく、刃物のイメージとして包丁型にしたのも良かったのかな、とミーは思った。


腰に巻かれていたものは布製だったが、彼女の腕力では千切れなかったため、これはハサミ型にした触手で切った。


それは太いベルトがついた20×20程の黄色い厚い布で、触っていると、なぜかぞわぞわと悪寒が走る。


気持ち悪いし、拘束具の一種だろうからと、ミーはそれを遠くに放った。


最後に、青年の脇下に腕を入れ、まるで抱きしめるような姿勢をする。


青年は手枷によってわずかに床から浮いているため、手枷を切った時支えるためだ。


触手を鎌の形にして、一気に振る。


抵抗なく手枷は両断され、青年の体重がずしっとミーにかかった。


ふらふらしつつ、触手も使って青年を床に横たえた。


ミーがさっき見た所で、ガラスの小部屋は五部屋はあった。


青年は気絶してるし、少量だが出血しているため、そばを離れる事に躊躇してしまう。


しかし、他の拘束されてる人も早く解放した方がいいだろう。


ミーは迷いつつ、大きな出血がないか青年の肌を自分の服で拭う。


すると、おかしな事に気づく。


確かに先程まであった無数の切り傷が、なかったかのように滑らかなのだ。


血はついてるし、出血している時をしっかりと見たのに、青年はなぜか無傷になっている。


ミーはもやもやとした気持ちを覚えながら、大まかに出血の確認をし、命の危険はないと判断して立ち上がった。


青年の腕には点滴らしき管があり、その他にも服の下から何本も管が出ている。


下手にいじるのは怖かったため、他の小部屋に行こうと片足を前に出した時、それを掴まれた。

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