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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
44/114

・44・ミー、帰宅

ミーの家はキムのアパートと同じような造りで、三階建てだ。


その一階で、さっき見た方法を真似して部屋を開け、ミーは無事帰宅を果たした。


オルに礼を言いお茶を勧めたが、


「いえっ、大丈夫ですよ。ぼくの家はこの近くですから、すぐ帰ります。ミーさんはしたい事もあると思いますし、それに、キムくんに悪い…いえっ何でもないです……」


後半慌てたように小声になり、聞き取れなかったが、オルはとにかく、スズさんとヒロさんを安心させてあげてください、と頭を下げて帰っていった。


ミーも確かに、と急いでスマホを取り出し、


【無事帰れました〜(*^^*)】


と自撮り写真と共に送り、オルはもうすぐ家につくだろう事、ユンはキムが送っていった事も伝える。


スズからは、


【良かったです!(≧∇≦)】


ヒロからは、


【了解】


と簡潔に返ってきた。


数日ぶりの我が家を見渡す。


玄関に立って、全てが見渡せる小さな1K。


そこそこの経済状況で、あまり部屋の中を飾るタイプでもないミーの部屋は、女子にしては簡素と言えるだろう。


ハッとしてスマホで日にちを確認すると、ミーが誘拐された金曜日から一日経った土曜日だった。


すでに時刻は夕方になっていて、しまっているカーテンの間からオレンジ色の光が室内に入ってくる。


私が誘拐されたのって、たった一日だったんだ、となんだか拍子抜けてしまう。


あの洋館の地下で、たくさんの異常と非日常を経験したせいで、何日も過ぎている感じがしていた。


実際は、想像するに、ミーは金曜日の夜に誘拐され、恐らく真夜中に目を覚まし、また気絶して土曜日の早朝にヘキサとして目覚め、それから五人と出会って夜明け頃に脱出できたのだろう。


室内は金曜日に通学前に片付けたそのままだ。


他にこの家に来る者などいないのだから当然なのだが、ミーはそれをすごく不自然に感じた。


そして、五人の事を思う。


ミー以外の五人は、少なくとも五日以上監禁されていたという。


ヒロは十日だったらしいし、キムは五日くらい、オル、スズ、そしてユンはもっとだろう。


たった一日、目覚めていた間だけならたった数時間しか体験してないミーでさえこうなのだ。


もっと長い間あの場所で、もっと異常な経験をした五人は、果たして日常に戻る事はできるのだろうか、とミーは心配になる。


日常に戻る、というより、日常を受け入れられるのだろうか。


もはや人間ではなくなってしまった身体で、親しい人に事情を話す事さえできず、人間のフリをして、当たり前だった日々を過ごす事ができるだろうか。

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