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2話

そして共に自分の家に訪れた。

実は家族が死んでから4年。ここの家には入っていない。

最初の何ヶ月かはここにいたが、皆がいたはずの場所に誰もいないのはとても寂しく、一人でいるのはさすがにきつかった。

2年間は親友の家に泊めさせてもらっていた。

だが親友がいなくなってからは、住む場所はなかった。

ただ公園など、色々なところをブラブラしていた。


休憩は学校でも出来るし、休日は図書館などに寄っていた。



『お前、ここに入る気になるのか?』

『4年ぶりですね』


だけど家の中は何も変わっていなかった。

当たり前だ。


もちろん事件があったこともわからないようになっている。

金はかかったが、綺麗に掃除してもらった。



『ひれえ家だな』

『ここが自分の部屋です。電気はつけないほうがいいですよ。4年も電気がついていなかった場所に急に電気がつけば怪しまれますから、

いくら自分の身元はわかっていないとしても、もしもという場合がありますから』

『何でお前そんなに犯罪の知識あるんだよ』

『たくさん本を読んでいますから、世間のことはよくわかります。犯人の気持ちなども、人の行動なども・・・』

『何かすげえ』


そういっている男の顔は何処か自分のことを不気味がるような顔をしていた。

無理もないだろうけど・・・

それでも自分のようにたくさんの本を読んで、たくさんの人を観察していれば、誰でもこういうことはわかってくると思う・・・



『暗いのが苦手でしたらこちらの部屋にいらしてください』


そして男を連れて、来た部屋は、この家の中で唯一窓のない部屋だ。

普通部屋には窓やパルコニーなどがあるが、ここは完璧に外から見えないところだ。

お父さんが面白いだろうと言って作らせた部屋だ。

この家はお父さんが建てた家だから構造は全てお父さんが決めたものだ。


『おもしれえ部屋だな』

『よく弟と遊んでました。ここにはほとんどのものが揃っていますよ。言えば緊急の部屋ですね』


そこにはパソコンや、テーブル、小さな冷蔵庫が置いてある。

自分はここには弟と遊ぶときにしか来たことがないが、お父さんが仕事をするのにこの部屋を利用していたのを覚えている。

自分の部屋があるというのに、何故だかここが落ち着くらしい。



『それでは、この部屋でゆっくりくつろいでください』

『待て』

『はい?』


部屋を去ろうとすると、何故か手を捕まれた。


『あんな暗い部屋に、一人でいるのは寂しいだろ』

『暗いところには慣れてますよ』

『そういう意味じゃ・・・』

『お前もここにいろよ』


これは人間のする余計なお節介っていう奴だ。

こういうのをどうして人はしたがるのだろうか?


今の自分には感情が出てこない。

感情がわからないのではない。


でも、どうしてそんなことをするのかは理解できない・・・


『わかりました。ではどうぞ休んでください。布団とお父さんの仕事を夜までしていたときのパジャマならここにありますが・・・』

『・・・サンキュー』


やはり人の私物を身に着けるのは多少気がひけたらしいが、今自分に着替えがないのは確かなのだから、着ることにしたらしい。


『お前、パジャマは?つうか・・・布団は?』

『パジャマは自分の部屋にありますが、布団は家にはこれ一つしかありませんよ』

『な、何でだ?』

『自分の家は皆ベッドで寝てましたから・・・』

『そ、そうか・・・』



男は何だか困ったような顔をしていた。

布団が一つで十分じゃないか、自分は寝ないから・・・


『どうぞ。休んでください』

『お前は?』

『自分はもうずいぶん寝た記憶がないです。自分は寝なくても大丈夫です。だから貴方だけでも休んでください』

『ダメだ。お前も寝ろ!ほら、もうそのままでいいから、こっちにこい・・・』


男は多少照れている風にも見えたが、それ以上に真剣な顔をしていた。


『自分は寝れないのですが・・・』

『いいから、この布団シングルじゃねえみてえだし、問題・・・ねえだろ』

『それでは』


自分は眠らないが、この人を眠らすためにはこの人から顔を逸らすしかないだろう。

その人のいる方向とは反対の方向を向いた。

こうしていれば寝たかどうかなんてわからない。


『こっちむけよ・・・寝れねえって、どういうことだ?』

『わかりません。でも目を閉じれないんです』


ずっと思っているが、どうしてこの人には本音を話せるのだろうか?何か言い訳をすればいいのに・・・

眠れなかったのは過去の話しだった。今横になってみれば眠れそう。なんていったら、話しは終わったのに・・・


『怖いのか?』

『怖い?・・・そうかもしれません』

『何でだ?』

『知りません』

『じゃあ、いつからだ?』

『たぶん2年ほど・・・』


今までこんなこと考えたことがなかった。

自分が消えることが怖いのか?

