・31・家に帰るまでが脱出です。
ミーは大きく深呼吸した。
どれだけあの地下にいたのか分からないが、ものすごく久しぶりに外の空気を吸った気分だった。
顔には満面の笑顏。
嬉しくてそこで飛び跳ねたいくらいだった。
ニコニコしながら皆を振り向いて、ミーはすっとテンションが下がる。
キムの紫の瞳、ヒロの真紅の瞳、ユンの翠の瞳、スズのピンクの瞳、そして今最後に出てきたオルの白い瞳に、その問題について思い出したのだ。
慌てて自分の目を押さえるが、そんな事に意味はなく。
なんだっけ、目を変えようと考えるんだ、変われ変われ、丸くなれ、と必死に念じる。
しかし、鏡などはなく、変化したのか分からない。
オロオロとそばにいたユンの肩を掴み、目大丈夫!?光ってない!?と問い詰めてしまう。
だ、大丈夫っすよ!?と圧倒されてるユンにも気づかず、その言葉によかったぁ、と脱力した。
不意に腕を引かれ振り返ると、キムが真顔でミーを見下ろし、もう片方の手を伸ばしてくる。
首を傾げて見つめていると、それはミーの頬を包み、さらに腕を離して両手で顔を挟んで、キムは身を屈めてきた。
笑んでいるキムも美しいが、真顔ではまた違う美しさがあり、ミーはたまらず顔を背けたくなる。
しかしじっと我慢して紫の目を見返していれば、それはしゅっと光をなくし、ただ夜明け時の薄暗い中で濃茶にしか見えない丸い光彩に変化した。
目の前で見た不思議現象に思わず恥ずかしさも忘れて魅入っていると、キムはすっと手を離して視線を外してしまう。
それがなんだか残念に思ったが、かかったオルの声にその小さな感情を忘れてしまった。
「さて、これで脱出は成功したようですが、まだ問題は残っています。ここからは皆さん個人の事になるので、力にはなれませんが、せめて全員が家に帰れるまでは協力してほしいと思うのですが……大丈夫ですか?」
質問の形をとっているが、それはもはやただの確認だった。
五人に反対などないし、オルのリーダーシップはそれを当然だと感じさせるものがあったからだ。
皆が賛成すると、全員が家に帰るための作戦会議が始まった。
と言っても、安全のために、ひとまずこの場所から離れ、ついでに現在地を把握しようと、六人は歩き出していた。
しばらく歩き回り、大通りに出た所で、六人はオルの住む某県の隣の県にいるようだ、と判明した。
そして面白い事に、オルの住む県は六人全員が住んでいる県で、それぞれ市が異なるだけのようだ。
つまり六人は同じ県の別々の市から、それぞれ隣の県に誘拐されてきた、という事になる。