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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
2章 捨てるべき迷い

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69話 解決に向けて

 生徒達に毒を盛られて、かなり頭にきている。いますぐにでも、犯人を殺したいほどに。だが、調査のためには手順が必要だ。素人考えで引っかき回すのは、あまり良いことではない。


 ということで、ある程度は知っていそうな人のアドバイスを受けることにする。流石に、家から人は回せないだろうからな。父に頼んでも、切り捨てられて終わりだろう。


「フィリス、何か毒をどこから仕込まれたか調べる技術はあるか?」

「……無い。根本的には、過去の動きを探すことはできない。だから、どうやって持ち込まれたか、あるいは販売されたかを調べるのが基本」


 なるほどな。理屈は分かる。毒の入っていた皿を調べたところで、出てくるのはどんな種類の毒かだけだろう。そうなると、どんな経路で入手できるものなのか調べるのが、手っ取り早い。


 ただ、まどろっこしい手段ではある。そして、物的証拠を手に入れることは難しそうだ。状況証拠を探ることになる。できれば、ちゃんと犯人を特定したい。怪しいからと殺すのではなく、ハッキリと犯人を白日のもとにさらして、その上で殺したい。


「なるほどな。そうなると、毒を持っている人間を探すのが大事になるか」

「……同感。ただ、私は素人でもある。もっと効率の良い手段は、あるかもしれない」

「そうだな。俺も、色々と考えてみるさ。お前は、何か思いつくか?」

「……提案。毒を仕込むのなら、容器があるはず。そこを調べる手がかりにできるかもしれない」


 確かに、大事なことだ。粉だろうが液体だろうが、何かに入れなきゃ運べない。むき出しで運んだとすれば、本人だって毒を食らうだろうし、予定外の人間だって巻き込んでしまう。まともな理性があるのなら、できないことだ。


 ただ、犯人がかなりのバカである可能性は否定できない。俺を殺したいだけなら、賢い手段とは言えないからな。というか、俺なら絶対にやらないことだ。もっと確実な手段なんて、いくらでもあるだろう。


 そもそも、内部犯なら、自分の安全だって保証できない手段だ。俺が死んだかなんて、確認しようがない。衝動的な犯行だと思えてきたな。父なら、もっとうまくやる気がする。兄ですら、俺の周りを切り崩してからだと考えていたんだ。


「ああ、毒単体じゃなくて、容れ物があるはずだからな。良い案だ。褒めてやる」

「……同意。持ち運ぶための何かが必要。そこから、何か調べられたら良い」

「小さなことから、一歩ずつだな。そうじゃないと、つまずきかねない」

「……肯定。あなたは慎重だけど、それが大事。結論を急いでも、良い事は少ない」

「確かにな。なら、落ち着いて調べていくとするか」


 冤罪で殺すことだけは、絶対に避けるべきことだからな。それが理解できるだけの知性は持っているつもりだ。そもそも、犯人を間違えた時点で、何に解決にもなっていないのだから。俺にとって大事なことは、大切な人の安全が守られることだ。それは、犯人を殺すことよりも優先すべきこと。


 ただ、しっかりと可能性を潰すことも大事だ。犯人が父の可能性は低いとは思うが、確証はない。とはいえ、直接父を調べても、証拠なんて出てこないだろう。敵対する貴族を暗殺して、尻尾を掴ませない人間なんだ。


 そう考えると、ますます父とは思えなくなるが。俺を殺したいだけなら、もっと効率の良い手段はいくらでもある。俺をカモフラージュにして生徒を殺したいのだとしても、理解できない。


 というか、学校もどきの計画は、周囲の貴族も巻き込んだもの。それをわざわざ失敗させるメリットは、父には無いはずだ。


 それでも、ちゃんと調べるというのは、大事なことだ。ということで、自分にできる範囲で確かめてみる。とりあえず、弟に確認だ。


「ジャン、最近、父さんが何か動いていたりしたか?」

「どうでしょう。兄さんに関わるようなことは、無いと思いますけど。問題でもあったんですか?」

「いや、大した事じゃない。気になっただけだ。こっちで、ちょっと大きく動きたかったからな」


 間違いではないな。俺は、黒幕を殺すために大きく動くつもりだから。規模感としては、なかなか大きいんじゃないだろうか。一応、複数の貴族が集めた子供達の話だからな。それをどうするかは、とても重要だ。なら、父に協力を仰いでも、問題ないだろうか。悩ましいな。


 確実に問題を解決するために、あらゆる手段を使うつもりではある。だからこそ、父の協力を得られるのなら、それも大事になる。間違いなく、狡猾さは俺よりも上だからな。


「ああ、兄さんと父さんの動きが被ると、大変ですからね。それは、気になりますね」

「そういうことだ。大きな動きが無さそうなら、問題はないな」

「なら、僕がするべきことは無いですか?」

「ああ。今のところは、急ぎの頼みは無い。たまには、休んでおけ」

「そうですね。奴隷の動きを見て思ったんですが、休みは効率の上でも重要みたいです」


 ジャンの頭には、効率があるだけなのだろう。俺のように、倫理的に他者を傷つけることに抵抗がある訳じゃない。奴隷を酷使するなんて、見ていられないのだが。ただ、父を敵に回す度胸がないだけで。


「俺が奴隷を雑に扱わない理由は、よく分かっただろう?」

「ええ、全くです。流石は兄さんですね。最初から、分かっていたんですね」


 とりあえず、父が犯人では無いのだろう。少なくとも、学校もどきを襲ったのは。ハッキリとした証拠がある訳では無いが。優先順位を考えると、可能性が低いところに時間を使っていられない。


 そこで、ジャンと別れて自室で考えをまとめていく。今後の方針をまとめるために。


「ふむ。やはり、内部犯の可能性が高いな。そうなると、どんな手順で調べたものか」


 思いつくのは、全員の部屋を調べること。そこで毒が見つかれば、そいつが犯人である可能性が高い。ただ、罪をなすりつけるために他の人の部屋に隠している可能性はある。そこは、注意すべきだろうな。


「無理やり部屋を調べると、無実の人は良い顔をしないだろうな。それでも、押し切るべき状況な気もする」


 多少嫌われたとしても、生徒達の安全の方が大事だ。当たり前のことだよな。


「一応、父にも警戒しておかないとな。何かを仕掛けても、おかしくない人なんだ」


 今回の件では可能性が低いとはいえ、気を抜いてはいけないだろう。別の何かを企んでいるというのは、あり得るからな。


「あの状況で毒を仕込めたのは、ラナ、ミルラ、生徒達の誰か。そのあたりだろう。疑いたくはないが、何も考えないのは違う」


 信じるためにも、しっかりと調べるのは大事だ。ラナやミルラ、ジュリアやシュテルを疑うのは、心が痛む。それでも、やるべきことはやる。


「動機は、俺を狙って、か? それなら、タイミングには納得できる。巻き込んだ生徒には、申し訳なくなるが」


 どの事件の最中にも、俺が関わっていた。だから、筋は通る。とはいえ、可能性が高いだけだ。確実とまでは言えない。


「ただ、俺1人のために生徒達を巻き込んだのだとすると、絶対に許す訳にはいかない。感情の問題を抜きにしてもだ」


 俺を殺すために周囲の人間も犠牲にしてもいいと考えるような人間は、生きていちゃいけないだろう。テロリスト並みにタチが悪い。


 やはり、次の事件を起こさせないためにも、すぐに解決に導く必要があるな。ただ、急いでも間違えるだけだからな。慎重に。しっかりと。


 何が何でも、犯人を見つけ出す。そのために、手を尽くそう。

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