・24・動揺
オルが垣間見せた冷たい姿は、一瞬で消えた。
……だから、それでいいですか?と弱々しく尋ねたオルに、ヒロは若干狼狽えながら頷いていた。
小指程に尖らせたテールを扉の下方に突き刺し、オルはその穴を覗く。
ミーは今自分が見たモノが信じられず、動揺していた。
あのオルが全く別人に見えた。
一瞬の出来事だったのに、目に焼きついて心を大きく揺らしている。
呆然としゃがみ込むオルを見つめていれば、そっと頬に何かが触れた。
我に帰って横を見ると、笑みのない真剣な顔でキムがミーを見つめている。
ミーの頬を優しく撫で、僅かに首を傾げる。
言葉もなく、その美しい紫に見つめられ、ミーは目を背けようとした。
しかし、もう片方の手で顔を挟まれ、目線を固定される。
恥ずかしくて、な、何!?とさっきとは全く異なる動揺に声が上擦った。
キムは少しミーを凝視した後、
「……別に?」
ふっと微笑んで手をミーの顔を解放する。
その際にさらりと頬を撫でられ、ミーは身体の奥がくすぐったい感覚が耐えられずに、スズの背中に駆け寄った。
今の何今の何今の何ー!!!と心中叫ぶ。
どうしたんですか?と不思議そうにするスズに抱きついて、なんでもない!と首を振った。
しばし深呼吸して自分を落ち着けていると、
「……よし。外は廊下になっているようです。人影はありませんし、音も聞こえません。とりあえず危険はないと判断して、外に出ましょう」
オルの声にスズから離れ、振り返る。
と、すでにヒロがテールをふるって、扉がくり抜かれていた。
毎度毎度の早業だ。
ミーは密かに感心しつつ、扉の外へと足を踏み出した。