それはないと思う。

自分はもう消えてしまってもいい。消えたいとも思っているのだから・・・


『もしかして、自分が寝たらそのまま起きられねえ。とか考えてるのか?』

『それはないです。もしそうなら自分は嬉しいと思います。何度も自分は死んでしまいたいと思いましたから』

『でも、実行に移さなかっただけいいじゃねえか』

『移しましたよ。失敗しましたが・・・自分の服を脱がせた時に気づかなかったのですか?』


男はその時のことを思い出したのか、少し赤くなっている。


『これにです』


自分はそう言って袖をめくった腕を見せた。

男はその腕を見た瞬間顔を青くした。


『お前・・・そんなことしてたのか』


腕には無数の切り傷がある。

もちろん自分でやったものだ。

これで死ねるかと思ったけど、中々出来なかった。

半分は怖くて力をあまり入れられなかったからだろうが、これでは死ねないらしい・・・


『自分も早く皆のところに行きたかったんです。どうして自分だけ生きているのか。どうして自分だけ・・・って、ずっと思ってたんです』

『そうか・・・でもよ。お前の命は皆からの誕生日プレゼントなんじゃねえか?』

『えっ?』

『きっとそうだ。だからその命は大切にしろ』

『人質にしている人が、言う台詞ですか?』


男は忘れていた。とでも言ったような顔をしていた。

本当にこの人は犯罪にはむいていない人だ。



『なぁ・・・お前もしかして目つぶれないって、寂しいから・・・じゃねえのか?』

『寂しい・・・?』

『わかんねえけど・・・こっちこいよ』


何をしたいのかわけがわからなかった。

だけど自分は言われるままにした・・・



『・・・!』


突然体に暖かい感触・・・


抱きしめられているようだ・・・


『これで、安心だろ・・・?心配するな。お前は一人じゃねえ・・・』

『だから、貴方が言う台詞じゃないですよ・・・』



昔の感情が出てきた気がする。

安心。しているのだろうか?


昔のように暖かみがある。

家族がいたときのように・・・


まるで今、家族がいるかのように、とても安心して・・・

本当にこの人は不思議だ。

自分はどうかしてしまったのだろうか?


そう思いながらも意識が遠のいていくのを感じた。






目が覚めたとき、隣にはマダ温かい感触があった。

寝たんだ。眠れたんだ。

この人の隣で・・・


マダ寝息を立てている彼を見ると、本当不思議で、何故か安心した。



『ん・・・あっ、す、すまない』

『はい・・・』


男は自分を見ると顔を赤らめながら遠のいていった。

昨日は結構積極的だったのに、この人はヘタレという部類・・・


犯罪に関しても、てことは・・・


『あの、もしかしてマダ凶器持ってたりするんですか?』

『え?』

『だから凶器ですよ。ナイフマダ持ってるんですか』


男はそれを聞くと思い出したかのように上着からそれを取り出した。


『指紋と血痕をふき取った方がいいですよ』

『ああ・・・』


男は曖昧な返事をしながらも、どうしたらいいのかわからないらしい。


『貸してください』

仕方なく自分がすることにした。

どうして自分が犯罪者に手を貸さなければいけないのか。

彼は人殺しだ・・・

すぐにでも警察に通報すればいい・・・


そう思いながらも自分の手はナイフをふき取っていた。


『お前本当何でも凄いよな』

『貴方がダメなだけですよ。だいたいこういう人は凶器は捨てれずにいたりするんです。

ちょっとは勉強してから行うべきですよ』


自分はそう言って吹き終わったナイフをキッチンへと持っていこうとした。


『待て。何処いくんだ?』

『キッチンです・・・』


『一人で大丈夫なのか?』


この人は何を言っているのだろうか。


『何が大丈夫で、何が大丈夫じゃないんですか』

『だってよ。家族が死んだ・・・』


男は言い出しにくそうにそう呟いた。


『だから何ですか。過去の話しです』


そう言って自分はキッチンへと向った。




キッチン・・・

足を踏み入れたのは、もう・・・


ここでお母さんがケーキを作って、きっとお父さんと楽しそうに誕生日のことを考えていたに違いない。

でもどうしてだろう。

どうしてまだ自分が帰っていないときに起こったのだろうか。

自分が帰ってきていて、誕生会の途中なら楽しい思い出と一緒に皆と逝けたのにな・・・


そう思いながらナイフを見つめた。


あの時皆もこれで刺されたんだろうか。


そっか。これで切ったら死ねるんだ。


ゆっくり、ゆっくりとそれを手首に近づける。

後もう少し・・・


何でだろう。少し前までは怖くなかったのに、何も考えずに切れたのに・・・

何故か少し怖い・・・


でも・・・


『っ・・・』


思いっきりナイフを手首に当てた。


血がどんどんと流れていく。


やっと死ねるのかな?



意識が遠い。

頭が変な気分だ・・・



『おい』


倒れる前に彼の声が聞こえた気がした。



何で彼はここに来たんだろうか?

あたしは遠のく意識の中。

何故かそんなことを考えていた。

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