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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
49/114

・49・見知らぬ男

ミーは呆然と男を見上げながら、脳内は急速に回転させていた。


この男性がなぜ自分に声をかけてきたのか。


なぜ自分の名前をフルネームで知っているのか。


一番に思いついたのは、キムが危惧していたとある可能性だった。


それなら、その二つの条件に合う。


……あの、誰、ですか?と恐る恐る尋ねてみる。


すると男は胸の内から黒い手帳のような物を取り出し、その内側を掲げて、


「あぁ、わたしは灰原(はいばら)ウォーというものです」


はぁ、とミーはため息とも相槌ともとれる声をもらす。


その目は手帳の内側にある"刑事"という文字をしっかりと見つめながら。


そう来たか…、と自身でもよくわからない感想が浮かぶ。


ユンとスズは長期間行方不明になった事で、警察に調査されている事は聞いていた。


しかし、ミーは実質行方不明になっていなかったため、警察の接触は全く予想していなかった。


どの路線からミーに辿り着いたのだろう、と少し考えるが、やはり動揺のせいかうまく思考が働かない。


キムが言っていた可能性の範囲にも入っているが、一般市民には馴染みのない存在に、知らず恐怖を抱いていた。


ミーはそんな心中の嵐を表情に出さない努力をしつつ、なんで警察の人が…、と口にする。


手帳をさっとしまったウォーは僅かに目を細め、


「藍塚さんにお聞きしたい事がありまして。少々お時間頂けますか?」


口調は慇懃だが、どこかあの冷徹なオルにも似た強制力を感じる声だった。


ミーはとっさに、この後バイトがある、と断る。


言ってからどうしよう!?とウォーを窺えば、えぇ、承知してます、と頷かれる。


ん?と違和感を感じて首を傾げるミー。


ウォーは張り付けたように変わらない笑顔で、


「藍塚さんの今日のご予定は、この後午後9時半までアルバイト、その後(ささ)キムさんに家まで送ってもらい帰宅、およそ12時過ぎに就寝、ですよね?」


すらすらと語った。


ぞわっと悪寒が走って、目を見張り、ミーは服のすそを握る。


今目の前の男が言った事は概ね正解だ。


概ねなのは今日の就寝時間が分からないからだが、ほとんどその時間に寝るのがミーのいつもの習慣だった。


怖い、と純粋にミーは思った。


きっとストーカーされた被害者は皆こんな気持ちになるのだろう。

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