#5 Trio
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【SIDE 相楽奏】
生徒会室からところかわって今は俺と架乃の家、相楽邸。
ダイニングテーブルを囲んで食事をとっているのは俺、架乃、真緋、母親の4人だ。
俺の父親は単身赴任で現在ニューヨークに出稼ぎに出ている。父に会えるのは年に数えるほどで高校生なので寂しくこそないが父親がいなくて不憫だと思うことはよく感じる。
電球や蛍光灯の交換やゴミだし、母の愚痴聞き係などは俺に一任されているからだ。世のお父様方は仕事をこなした上でやっているなんてすごいなと思う。
大学生の姉もいるが大学近くのマンションに住んでるんだと。
そして真緋が一緒に食卓を囲んでる件についてだが真緋は別に我が家の一員ではない。彼女にも御池の家族があり帰るべき家があるのだが相楽家に今いるのはちょっとした事情から。説明は前回の話の続きからになる。
学校にも最終下校時刻がある。なので生徒会執行部もかえらなければならない。
自分が泣きたい気持ちを抑えて(ちょっと泣いたけど)まず架乃を泣き止ませる。
架乃は実際泣き止まさせるのは簡単で、ただ耳元でお前の事が大事だよって伝えればいいだけ。今日は頭を撫でながら「俺の大事な妹よ。泣いていたらかわいい顔が台無しだぞ? まぁ架乃はどんな顔してても最高の美少女だけどね(キラーン)」って言ってやったら今まで泣いていた彼女は満面の笑みを俺にむけて擦り寄ってきた。チョロいな。 ちなみに今日の言葉の一部は昔、真緋に借りた少女漫画から抜粋した。
時間がかかったのは真緋の方だった。
ネガティブモード絶賛発動中の彼女には慰めるしか方法がなかった。
だからひたすら「真緋はバカじゃないよ? ただ今は才能が開花してないだけでいずれ勉強だって真緋ならできるようになるさ」みたいな事をかれこれ20分間ほど言って説得を試みた。その努力のおかげで真緋は立ち直りってくれた。
その学校からの帰り道、俺は結構重大な事を忘れていた。それのせいで真緋が我が家に泊まっているのだが。
帰り道の会話ーー。
「兄さま?今日の晩御飯は何にいたしましょうか?」
我が家の料理は架乃1人に任されている。普通は俺の母親ーー相楽華の役目なのだが幾分料理のセンスに乏しさを感じるので世界各国の料理のレシピが頭に詰まった架乃に任されているというわけ。実際架乃の料理はうまい。
「うぅ~ん。俺は何でもいいよ。架乃の料理は全部おいしいし」
「まぁ!兄さまにそう言ってもらえて私とても嬉しいです!!」
だらーんと頬の筋肉が緩んでいる。心底嬉しそうな架乃をみてこっちも嬉しくなる。
だがそんな状況にご不満な方が1人。
「あたしも行く!!」
「…」「…」
静まりかえる一同。
左方向ー架乃を見る。
……ものすごく嫌そうな顔してるんすけど。不機嫌MAXなんですけど。
右方向ー真緋を見る。
……そんな懇願するような顔で見られてもね?上目遣いで見られてもね?俺が解決できる問題じゃないんだよ。
「架乃。真緋がうち来たいって言ってるけどどうする? 俺はいいk」
「不許可です」
ですよねー。
「どうしてっ!? あたしも相楽家の食卓を囲みたいよ!」
「あなたは御池家の人間でしょう。わたしと兄さまの愛の巣に侵入させるわけにはいきません」
「いつ家が愛の巣になったんだよ……」
「奏! なんとか言ってやってよこの茶髪女に!」
「茶髪ではありません。ハニーブラウンです」
おいおいまた喧嘩か?もう勘弁してくれよ。何回目だよこのやりとり。
真緋と架乃は仲が悪い。小学校入る前に架乃が相楽家に来るのとほぼ同時期に真緋とと知り合ったのでいつもこの3人は同じだった。昔から真緋と架乃はライバル関係にあり常に意識しあって生活してきた。
しかし一般とは違う存在の二人には勝敗は決められない。
運動系では真緋が圧倒的な力で勝利。架乃も平均よりは運動は得意だが真緋の前では勝目はない。
