・42・違うと思う。
ミーは知らず、体から力を抜いた。
そして、そっと床に座り込む。
「さすがに疲れましたね」
オルが気遣うように言う。
俺も疲れたっ、とユンもその場にあぐらをかき、くわっとあくびをする。
壁に体を預けミーはぼんやりと前方を眺めた。
アパートの前に車が二台すれ違える程度の道路があり、その向こう側は一戸建て住宅が並んでいる。
あまり人通りはなく、車の音も聞こえない。
まだ明るい陽がさしているが、もうすぐ午後も終わるのではないだろうか。
大通りを歩いている時、当たり前のようにたくさんの人々がいたが、ミー達はなんとなく視線を集めていた事を思い出す。
それをなんでだろとぼぉっと考え、服装のせいだろうか、と思いついた。
年齢も性別もバラバラな男女が皆同じ格好をしていたら、何かの衣装かコスプレかと思われたのではないかと。
他には何があるかな、と暇つぶしに考えていれば、
「……ミーさん」
とオルに呼ばれた。
なんですか?と聞けば、泣きそうな顔をきりっとさせて、
「さっきの事なんですが…本当に大丈夫なんですか?」
と真剣な声で尋ねてくる。
とっさに思いつかず、さっきの事とは?と聞き返せば、ミーの家にキムが行く事だ、と説明される。
あー、と思い出し、やっぱりまずいですかねぇ、と気弱に呟いた。
「まずいと言いますか、その、ミーさんは嫌ではないんですか?」
その問いをミーは否定する。
すると、危機感持った方がいいんじゃないすか?とユンが訝しげな顔で言う。
ミーは、んー…、と首を捻った。
話が食い違っている、と感じる。
キムの望んでいる事は、オルとユンが考えている可能性とは全く違うだろう、とミーはなぜか確信していた。
キムがミーの嫌がる事、危害を加える事は決してないと、ミーははっきりと主張できる。
その根拠はないが。
今更ながら、キムに理由を聞いていないなと気づく。
じゃ、本人に聞いてみます、と言えば、
「……いえ、あなたがいいなら、止める権利なんてぼくにはないんですけど、その、一応確認してください、はい」
と弱々しくオルは答えた。
ユンは、ミーさんって危なっかしいってよく言われません?と呟き、返答は期待してなかったのか、ミーから視線を外して反対を向いた。
キムが出てきたのはそれから少ししてからだった。