チュートリアル後編
北山さんが壱ノ宮の表玄関前に居る門番に一旦話を通し、2人は武蔵皇子がいる畳の間に案内された。
「ふむ、無事に門の許可証を発行されたとな。」
「「はい。」」
2人は返事をする。
「良かろう。
ところで今、我の体調がスキル使える程度まで回復していそうなのだが。もしや...。」
武蔵皇子は、北山神主に目線を向ける。
「先程、爽真が数人の住民に手助けをしておりました。」
北山さんが先程のことを詳しく話した。
皇子の付人は、話した内容を筆で紙に書いていた。
「やはりな。
よし、今回の件の褒美として特別に北門の許可を与える。」
門の許可証の板に、郡印の判子が押された。
武蔵皇子の割印が押された。
北門の区間をソロで行き来できるようになった!
武蔵皇子は扇を口元に抑え、目元の笑みを見せる。
「約束の褒美の金を与える。」
付人から100銭を受け取った。
「ははー、ありがたき幸せ。」
爽真はお礼を述べた。
「我の親族だけが北門の許可を与えられる。
北門の入り口にいる門番に見せれば、お主達の住み処の神社と北側の区間を自由に行き来できる。
北側は、我の親族と役人と貴族、武人や賢人など、文学と武学の才がある者を主とした地域である。
爽真殿も、他の地域に住む者の自ら手本となって模範を示すことができるよう、心がけよ。」
「ははー。」
武蔵皇子が付人にひそひそと小声で告げ口をした。
2人を畳の間から下がらせた後、
「ついて参れ。」
と付人に言われ、別の部屋に向かう。
貴族や武人、総勢約100人以上が密集している大広間に案内された。
「ここへお座りください。」
付人に言われるがまま、指定の席にある座布団の上に座る。
武蔵皇子も顔を扇で隠し、大広間の上座に登場した。
床は、上座だけ畳が敷かれており、他は板となっている。
「注目!武蔵皇子の御成ー。」
付人がパンパンと手を鳴らし、雑音を掻き消す。
武蔵皇子が上座で正座する。
上座には暖簾が付けられており、皇子の顔は見えない。
武蔵皇子は、スキル『名声』を使用して話し始める。
「皆、よく集まってくれた。
我が京で不可解な事が多発しているのは、皆存じているであろう。
我が親族だけではなく、兜ノ京に住む人々にも影響が出始めている。僅かでも被害を減少させたい。
京を良い環境に変えたいのだ。
そこで今回、北山神社の北山殿の伝手で、晴天神社の神主 爽真殿が北国から遥々来てくれた。」
パラパラと拍手が起こる。
爽真殿は一番後ろの真ん中の席だった。
周囲が非常に見やすい位置だ。
全員に向かって深々と一度お辞儀をする。
「未だ来て日が浅いのにも関わらず、
我が京にとって有難い貢献をしていただいている。
地図を見せた所、この兜ノ京全体に悪い相が出ておりることを見抜いた。
先程北区で一件の謎を解決させた。
さらに、郡役所の人材まで探してくれた。
今後、爽真殿も北区民の一員として歓迎せよ。」
「ははー。」
皇子に向かって皆お辞儀をする。
顔を上げると、既に召喚済みのマガツヒが
ちょこんと目の前に座っていた。
手を下に向けて叩いている。
(まさかこの床下に?)
爽真は、こんな大層な場で皇子に曖昧で突拍子な事を直接喋るのは気が引けたので、隣にいた付人に相談をした。
「武蔵皇子に、この床下を調べても良いか聞きたいのだが...。」
「ん?なんだと?!
そういうのはすぐ取り組むべし。
武人よ、この部屋の床下を捲るのだ!」
付人は大声で促した。
バリバリバリッ!!!
先ほど指定した位置付近の木の床下が剥がされた。
そこには、目と口と腕を布で塞がれた人と、
鶏の死骸が破棄されていた。
人はなんとかまだ生きていた。
塞がれた布を剥がすと、
なんと筋虎ではないか!
武人達は、筋虎を抱えて引き上げた。
「俺に化けた人をとっ捕まえろ!」
筋虎が大きな声で発言すると、武人達が廊下へ駆け出す。
先程の集まりの中に筋虎の偽者が居たようだ。
「おりゃーーー!」
「うぉぉおおお!」
カキンカキン!
廊下奥で戦っている叫び声が聞こえる。
ガッ!
「捕らえたぞー!」
無事、偽者は捕らえたようだ。
「お見事!」
偽者を捕まえた武人は、拍手喝采を浴びた。
さすがは文学の集まりだというべきか。
その状況を模写する者、実況する者、実況者の発言を紙に書く者、住民に知らせるために看板を作る者が廊下で迅速にバタバタと忙しなく動く。
そのとき、武人は鶏の死骸を庭に放り投げただけで済ませた。
すると、鶏に黒いモヤが現れた。
『神のお供召喚』が光り、ボタンを押した。
カグツチが召喚された!
「燃やして鶏を処分せよ。」と命令した。
鶏の死骸を口から火を出して処分した。
「もう、この部屋で気になるところはないか?」
地図を確認したところ、周辺にはもう居ない。
問題なさそうだ。
爽真は、付人の問いに頷く。
その他の者も、この意見を聞いて安堵した。
「本日は以上、お開きとする。」
皇子が、事を収める。
「ははー。」
全員が皇子に向かってお辞儀をする。
北山さんが声をかける。
「今日はよく頑張ったな。さあ、帰ろう。」
「はい。」
北山さんと共にホームの北山神社へ帰り、ご飯を食べて就寝した。
セーブ中...
ステータスの記録集に2種類追加された!
◎偽者騒動
大広間にて、筋虎と鶏が床下から発見。
筋虎が大声で「俺に化けた人をとっ捕まえろ!」
と発言。
なんと、大広間に筋虎を装った偽者が居たのだ。
武人達が廊下奥まで駆け出して、
筋虎の偽者を捕らえた。
◎鶏の鳥インフルエンザ
筋虎の偽物騒動で発見された鶏、実はインフルエンザの病原菌を持っていた。
鳥インフルエンザは、70度以上で死滅するので火で焼くことが推奨。
通常人には感染しないが、感染した鳥に触れる等、濃厚接触をした場合など稀に感染する。
感染した野鳥等を捕食した場合、感染する。
感染した場合、高熱、咳などの症状が出る。悪化すれば、急激に全身の臓器が異常な状態になり、最悪死亡することもある。
神のお供:カグツチ
主: 火之迦具土神ひのかぐつちのかみ
火之炫毘古神ひのかかびこのかみ
火之夜芸速男神ひのやぎはやをのかみ
型: 狛犬
役割:速やかに火を出し、指定された物を焼く。