頭脳系では架乃の完全無欠の勝利。架乃の知識量と真緋の残念な脳みその対決である。知識量を例えると、架乃が世界最大の蔵書数を誇るアメリカ議会図書館なら真緋は教室の後ろに置いてある学級文庫のようだ。
このようにどの分野でも運動系なら真緋が勝つし頭脳系ならば架乃が勝つというふうに総合的な勝利はつけれない。
なので昔このような結論が出された。
『二人が好きな奏の心を射止めた方を勝者とする』
いまのところ俺は二人に対して交際したいと思ったことはない。昔から一緒にいるしもう二人とも本当の家族のみたい(架乃は家族だけど)なものだからそういうふうに二人を見れないのだ。二人は常にアプローチしてくるが関係ない。……いまのところだけど。
「兄さま! どうにか言ってやってください!」
「奏?いいよね?」
おいやめろ黒髪。俺の右腕をその胸に押し付けんな。背徳感に襲われる。
「うぅーん」
今、俺は真緋を家に入れるかを考えてるのではなく円満にこの状況を解決できる方法を考えてます。
「そうだ奏!」
えっ何?」
何か嫌な予感する。真緋は綺麗な瞳を煌めかせ俺にこう言った。
「そういえば奏さ、さっき生徒会室で俺んち来ていいっていってたよね!?」
「なっ!」
「そんな事言ったんですか兄さま!?」
……あー。あの襲われてる時の話か。確かに言ったな。
「えぇー、そうだったっけなー?(棒読み)」
兄さまどうしてそんな事を言ったのです!?」
「そんな棒読みでシラを切るつもり? 絶対言ってた」
俺嘘つくの苦手なんですよねー。とりあえず反論しておこう。
「待て美少女達。まず架乃、言ったには言ったがあれは真緋に襲われてるときに咄嗟に言っちゃっただけなんだ。真緋、確かに言ったがあの後許してくれなかったからそんなもの無効だ。以上っ!」
完璧だ。ぐうの音も出ないだろう。
「なるほど。それならしょうがないですね。超人の真緋に襲われては誰もがそういうでしょうから」
いやあんたも超人だろーが。まぁ架乃は解決したか。
「……確かにその通り、だけど……!」
「なにか?」
「部活サボろうとしたという事実は変わっていない!!」
「……あっ」
忘れてた。そういえば俺怒られるべき人間だったんだ。咎められるべき人だった。
「架乃。奏が今日でサボった回数は何回?」
「今日のを入れると33回です」
おぉ~、ゾロ目!ちょっと嬉しい。
「えっ!?ゾロ目?何かすごーい、ってなわけあるかぁ!!!」
「ノリツッコミきた!」
ハッピーな数字でも今の状況ではなんの効果も発揮しないわけね。
「サボりすぎよ! しかも全てが失敗に終わってるって才能なさすぎ!」
「これに関しては真緋に同意見です」
「だから今から刑を決めます」
「……はいどうぞ。どんな刑でもかかってこいや」
どうせ頭撫でてとかだろ。
「今日3人で寝よぉー!!」
は?
「賛成ですわ!」
「俺は反対だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ふざけるな。3人で寝るってなんだ!おちょくってんのか!
「はいはいおうちに帰りましょうね~」
真緋が俺の腕を掴みそのまま歩いていく。つまり俺は引きずられている。
「おい真緋! 離せよっ! 離さないと泣くぞ!」
真緋力強っ!俺が暴れても離される感じがまったくしない。
「兄さまと一緒に寝るなんて三日ぶりです」
おいちょっと待て義妹。三日ぶりって事は三日前一緒に寝たのか!?扉の施錠は寝る前に完璧にしてるのにッ!
「奏のベッドの上であんなコトやこんなコトを……」
……うん聞こえなかった事にしよう。
そんな事考えてる内に家が見えてくる。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺の必死の訴えはーー届かない。
会長、副会長の出番はまだです。
コメントお待ちしておりまーす。