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六角瞳  作者: 有寄之蟻
脱出編
26/114

・26・人外

窓からは風が吹き込んでくるが、やはり寒くはない。


正直体温調節という意味でなら、これ以上服を着る必要はないのだが、こんな格好では家に帰るまでが問題だ。


もう出口は確保されたと考えていいのではないか。


そう思って、オルに服に関して言う。


すると、オルは少し困ったような表情になった。


「…そうですね。出口は見つかりましたが……問題、というよりはっきりさせた方がいい事が一つあります」


そう前置きして、オルは五人に問いかける。


「皆さんは、ここで自分の身に起こった事を、誰かに話すつもりはありますか?警察や家族、職場の方などに。ミーさんはともかく、ぼくらはそれなりに長期間行方不明になっているはずです。親しい人達に、その間の説明をどうするか、皆さんの考えを伺いたいです」


ミーを除いた四人は、一様に沈黙した。


ミーも、頭を殴られたような衝撃に言葉をなくしていた。


この場所で起きた事とは。


誘拐され、血液を注射され、身体が変化し、その検査をされ、実験台にされていた事だ。


そんな事、話せるだろうか。


いや、話したとして、誰が信じるだろう。


瞳の形?


テールの存在?


異様に発達した五感?


信じられたとして、それは『化け物』と呼ばれるのではないだろうか。


ミーは思い出した。


気絶してから目覚めた時、異常に冷静だった事を。


様々な異常もそうとは捉えられず、当たり前のように受け入れていた。


六角形の光彩。


暗闇で光る目。


硬度と形状が変わる触手ーーテール。


芳しく感じる血液の香り。


治癒能力。


クエン酸で溶ける皮膚。


異常だ。


これ以上なく異常。


そんな人間いない。


……人間じゃない。


自分はもう(・・・・・)人間では(・・・・)ないのだ(・・・・)


ズサリと突き刺さった現実に、ミーは視界が歪んでいくのを感じた。

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