・19・謎の危険物
棚にはガラス戸がついている物、たくさんの引き出しがある物など数種類あったが、並んでいるガラス瓶や器具も、ミーには何か全く分からなかった。
引き出しにもラベルなどはなく、試しに何個か開けて見ると、何か錠剤のようなものやカプセルが入っていたりする。
恐いので触れる事はなく閉めたが、薬品か何かなんだろうと思った。
ユンのそばに来ると、彼は顔を上げ、隣はどんな部屋でした?と聞いてくる。
それに、洗濯とかする部屋みたいと答えると、そっかぁ…と落胆する。
何を見ているのかと手元を覗き込むと、あ、なんか実験レポートみたいです、とユンが教えてくれた。
ちらっと見る限り、ちんぷんかんぷんだったため、さっと諦めてまた奥へと進む。
棚と棚の間を見ると、そこで一つの瓶を掲げて眺めているキムを見つけた。
ミーに気づいたキムが、視線は変えずに手でミーを招く。
キムの隣でその瓶を眺めると、他には全くラベルがなかったのにもかかわらず、その瓶にだけは【粉末クエン酸】と書かれていた。
瓶は茶色で、ラベルの下には『扱い注意』とまで書いてある。
クエン酸なら知っている。
よく柑橘類に含まれている酸っぱいもの、程度だが。
健康や美容にいいと聞いた事があるが、なぜ『扱い注意』なのだろうか。
ミーがんー?と首を捻っていると、
「……これ、どう思う…?」
と、顔をこちらに向けたキムが尋ねてきた。
ミーは素直に今考えた事を伝える。
つまり、なぜこれだけラベルが貼られていて、しかも危険物扱いなのか、と。
「……そう、思って…見て、た…」
うんと頷き、キムは掲げていた瓶を下ろして蓋を開けようとする。
その躊躇のなさにびっくりして、ミーは咄嗟に止めようとする。
なんで?不思議そうな表情をしたキムに、自分でも理由が分からず、なんとなく?と答える。
キムは数秒、じっとミーを見つめたが、さっと瓶の蓋を開けてしまった。
言い様のない恐怖感にミーが思わず距離を取るが、キムは気にした風もなく瓶の中を覗く。
「……んー……よく、見えない……」
呟いて、今度は鼻を近づけた。
あまりに平気そうな様子に、怖々とそばに寄って、どう?と聞く。
「……におい、しない」
嗅覚の特化したキムが、臭いがないと言うなら、本当に無臭なのだろう。
ミーもそっと瓶を覗いたが、確かに中はよく分からないし、なんの臭いもしなかった。
ミーの想像では、何か酸っぱい匂いがするんじゃないかと思っていたのだが。
やはりこの瓶の中身の危険要素が分からず、二人で首を傾げた。