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六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
100/114

・100・行方不明

「……だから、ミーがヘキサだと…説明した、だろ」


ゆったりと答える声音は、静かだが低い。


「えぇ。それで、本当は藍塚さんが斜陽リリに反撃し、そして斜陽リリは逃亡した、という事実が判明しました。キムさん、貴方が見たのは、反撃した藍塚さんが気絶した所から、で本当に確かですね?」


「……うん」


真正面に見据えるウォーに首肯して、キムはケーキの最後の一欠片を食べた。


「……ほんとは、アイツが逃げて…いく所を見て、たけど……ミーが、倒れたから」


「後は追わず、わたしに通報し、ご自身は藍塚さんを家に運ばれた、という事ですね」


「……そう」


ふと、キムの笑みが深まる。


目線の鋭さが増し、ミーはキムから目を逸らした。


キムの機嫌が良いのか悪いのか、全く分からない。


怒ってるようには見えない。


しかし、喜んでいる時のような柔らかさもない。


分からない、知らない、とミーは内心混乱しながらも、耳はしっかりと二人の会話を聞いていた。


「……実は不可解な点がいくつかありまして。貴方は、斜陽リリが逃げたと仰いましたが、本当にそうなんですか?」


挑むようにウォーが語調を強めると、キムは首を傾げる。


「……何を、言いたいの」


「現場にあった多量の血……あれは、ほぼ致死量なんですよ。いかに人間より生命力が高いヘキサでも、あそこまで出血してしまえば、普通身動きは不可能です。それが一点と、もう一つ、単純に、現場を出て行く足跡が貴方の分しかない、という点です」


一つ、二つ、とウォーは指を立てながら話す。


じっと、何一つ手がかりを見逃すまいと見つめるウォーに、キムはふと視線を落とした。


「……それは、オレに言われ…ても、分からない…」


言って、紅茶に口をつける。


ミーは初めて聞いた驚きの情報に、まじまじとウォーを見た。


お風呂場でキムから話を聞いて、ミーは勝手に、リリは捕まって、ヘキサアイズの刑務所のような場所にいると思っていたのだ。


それが、実は彼女は捕まっておらず、もしかしたら死んでいるかもしれないと聞いて、キムに対する違和感や困惑も忘れてびっくりした。


あまりに視線が刺さったのか、ウォーが少し眉を下げて、


「……どうかしましたか?」


と尋ねてきた。


いえ、今の……、とわずかに口ごもったが、リリは捕まっていないのか、と問う。


ウォーは片眉を上げて、一瞬天を仰いだ。


「えぇ、目下捜索中です。ヘキサアイズとしての規約違反と、実は貴女がヘキサアイズであった事から、結果的に殺人未遂の罪で追われています。……が、全く行方が掴めません」


真顔でかすかに肩をすくめる。


その返答に、ではリリはまだ生きているのだろうか、まだ私の事を狙っているのだろうか、もしかしたら、恨まれているかもしれない、などとどんどん考えが浮かび、服の裾を握る。


その手を、温かな手がそっと包んだ。


おそるおそる横を見れば、悦に浸ったような、歪んだ笑みをのせたキムが、ミーを見下ろしている。


それが、ミーの血を啜った時の、リリの恍惚とした瞳と似ていて、ミーは身を強張らせた。


その変化に気づいたのか気づいていないのか、キムは宥めるようにミーの手の甲を撫でる。


その手は確かに優しくて、しかし、表情とのあまりの違いに、ミーは寒気を覚えた。


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