・40・不可解
……え。次ってキムの家!?となぜかびっくりする。
ばっとキムを見上げて、今度はギョッとした。
微笑みを絶やさないキムが、明らかに不機嫌です、という表情をしていたのだ。
美人が怒ると迫力は倍増しするとどこかで聞いた事があるなぁ、とミーが現実逃避しかける程度にそれは怖かった。
勢いよく上げた頭を今度はゆっくりと下ろそうとしたところで、
「……どうしたの」
柔らかいキムの言葉がかかる。
ギギギとぎこちなく視線を上げると、さっきの不機嫌顔はどこへやら、いつもの優しげな微笑をたたえたキムで、ミーはきょとんとしてしまった。
あれ?さっきまですっごい顔してたのに…、と瞬きながら、ポロッと言葉が零れる。
キムは僅かに首を傾け、ミーから目を逸らし、そして戻すと、
「……ミーの、家に……行ってもいい…?」
真剣な声音でそう聞いてきた。
唐突な内容に、キムの質問っていつもいきなりだなぁ、と頭の片隅で思う。
美しすぎて直視できなかったため、とりあえず少し目線をずらし、ミーは考える。
といっても、実は答えはすでに出ていた。
別にいいよ?くらいに軽くそう思ったのだが、はて、そう簡単に応えていいのだろうか。
ちょっと考えて、えっと…いつ来るの?と尋ねてみた。
「今日」
キムらしからぬ早さで返答され、もう驚きを通り越して冷静になる。
というか困惑し、ミーは助けを求めるように後ろを振り返った。
「…どうしたんですか?」
とっさに見つめたオルが、あの泣きそうな笑みで尋ねてくれた。
握られていたキムの手に力がこもり、わずかに痛みを感じる。
ミーがボソボソと説明すると、オルは眉を寄せ、
「それは…キムくん、ちょっと性急じゃないですかね」
言い聞かせるような言葉に、キムは何も答えない。
ミーがそっとキムを見れば、真剣な顔でミーを凝視していた。
猛烈に恥ずかしくなり、硬直するミー。
キムの手にさらに力が入り、さすがに耐えられず、痛っ、と声にでる。
すると、はっとしたようにキムが手を離し、ごめん……と小さく謝った。