・43・二手に分かれて
キムは着替えていた。
Tシャツにジャケットを羽織り、ジーパンにスニーカーとラフな格好だ。
紺色のボディバッグを背負い、鍵を閉めて、……お待たせしました、と詫びた。
スマホで四人は写真を撮り、キムはそれをスズとヒロに送信する。
そしてキムは三人をアパートから少し離れた月極駐車場に案内して、
「……オレ、バイク持っ…てる、から……ユンを、送って…いこうと、思うん…だけど」
そう提案した。
…意外すぎる、とボソリとミーは呟く。
キムはよくわからい人、だったが、わりと押しが強くてアクティブな人かもしれない、と考えを改めてみる必要がありそうだった。
どうしますか?とオルが尋ねると、いや、お願いしたいですけど…と何か躊躇った様子を見せる。
ちらちらとミーを見やり、ミーがなんだろうと首を傾げると、
「……君を…送った後、でも……行ける、し」
キムがそう言えば、じゃお願いします!とユンは頷いた。
ミーは沈黙したまま、そっと目を逸らした。
「で、では、ミーさんはぼくが送る、という事でいいですか?」
顔を覗き込んできたオルに後ずさりつつ、大丈夫です、と返事をし、ここで四人は二手に別れる事に決まった。
キムは駐車場に入り、一台の小型のバイクを引きずってくる。
座席の下からヘルメットを出し、片方をユンに渡して、自身も装着する。
二人でバイクに跨った所で、オルに向かって、
「……ミー、をお願い…します、ね」
と言い、ミーには、
「……後で行くから…待ってて…」
真剣な瞳で伝えると、キムはバイクを発進させた。
走り去っていく背中を眺めながら、ミーはどうしよう…、という気持ちでいっぱいだった。
思わず遠い目をしていれば、ポンと優しく肩を叩かれ、
「……じゃ、ぼくらも行きましょうか」
哀れみのこもった視線でオルにそう言われ、力なく頷く。
キムの家からミーの家までは、一度大通りに出て、まっすぐと一度左に曲がり、次に右に曲がってすぐ裏通りの道筋だ。
それをオルに伝え、二人は歩き出した。
足を進めつつ、さっき道順を考えた事で、キムの家が割と近い事に気づいたミー。
家に来ると言っていたが、ユンを送ってからだといつ頃くらいになるのだろうか。
身の危険、という意味では全く心配はしてないのだが、このわき上がる不安の正体は一体何なのだろう。
知らず俯き、眉根を寄せていた。