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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
47/114

・47・新しい日常

おはよう、と返してキムを中に入れる。


小さなローテーブルにココアをおいて、ミーは本を片付けた。


キムはココアが好きなようで、朝ミーの家に来るたび、恒例のように飲んでいる。


そろそろ冬と呼んでもいい温度になってきて、寒暖に強いヘキサだけども、あったかい物を出した方がいいよね、とミーは考えたからだ。


キムは毎度、ありがとうと礼を言ってからゆっくりと飲みほし、ごちそうさま、と頭を下げる。


そしてさっと流しにつけるまでが一連の動きで、


「……じゃ、行こう」


キムの言葉に、今日必要な物を入れたリュックを背負ってミーは頷く。


部屋を出て施錠した後、慣れた動作でキムの待つバイクの後ろに跨った。


ミーが家に着いて、眠りから覚めた後、それを見守っていたキムが、聞きそびれていた理由を語ったのだ。


いわく、毎日送り迎えをする、と。


家に行きたかったのは場所を知るためで、やはりオルやユンが危惧したような動機は全くなかった。


しかし、その内容にミーは当然のように驚く。


なぜ?と。


理由も必要性も全然見当もつかない。


キムに問えば、その答えをとうとうと言われて、なるほど、とミーは納得した。


正確には完全に信じた訳ではなかったが、キムの告げたとある可能性は現実になる確率が高いと思われたからだ。


そしてそれが現れた時、確かにキムがいた方がいい、とミーも思った。


そんなそこそこの話し合いの結果、朝の通学と夜のバイトからの帰りは、必ずキムが送り迎えをすることに決定した。


それはそれで通う労力も減るしね、などと打算的思考もちょっと浮かんだミー。


今は大学へ向かっている。


この件にはメリットもあるが、デメリットもあると気づいたのは、送り迎えをしてもらってすぐだった。


大学の正門から少し離れた所でバイクは止まる。


道を歩く学生たちからの少なくない視線を感じながら、ミーはバイクを降り、礼を言った。


キムはミーの頬を一撫ですると、


「……気をつけて、ね。……終わったら…連絡して」


そう囁いて、さっとバイクで去っていく。


ミーはいつもいつも行われるこの行為に慣れつつも、胸に残るキムの声に毎度くすぐったくなった。


二、三度深呼吸をして気をいれかえ、校内へと入る。


と、後ろから首に腕を回され、今日も朝からイチャついてましたね〜、とからかう声がかかる。


友人の一人だ。


キムに送ってもらうデメリット、それは友人や同僚からのからかいと詮索だった。

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