・25・日常への出口
廊下はフローリングになっていて、前方に一つだけ、よく見かけるドアノブのついた木製の扉があった。
今更ながら、ミーは自分達の服装が気になった。
着ているのは薄い、薄緑の膝上までのワンピースのようなものだけ。
下着は着ているが、裸足だ。
ミーが誘拐されてからどれだけ時間が経ったのか分からないが、少なくとも季節は秋だったはずだ。
こんな格好ではかなり肌寒いはずなのだが、正直そんなに寒さは感じない。
そう言えばさっきの地下も床はツルツルしたものだったが、実はかなり冷たかったのではないだろうか。
ヘキサになった事で、寒暖に強くなったのかもしれない、とミーは考えた。
そして、大切な事に思い至った。
この服のままじゃ、外にでれない…!、と。
勢いのまま、あ!と声を上げたミーに、前方を歩いていたオル、ヒロ、キムが振り返った。
ミーが事を話すと、
「確かに、それは私も考えてたのよ」
とヒロが同意する。
ふむ、とオルは思案し、
「…その問題は一度保留にしませんか?とりあえず外への出口を確実に見つけた後、考えましょう」
オルはすっかりリーダーの役割を果たし、皆その決定に従った。
扉は鍵がかかっていたが、オルがまた小さな穴を開けて様子を伺い、危険無しと判断してヒロがくぐり抜ける穴をあける。
その先も廊下になっていたが、扉のすぐ横には、窓があった。
そう、窓だ。
ミーとユンは思わず窓に駆け寄った。
外は暗く、夜のようだったが、木々があり、家々が連なる景色が見えた。
外だ!!
叫んだユンに、同じように喜びつつシー!、と静かにさせる。
オルも窓のそばによって、外を見渡した。
そしてテールで窓を窓枠ギリギリに切り取り、ガラスをそっと床に置く。
そして外に頭を出してさらに見渡し、
「ここは一階みたいですね。人影はありません。時間は…たぶん夜明け前だと思います。ここから出れますよ!」
わずかに熱を帯びた声に、ミーも嬉しくなる。
やっとだ。
誘拐されてから、色々と非日常的な出来事に見舞われたが、やっと日常に帰る事ができるのだ。