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Trigger!!  作者: MONDO@受験につき一時休業中
1ST―TRIGGER
4/22

#4 Relief

 【SIDE 相楽奏】


 架乃のテストの点数の吐露に対し過剰に反応する者が一人。

 それはたった今俺にキスをしようとしている幼馴染の彼女。

 人を超えた身体能力の彼女。

 生徒会会計の彼女。

 学園のアイドルの……彼女。

 先ほどまでの威勢はなく今は体全身の震えが接触してる箇所から絶え間なく伝わり、口をきゅっと結び大きく開かれた瞳には光が点っていない。完全に動揺している。

 そんな最中真緋の異常に気づいていないのか、わざとなのか定かではないが架乃の声はさらに音量が上がる。

「中学2年一学期期末国語32点、数学12点、英語31点、理科21点、地歴2r」

「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 架乃の大きな声をかき消すように真緋が耳を抑えて叫び俺の上から飛び降りる。

 そして架乃の元に小さく「やめて、やめて……」とつぶやきながら歩いていく。

 いつものような神速ではなくトボトボとゆっくりとした足取りで。

 例えるならいつもの神速が鷹だとすると今の真緋はアゲハ蝶みたいだ。すっごい遅い。

 てか真緋さん、俯きながらそんなゆっくり歩いてたら何か綺麗な黒髪が顔にかかって貞子みたくなってますけど。

 精神がズタボロな真緋を見て満足気な架乃。

 そんな満足気な茶っちい髪の女生徒こそ、生徒会の書記である相楽架乃(さがらかの)

 クラスは2年A組、文系特進科。

 何故俺と同じ苗字かというと架乃は俺の義妹で物心付いたときにはもう妹だった。同じ学年に在席しているのは同じ年に生まれたのだが俺が9月生まれなのに対し架乃は12月生まれだからである。

 そして真緋と並び学園のアイドルと称される美少女。言い寄る男も多いそうだが全て撃墜されている。

 だが一番の特徴は彼女は映像記憶保持者だという事。

 映像記憶とは眼に映った対象を写真のように細部まで完全に記憶する先天性の能力で架乃は生まれつきこの能力(ちから)がある。電車の中から一瞬見えた風景を後から緻密にスケッチできたり、本のページをまるごと記憶したりすることができ、彼女も例外ではなく授業で使う教材はまるまる記憶しているし昔遊んだ記憶までも完璧に残っている。

 さっき架乃がいったのは真緋の過去のテストの点数。

 お察しの通り真緋は勉強が苦手である。運動神経抜群、とびっきりの美少女にも弱点は存在するわけで。

 なので真緋は昔の黒歴史を掘り返されると点数をとった時の記憶がフラッシュバックして禁断症状がでてしまう。

 ゆっくり歩を重ねる真緋だが架乃にたどり着くまでに力尽き床の上に倒れ込んでしまった。。

 そんな真緋に腕を組みながら近づく小悪魔のような笑みをうかべた架乃。

 真緋のすぐ近くまで来るとしゃがみこみ真緋の黒髪を触りながらこう言い放つ。

「兄さまに今みたいな変な事したら、次はホントにあなたの過去の黒歴史を学園のホームページにアップするから。分かった?」

「は、はひゃい」

 弱々しい返事をした真緋は完全に意気消沈という感じでふらふらと立ち上がるとソファーにダイブして

「う、うわはぁぁぁぁぁぁぁん!! うっうっうえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 大声で泣き始めた。

「おいおい架乃。やりすぎじゃないか?」

 さすがにあそこまで大声で泣かれるとこちらも困る。

「いえいえそんな。兄さまをに近づきすぎた罰ですよ。あれぐらいしなくては暴れるかもしれませんからね」

 そんなにっこり悩殺スマイルで言われてもなぁ。

「まぁそうなんだけどさ。何かちょっとかわいそうっていうか……。架乃がやりすぎっていうか……」

「またそんなことを……。兄さまは優しすぎるのです! ……大体何ですか!? せっかくわたしが助け出してあげましたのにそのわたしをワルモノにするようなお言葉は!?まさか真緋とのキスが邪魔されてお怒りになっているのですか!?」

 あれっ?

「いやあのt」

「そうですかそうですか。せっかく助けて上げましたのにお礼もなくその上イライラされるとは思ってませんでしたわ」

「いやいやちょっと待って! 俺の話を聞いて!?」

「結局兄さまは妹であるわたくしよりただの幼馴染のほうが大事なのですね。そんなにキスがしたいのならわたしにすればいいものをッ。結局っ! 結局兄さまはわたしより……!」

 いやいやこれはないぞ?何で俺が悪いみたいになってんだよ。ただちょっとやりすぎなんじゃないのかって言っただけじゃんか!

 ……てか何故泣き始める?

「ちょっと待てって架乃? 俺は全然架乃に対し怒ってないし逆に助けて感謝してるよ? 本当に助けてくれてありがとう!! それと俺のかわいい妹よ泣き止んでくれ! なっ?」

「ううっ! ひっくっ……、兄さまはいつもそうです。ひっく、わたしよりも真緋の方を大事にしてッ……うっ……わたしはっ、いつも二番で……」

 やばいな…。こっちの声が全然伝わらない。あと何か最初と論点違ってね?

「9年前の5月16日火曜日午後4時頃、兄さまとわたしと真緋の三人で真緋の家で遊んでいた時もです。三人でお義母様からイチゴのショートケーキを食べるときわたしより真緋の方がイチゴが一つ多かったのを覚えていますか?」

 さっすが映像記憶保持者。そんな事今言われてもね。

「……うん、もちろん覚えてないけどさ」

「これだけではありません! 5年前の10月t」

「うわぁぁぁい! もういいよ俺が悪かったよ!!」

「まっ、またそうやって誤魔化すのですか……。もう……っ、うっうわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 はいでました俺が全部悪いっていう展開。

 架乃は自分のデスクで顔を伏せて泣きはじめる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 そういえばさっきまで泣いてた真緋がさっきから静かなんだけどどうした?

「ひっく、ひっく、どうせあたしはバカよ……」

 ……あのアクティブな真緋さんがすげーネガティブになってるんすけど。

 架乃の黒歴史復唱により真緋がおかしくなっちゃったよ。

 今日は会長も副会長も来ない日だし。

 「誰か……、ぐすっ、助けて?」

 

 グラウンドでは運動部が片付けを始めた夕暮れ時、生徒会室からは2つの声音の泣き声が聞こえていた。

   

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