#2 Escape
【SIDE 相楽奏】
廊下へと出ると各々の教室から生徒が出てくる。
部活へと行く者、家に帰る者……。
俺達二人は後者に属する。
今回一番見つかってはいけないのが生徒会書記の御池真緋だ。
彼女の説明をするとまず俺の幼馴染。
家がすぐ隣なので物心ついた時からいつも遊んでいた。
そして身体能力。
彼女はこの学園の中でもトップクラスの身体能力を持ち運動神経がいいのはもちろんのこと、視力、聴力、嗅覚、触覚、味覚といった五感に加えて第六感である勘や霊感までもが異常に発達している。もはやエリート戦闘民族だ。幼い時からその才能は突出していた。
しかし、そんな怖い肩書きだけではない。
彼女はこの学園では知らない人はいないほどの美少人。
セミロングの綺麗に手入れされた黒髪は毛先が軽くカールしており、目は吸い込まれそうなほど綺麗な目をしている。睫毛は長くその双眼の魅力を際立たせる。幼い時からかわいかった。そしてとてもモテていた。
しかし今大事なのは二つ目に紹介した方。
そんなサイヤ人に見つかったらお陀仏間違いなしだ。
おそらく勘の優れている真緋なら今日俺がサボろうと考えているのは気づいているはず。
その上視力がアフリカの民族並みなので約100メートルにも及ぶ教室の距離もものともせず見つけてくるだろう。
うーん、……無謀だったかな。
しかし今更引きかえすわけにもいかない。
男にはやらなくちゃいけない時ってのが週一ぐらいであるもんなんだよ!
唐突にブレザーのポケットに入っていた携帯が振動する。
「……真智、今教室を出たらしい」
後ろを歩く真智に教える。
携帯教えてくれたということは真緋が教室を出た事を意味している。
俺は昔から機械やパソコンをいじるのが好きだった。
小三の頃に夏休みの宿題が終わりそうになっかったから学校のパソコンをハッキングして確か夏休みの期間を一日延ばした事あったっけな。あの後学校は大パニック。教頭の打ちミスってことで収拾がついたかtらよかったけどあれって犯罪らしいっすね。まさか真犯人が小学三年生の児童だとは誰も思はなかったみたいだけど。
よってその才能が買われて全生徒のメールアドレスがはいっている生徒会のパソコンの警備を任されている。
生徒に対しての俺の表向きの肩書きは庶務だが実際にやってるのは外部の攻撃に対して防御・攻撃を行うホワイトハッカーというのが正しい。
まぁそんなに仕事は多くないので他の生徒会メンバーから雑務を押し付けられているのが現状。
うぅ……、すごいことしてるのにぃ。
で昔もしもの時に場所が分かるようにGPS機能のついた小型の発信機を生徒会の腕章につけさせてもらった。
そして今回の作戦のために今日の朝こっそりF組の扉の上に発信機を付けさせてもらった。
すぐに教室に帰って教室に置いてある担任用のパソコンをハッキングしてプログラムを作成。
そしてそのプログラムが今真緋の来襲を教えてくれたのだ。あの腕章の発信機がこんなところで役に立つとは。
真緋が来るのを確認して周りを見る。
(いた)
廊下を歩いていた野球部の後ろに隠れて進んでいると今回のキーマンがD組から出てくる。
ショートの黒髪に前髪をヘアピンでとめ、いかにも校則違反とは無縁そうな女生徒。
風紀委員長の真下流美。
あの方は真緋ほどの運動神経はないが剣道部部長、インターハイ優勝の経験アリの剣道の達人。
棒状の物を持たせたらこの学園では最強だろう。
その風紀委員長は俺らの前方約5メートル先を背筋をピンと伸ばし颯爽と歩いいている。
携帯がまた振動する。
つまり真緋はもう60メートル先の男子トイレ前を通過したようだ。
よし、作戦どうり。
このままいけば風紀委員長真下と生徒会真緋が階段近くで衝突するはずっ!
俺の策は俺が逃げる前に俺を捕獲しようと全速力で走ってくる真緋と部活に行く真下を階段の前方でぶつける。
そして真下は当然廊下を走っている真緋を注意する。
二人共性格が性格なのでどちらもひかない。
よって喧嘩に発展。そして野次馬に囲まれた二人を横目に近くの廊下を通り過ぎて完遂、というもの。
相手が普通の人に対してなら簡単だろうが今回は高スペックすぎるので余裕がもてない。
「ちょっと御池さん! 廊下は走るのは校則違反よ!!」
「うるさいっ、そこをどけぇぇぇ!!!」
「くっ……!私は風紀委員としてなんとしてもあなたを通すわけにはいきません。ここを通りたいのなら私を倒して行きなさい!」
(はぁ?)
そうして真下は肩に掛けていた竹刀袋から竹刀を取り出す。そして中段の構え。
いやいやここで決闘とか危険だろーが!風紀委員長が何言っちゃってるんですか!?
てかあの真緋がここで退くとは思えないんだが…。
「えぇ上等よ!いままでは先生とかの邪魔がはいったけどここで決着つけてあげる!!あんたを瞬殺して奏のところへ行くわ!!」
やっぱり退かねんだ!?あと今までも何度か対決したことあったんかい!
真緋は右の袖の中から漆黒の特殊警棒を出した。
それを右手で持ちひと振りすると短かった特殊警棒が50センチほどの長さになった。
あれは護身用ということで生徒会メンバーは全員所持している。ヤンキーとかは武器持ってるかもしれないからね。
「邪魔だァァ!!」
「止まりなさいっ!」
『ガッ!!』
二人の声と同時に凄まじい音が響き渡る。
周りにいた人々はその音と二人の殺気を感じ取り何か何かと集まってくる。
なんせ廊下の真ん中で二人の女の子が武器で勝負しているのだから。
まぁ野次馬が集まってきたのは作戦通りだ。
まさか武器を持ち出すとは……。
そんな中、二人の決闘は続く。
途中、正義感かただ野次馬の前で目立ちたいのか知らないのか二人の間に入って止めさそうとした男がいたが真下の剣に斬られて気絶していた。バカか、お前は。あの二人をお前のような凡人が止めれるわけないだろ。
「ねぇ奏。あれほっといていいの?」
「うーむ……。さすがに危険だから架乃にメールしとくわ」
二人の決闘はヒートアップし野次馬もかなりの人数になってきた。
あの真緋でもさすがに剣道部のエースと剣技で勝負となると余裕はないようだろう。それに持ってる武器の長さが全然違うし。
その間に俺達二人は近くの階段から二階へと降りる。
(よっしゃあ!!)
心の中でガッツポーズ。
興奮を抑えてポーカーフェイスで階段を下りついに正面玄関を出て外にきた。
「いぇーい!!」
「やったね奏!」
互いにで腕を交差させ喜びを分かち合う。
「おっと。忘れない内の架乃に連絡しとくわ」
携帯を出しメールを打つ。
「よしっできた」
「なんか久しぶりだね一緒に帰るの」
「ああそうだな。最近仕事忙しくて早く部活終われねーんだわ。今日は寝るぞぉぉぉぉぁ、ガッッ!!!!」
首筋に強烈な痛みを感じる。え、でも真智じゃない。だっ、誰だ?
意識が朦朧としてきた。真智に助けを求めようと横を見ると真智が恐怖を顔に宿し後ろの後者を見ていた。鞄は地に落ちている。
犯人を考えている途中で俺の意識は完全にブラックアウトした……。
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