宝の間の床下、調査開始
爽真は、北門入り口にいる護衛隊に声をかける。
「同行しますか。」
「お願いする。」
「よし。では進めるとしよう。
問題のあった『籠手御殿』『大鎧御殿』が、詳しく調査できるようになった。『草摺御殿』も調査できるが、何処の調査を進めようか。」
「籠手御殿の調査を進めていきたい。」
「分かった。では、向かおう。」
移動しながら、筋虎が話をする。
「爽真殿には知っておくべき話を共有しよう。
先ほど得た情報だ。
襲われて大御殿に逃げた貴族は、残念ながら息絶えてしまったらしい。
鬼は話より拳で語ろうとするので、島流しの刑に。
狸はまだ話が通じるようなので、詳しく事情を聞くそうだ。」
「そうか、情報ありがとう。」
すると、扇のステータスのお知らせ欄が更新された。
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▷お知らせ
【New】職業:貴族の死亡フラグを回避!
新たなサブイベントが解放されました。
〜新たな貴族を探せ〜
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もし貴族を選択していたならば、死亡してたということか。
爽真は身震いした。
便所に並ぶ人数は5人。
食中毒対策の野菜編と卵編が住民達に伝わった事で、
食中毒の範囲を減らす事が出来たようだ。
宝の間の床下に到着した。
この床下に何かあるはずだ。
爽真は佐吉に向かって命令札を出し、札書かれた呪文を唱えた!
「ガリョウテンセイ!」
佐吉のスキル『画竜点睛』が発動した。
佐吉が手を叩く。
すると、大黒柱の一部が四角形に浮き出たではないか。その部分がカランと外れた。
床は畳なので、そこまで大きな物音はない。
佐吉は言う。
「ここからは他言無用でお願いします。」
空洞になった柱の四角形の向きを変えて押し込む。
嵌めると家鳴り並みの小さな音がカチッと鳴る。
とある一畳が、無音で静かに沈む。
それが地下に続く滑り台の一部となった。
「さ、こちらでございます。」
爽真達は全員滑り降り、地下の底に到着した。
天井みると、既に畳で閉められていた。
完全に光が閉ざされ、真っ暗闇になる。
筋虎が話出す。
「もう少し先に進むまで、火をつけないでくれ。
御殿が燃えてしまう恐れがあるからな。
此処は、本来ならばこの宝の間に携った人しか開けられない、宝の間から地下へ続く鍵を開ける方法だ。
この場所は、避難経路として備えていた。
他の御殿も、異なる理由で別の仕様がそれぞれ備わっている。
だが、去年辺りから嫌な方法で使われているので困っている。」
じっと話を聞いていると、少しずつ周りが何となく見えてきた。
床下に目を向けると、物騒な罠を解除した跡があった。
「例えば、富士景がここで捉えられていたりな。」
「...。」
「引っ掛からぬように。佐吉を前衛にして進もう。」
「分かった。」
護衛隊達は、爽真を誘導しながら先へ進む。
何やら影が動いた。
影が襲ってきた!
〈ザギベイガゼヌーー!ザギベイガゼヌーー!〉
『神の使い召喚』ボタンが発動した!
爽真は、カヅチの鹿を召喚した!
鹿の角が輝き出した!
角に電気が貯まり、角の間に稲妻が走る。
影に向かって突進した!
影は倒れた!
〈バタッ〉
皆、影の正体は何かと、カヅチの灯りで顔を見る。
なんと、目が一つしかない。
一つ目であった。
後ろの方で、何やら振動が起こる。
怖がりの筋虎が非常に震えていた。
声を出さぬよう、頑張って押し殺していそうだ。
爽真は、御堂筋にお願いした。
「この影にお面が付いてないか。」
「確認しよう。」
一つ目の顔を触り、顎辺りを掴む。
お面が取れた。
偽者のお面と比べると、クオリティーがかなり低い。
紐で耳に掛けるタイプのお面だ。
目の作りだけはこだわっており、目の開閉が出来るようになっていた。
さて、影の素顔を拝見。
目と鼻に直接黒い墨が塗られており、擦っても落ちにくい。残念ながら顔の特徴が捉えきれない。
「ふぅ、狸だったか。」
筋虎の震えが止まったようだ。
鹿のカヅチが、先の奥の道を照らす。
影が倒れた先に、木製の扉があった。
「この扉は何だ。」
佐吉が不思議がる。
扉には、刻印された木札が付けられていた。
刻印は、獣の狸の実物模写が刻まれていた。
この紋について、偽者から話を聞く必要があるな。
その先に進みたかったが、鍵がかけられていた。
「カヅチで突進しても良いか。」
ダメ元で聞いた。
「カヅチで突進すると、騒音になってバレてしまう。」
と言う事でこの案は無くなってしまった。
「まず、一旦報告しよう。
こんな近くに武蔵皇子様以外の紋があるなんて。
皇子の身が危険だ。」
爽真一行は、宝の間に戻ろうと道を引き返す。
画竜点睛
佐吉は彫刻家でもある。
最も重要な箇所に手を加えた彫刻作品に、最後の仕上げとして、命を吹き込む効果をもたらす。




