・35・スズとの別れ
なんとなく気まずい雰囲気になり、取り残された五人は互いを顔を見合わせる。
ミーはこの後どうするのか、指示をくれないかなぁ、とオルを見つめた。
とその時、扉の開く音にそちらを向けば、何かを手にスズが出てくる。
俯きがちに歩いてきたスズは、オルの前に立ち、スマホ持ってきました、と告げる。
我に帰ったようにオルは頷き、スマホに何か打ち込んでいく。
おそらくは彼の連絡先だろう。
オルは手を止めた後、それを隣にいたヒロに渡し、順次回すようにミー達にも言う。
五人の打ち込みが終わり、スズの元へスマホが帰ると、
「…スズさん、お家の方はお留守だったのかな?」
オルがそっと尋ねた。
スズは表情なく、ただ頷く。
「合鍵があるって事は、普段から留守が多いの?」
その問いにも、黙って首肯する。
ゆっくりと家を横目に見て、お母さんは、仕事が忙しいんです……、と言った。
その顔にはなんら感情が見られなくて、ミーはスズが心配になる。
思わず大丈夫…?、とこぼれた言葉に、スズは暗い笑みで、はい…と答えた。
全然大丈夫じゃないっ!!とミーは不用意な自分の発言を後悔する。
ヤバイヤバイヤバイと焦っていると、ユンがスズに近寄り、その頭をぽんぽんと撫でた。
ハッとしたように目を見開いたスズに、家着いたら電話する、絶対とれよ?とるまでかけ続けるからな、と告げる。
スズはパチパチと瞬いた後、うん、とふわりと笑った。
……ん?なんかいい感じ?とミーは焦りも忘れて首を傾げる。
スズの浮かべた笑顔は照れたふうで、さっきの空虚な暗さはもうない。
「ユンくんはぼくがちゃんと送り届けますから、待っていてくださいね。ヒロさんも、キムくんも、ミーさんも、家に着いたら真っ先にスズさんに連絡しますから」
励ますようにオルも言い、スズははいっ、とわずかに明るくなった声音で返事した。
そしてそろそろ別れようという流れになり、ミーはスズに駆け寄って抱きしめ、待っててね、と話す。
ヒロも何かあったらすぐに言いなさい、とスズの頭を撫でた。
キムは一言元気でね、とだけ。
ユンはもう一度絶対とれよ!と念押ししていた。
最後にオルが、いつでも相談に乗りますから、と告げ、五人はスズを置いて歩き出す。
スズは玄関先で五人を見送り、ミーは何度も振り返って手を振った。