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六角瞳  作者: 有寄之蟻
帰宅編
35/114

・35・スズとの別れ

なんとなく気まずい雰囲気になり、取り残された五人は互いを顔を見合わせる。


ミーはこの後どうするのか、指示をくれないかなぁ、とオルを見つめた。


とその時、扉の開く音にそちらを向けば、何かを手にスズが出てくる。


俯きがちに歩いてきたスズは、オルの前に立ち、スマホ持ってきました、と告げる。


我に帰ったようにオルは頷き、スマホに何か打ち込んでいく。


おそらくは彼の連絡先だろう。


オルは手を止めた後、それを隣にいたヒロに渡し、順次回すようにミー達にも言う。


五人の打ち込みが終わり、スズの元へスマホが帰ると、


「…スズさん、お家の方はお留守だったのかな?」


オルがそっと尋ねた。


スズは表情なく、ただ頷く。


「合鍵があるって事は、普段から留守が多いの?」


その問いにも、黙って首肯する。


ゆっくりと家を横目に見て、お母さんは、仕事が忙しいんです……、と言った。


その顔にはなんら感情が見られなくて、ミーはスズが心配になる。


思わず大丈夫…?、とこぼれた言葉に、スズは暗い笑みで、はい…と答えた。


全然大丈夫じゃないっ!!とミーは不用意な自分の発言を後悔する。


ヤバイヤバイヤバイと焦っていると、ユンがスズに近寄り、その頭をぽんぽんと撫でた。


ハッとしたように目を見開いたスズに、家着いたら電話する、絶対とれよ?とるまでかけ続けるからな、と告げる。


スズはパチパチと瞬いた後、うん、とふわりと笑った。


……ん?なんかいい感じ?とミーは焦りも忘れて首を傾げる。


スズの浮かべた笑顔は照れたふうで、さっきの空虚な暗さはもうない。


「ユンくんはぼくがちゃんと送り届けますから、待っていてくださいね。ヒロさんも、キムくんも、ミーさんも、家に着いたら真っ先にスズさんに連絡しますから」


励ますようにオルも言い、スズははいっ、とわずかに明るくなった声音で返事した。


そしてそろそろ別れようという流れになり、ミーはスズに駆け寄って抱きしめ、待っててね、と話す。


ヒロも何かあったらすぐに言いなさい、とスズの頭を撫でた。


キムは一言元気でね、とだけ。


ユンはもう一度絶対とれよ!と念押ししていた。


最後にオルが、いつでも相談に乗りますから、と告げ、五人はスズを置いて歩き出す。


スズは玄関先で五人を見送り、ミーは何度も振り返って手を振った。

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