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六角瞳  作者: 有寄之蟻
脱出編
27/114

・27・沈黙の選択

涙をこぼしながら、ミーは思考する。


ここで起きた事を伝えるかどうか。


気づいてしまった事実を考えると、とてもではないが誰かに話す事などできない。


それだけでなく、話す事のできない事情もある。


そもそもの所、ミーには家族と呼べる人がもういないのだ。


両親はすでにおらず、兄弟のいない一人っ子。


祖父母もいないし、親戚とはほとんど交流がない。


では、友人は?


多少なりいるが、話せる相手ではないだろう。


警察はどうだろうか。


こんな突拍子のない、現実離れした話をすれば、病院を紹介されて終わりに決まっている。


結論は、考える前から出ていた。


最も早く静寂を破ったのは、キムだった。


「……オレは、話さな…い……」


涙を拭って彼を見ると、暗い微笑のまま、床に視線を落としている。


そうですか、と頷いて、


「ぼくも、誰にも話す気はありません。家族はいませんし、職場には旅に出ていたとでも言うつもりです」


オルも自身の答えを告げる。


ミーは震える声で、さっき出した結論を伝えた。


「……私も、右に同じよ。こんな事……言える訳ない!」


爪を噛んだヒロが、苦しげに言う。


残るはユンとスズだったが、二人は俯いたまま、口をつぐんでいた。


「二人は、どうしますか…?」


オルがそっと尋ねると、スズがハッと顔を上げ、口を開きかける。


そこで躊躇うように、一度閉ざし、わかんないです……と弱々しくこぼした。


……なんて、言えばいいんですか、と俯いたままユンが呟く。


キッと上げた表情は歪んでおり、睨むようにオルを見つめた。


ここであった事を話せないなら、なんて言えばいいんですか!と叫んだユンに、オルは落ち着いて、と宥めながら、


「そうですね……無理があるかもしれませんが、『何も覚えてない』、が一番いいと思います」


と、申し訳なさそうに答えた。


そんな、と言葉を失うユン。


それは無理があるんじゃ、とミーも思ったが、でもそれしか言える事はないだろうと納得もした。


六人の身に起こった事に比べたら、何も覚えてない事の方が現実的だと考えられたからだ。


実際、瞳の形やテールを見れば現実であると信じられるかもしれないが、その先に待つ未来は確実に明るくない。


それなら全てを隠して、何もなかった事にした方がいいに決まっている。

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