#3 Arrest
メインヒロイン二人目登場!!
【SIDE 相楽奏】
こんにちは、相楽奏です。
今、俺はどこにいるかと申し上げますと我々生徒会執行部の城、生徒会室に来ております。
そして何をしているのかというと只今絶賛叱られ中ですっ!!
……笑えねェよ。
確かにあの時俺達は帰宅の途についていた。
作戦も完璧に進み真緋というバリケードも超える事ができた。
しかしその後首筋に強烈なアッタクを受け俺は気絶。真智の方は気絶していたからあの後どうなったか分からない。
広い生徒会室の床に正座させられている俺。
両手首を鉄製の手錠で拘束されている……俺。
あれっ?手錠てさ、なんか悪い事した人が暴れないようにする為の道具だよね!? 何でただ部活サボろうとしただけの男子生徒に使われてんの?意味分かんねーよホント! 俺は拘束プレイやってんじゃないんだよ!! てか何で真緋は手錠持ってんの!?
そんな惨めな自分の正面に長くスラリとした足を組んでソファーに居座る学園のアイドルこと御池真緋嬢。
足を組むとかなり危険な状態なのですが。
スカートから目を逸らして俺は言う。
「あのぉーそろそろこの手を縛ってる鉄の塊を解いてもらってよろしいですk」
「なわけないでしょ」
「……はい」
最後まで言わせてくれない。
うーん、これは長くなりそうですな。
というか真智はどうなったんだ?今どこにいるんだろ。俺が気絶してる間になんか暴力されてなきゃいいけど。
「あのぉーm」
「真智くんならもう帰したわよ。だって彼は悪い事してないもの」
そうなのだ。策を実行する前に捕まった時に真智が咎められないよう真智には俺に付いてきただけにしてもらってなんの罪もないようにしたのだ。これで事情聴取の時に真緋にただ付いていっただけと答えればいいだけの話だ。
「ですよねー。良かった良かっt」
「他人の心配してるより自分の身の心配したら?あ?」
俺の語尾と真緋の叱責が重なる。
てかもうなんかいつもとキャラ違ってきてるし。いつもは「あ?」とか言わないじゃん。
「あの……簡単にで良いんで何が起こったのか説明してもらっていいすか?」
「……闘ってる最中階段で、奏らしき人を見たから真下を瞬殺して、教室に行ってみて窓から校門の方見てみたら、二人が歩いてるとこだった。だからあたしの消しゴム投げて気絶させた」
驚きで声が出ない。
あの剣道界期待の新人を瞬殺した挙句100メートルもの距離を高速で走って三階の窓から気絶させるほどの威力の消しゴムを歩いてる人の首に当てるって何だよ!!もうなんなの!?サイヤ人!?
「あと架乃なら来ないわよ。今、真下を保健室に連れてってるから」
しまった…。メールしとかなきゃ良かった。
「ねぇ何回逃げ出せば気が済むの? 全部失敗してるの気付いてる? バカなの?」
「あぅ……。反省してます……」
「反省ねぇ……」
あぁ、このやり取りも何回繰り返すんだろ。だから大体、次に言う事も推測がつくな。
「罰をした人はその罪相応の咎めを受ける。違う?」
「はい合ってます」
「じゃあ……」
真緋は男子イチコロの笑顔を俺にむけてこう言った。
「マナとキスして?」
「断る」
分かってたよその展開は。いっつもそのお願いだな。そんなかわいい顔したって無理なものは無理なんだ。
「……そう」
真緋は笑顔のまま少しも気にする事なく言う。断られるのは毎回の事だから分かっていたようだ。
そしてソファーからおもむろに立ち上がり、
「じゃあ実力行使ねッ」
そう言い終わると同時に俺は胸ぐらをつかみ先ほどまで真緋が座っていたものと対になっている俺の後ろのソファに投げられる。
感じる浮遊感。
ボサッとソファーに着地した俺は一瞬の出来事だったため脳が混乱しており体が動かない。
ようやく自分の身に危険が迫っているのを理解するとすぐさまソファーから降り
「つっかまっえたっ」
「うぐっ」
れない。
仰向けの姿勢の俺の上に馬乗りになる真緋。
手は俺の両肩に置かれ上から見下ろしている。
足で抵抗を試みるもいつの間にか足首にちょうど今俺の手首の自由を奪っている手錠がかけられ全く動かない。
「……マジか」
手も足もでないとはこのことか。てかこの状態かなりやばくないか!?確か生徒会室前の赤外線センサーのスイッチは切ってあったはず。一般の生徒とか教師に今の姿見られたら最悪じゃねェかっ!!
「もう逃げられないよ?」
汗が全身から吹き出す。要因は襲われている恐怖と目撃されるんじゃないかという緊張感。
「ま、待ってくれ。か、かっ帰りに好きなもん奢ってやるから許して?」
「いや」
「じゃっ今日俺の家泊まっていいよ!!ついでに風呂上りにアイス食べていいよ!」
「……」
動きが止まる彼女。俺の毎日の楽しみを犠牲にしてやるといってるんだぞ!?
「アイスよりあたしは奏のファーストキスのが欲しいの! てかいただきまぁーす」
……万事休すか。
馬鹿な計画を企てた小一時間前の自分を呪いながらも諦め目をつぶる。
そして気配が近づいたその時、
『ガラガラガラ』
「そうはさせませんっ」
扉を開けて入ってきたのはハニーブラウンのふわふわした長い髪を持った美少女。
ボリュームのある髪を横からの編み込みでまとめ後ろの髪はゆるめにカールさせており柔らかく女の子らしい印象を受ける。パッチリと開かれた瞳にきめ細やかな白い肌、健康的すぎる起伏のある体はある意味目に毒である。
「なっ!架乃!!」
「架乃ぉぉぉぉぉぉ!!!」
救世主の登場に真緋は顔に怒りを宿し、俺は助けが来た事に感動する。正反対の表情だ。
「くっ! 関係ないわ! あたしのものよ!!」
「ぎゃあ!!」
再び近づく真緋の顔に油断していた俺は悲鳴を上げる。
今度こそ絶体絶命かと思われたその時、架乃の透き通るような綺麗な声が響く。
「小学一年五月月例テスト算数24点、国語36点、六月月例テスト算数34点、国語32点………」
架乃の言葉は続く中、真緋の動きは止まり震えていた。
架乃については次話で詳しく。