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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
2章 捨てるべき迷い

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66話 一時の憩い

 アリアとウェスにもアクセサリーを渡したいが、良い口実が浮かばなくて困っていた。いや、隠れて渡せば良いのかもしれないが。ただ、隠れる場所も問題になる。急に呼び出して2人にアクセサリーが増えていたら、露骨すぎるからな。


 それに、学校もどきを襲った黒幕の存在もある。考えることが多くて、大変だ。だが、その大変さに負ける訳にはいかない。俺は周囲を守るために、手を尽くすべきなんだ。そうじゃなきゃ、納得できない。


 ただ、答えに近づいている感覚がなくて、苦しくもある。袋小路に迷い込んだような、あるいは暗闇の中にいるような。そんな風に思えた。


 それでも、立ち止まるなんて論外だ。俺の周囲の中で、俺が一番強い。その事実があるから、誰が活躍すべきなのかなんて、言うまでもない。


 とはいえ、名案は思いつかない。同じところをグルグル回っている感覚があって、とても悩ましい。


 そんな時だった。アリアとウェスが俺のところを訪ねてきた。


「レックス様、お食事を用意いたしましたので、休憩にしませんか?」

「ご主人さま、最近疲れてるみたいですからっ。少し、休みましょう?」

「俺に問題は無いんだが。まあいい。食事だな。案内しろ」


 ということで、食事が用意された部屋に連れて行ってもらう。アリアやウェスも席について、同じものを食べていた。他の人間がいない状況は、心地良いし、ちょうど良い。今なら、アクセサリーを渡せるかもしれない。


 俺の魔力を込めたものは、いつでも転移で呼び出せる。その事実があると、とても楽だな。本当に、応用の幅が広い。何にでも使えるな。


「レックス様、お味はいかがですか?」

「悪くないんじゃないか? よくやった。褒めてやろう」

「ありがとうございます、ご主人さま」


 ウェスは上目遣いでこちらを見ながら、軽く笑う。今回は、ウェスが作っていたのだろうか。味で誰が作ったか、理解してやりたい気もするが。今の俺には難しいな。まだ、そこまで舌が肥えていない。


「ウェスは、レックス様を心配していたんですよ? しっかり、褒めてあげてください」


 そう取れるセリフを食事前に言っていたし、確かな事実なのだろう。胸が暖かくなるな。とはいえ、態度を崩すのもな。できれば、全力で褒めたい気持ちはある。だが、演技が壊れる可能性を考えると、親しい人だけの空間なら大丈夫とは言えないんだよな。


 ただ、感謝を形にしたいのは本音だ。そうだ。ちょうど良い物があるじゃないか。


「まあ、いいだろう。褒美をくれてやる。ほら、2人とも。こっちに来い」

「分かりましたっ、ご主人さま」

「私にもいただけるのですか。感謝します」


 ということで、2人にチョーカーを付けていく。ウェスはくすぐったそうに、アリアは満足げに、俺が付ける姿を眺めていた。


「ほら、俺が手ずから付けてやったぞ。どうだ?」

「ご主人さまからの贈り物、大切にしますねっ」

「そうですね。レックス様には、とても感謝しています」


 大切にしてくれるなら、ありがたい限りだ。2人を守るための道具でもあるので、ずっと付けていてくれた方が良い。他にも、俺の贈ったものを大切にしてくれるのなら、笑顔になってしまいそうでもある。


 やはり、メイド達は大事な存在だな。今後も良い関係で居られるように、努力を続けていかないと。俺は口が悪いキャラを演じているから、しっかりと行動で意思を伝える必要がある。


「当たり前だな。俺という最高の主人を手に入れたんだから」

「ご主人さま以外の人に、仕える気はありませんよっ」

「私は、あなたの子々孫々まで、見守っていきたいですね」

「お前達は俺の物なんだから、初めから自由なんてないのだがな」


 なんて、本音とは程遠いのだが。一緒に居てほしいのは事実だが、相手を縛り付けたいとも思わない。幸せに過ごしてくれるのが、一番なんだ。


 とはいえ、メイドに心を砕く姿は、父には見せられない。そう考えると、普段から演技を続けていくしかない。


「そう言って、守ってくださっているんですよね。ありがとうございます」

「ご主人さま、ずっと、わたしをあなたの物にしてくださいっ」


 まあ、アリアの言うことも間違ってはいない。俺の物に勝手な扱いをしたら許さない。そんな建前を使うための言葉でもある。それを理解してくれるのは、とても嬉しい。同時に、ウェスが、俺のメイドであることを幸福だと感じてくれていることも。


 流石に、本気で道具みたいな扱いをされたい訳ではないだろう。だからこそ、これからも、しっかりと大事にしていきたい。守っていきたい。俺の望みは、親しい人と楽しい時間を過ごすことだから。


「始めからそう言っているだろう。お前達は、あくまで俺の道具なんだから」

「はい。好きに使ってくださいっ。それが、道具の喜びなんですっ」

「だったら、これからも俺に尽くすことだな。そうすれば、道具としての喜びくらい、与えてやる」

「もちろんです、レックス様。あなたならば、きっと良き当主になるでしょう」

「ご主人さま、あなたのそばに居ることが、わたしの喜びなんですよっ」


 2人は、俺に尽くしてくれている。その分を、必ず返していきたい。今回だって、悩んでいる俺に気を使ってくれたんだから。よく見てくれているし、大事にされているのも伝わる。だからこそ、俺も相手を大切にするんだ。


 まあ、利益があるから2人が大事な訳では無いが。彼女達に限らず、親しい人は、ただ傍に居てくれるだけで幸福なんだ。その感情も、できれば伝えたいのだが。レックスのキャラからすると、おかしいよな。


「まったく、物好きなことだ。だが、それならば、好きに使わせてもらおう」

「はいっ! ご主人さまに貰った幸せは、絶対に大事にしますからっ」

「レックス様は、道具を大切にされる方ですから。あなたの道具も、悪くありません」

「そういえば、ウェス。これが新しい黒曜(ブラックバレット)だ。ついでに、受け取れ」

「ありがとうございますっ! 新しい武器まで……。絶対、今度は奪われませんからっ!」


 ウェスの目を見ていると、黒曜(ブラックバレット)を大事にするあまり、無理をしないか心配になった。陶酔というか、熱情というか、そういう強い感情が見えたから。


 当たり前だが、道具なんてウェスの命に代えられるものじゃない。それは、なんとしても理解してもらわないと。


「その程度のもの、またくれてやっても良い」

「あなたのために、絶対に死にませんっ。約束しますっ」


 その言葉は、本気に見える。だから、大丈夫なはずだ。ウェスが無事であるのなら、他のことなんてどうでもいいのだから。黒曜(ブラックバレット)が奪われようが、俺の手間が増えようが。


 だからこそ、何が何でも生きていてほしい。もちろん、アリアにも、他の人達にも。それだけで、俺は幸せで居られるのだから。


「やはり、レックス様はお優しい方です。ずっと、そのままで居てください」

「俺は、俺の好きなようにするだけだ。これまでも、これからもな」


 俺のやりたいように、みんなを守ってみせる。その上で、幸せな未来を過ごしてみせる。必ずだ。


 これから先、どれほど俺の手が汚れようとも、絶対に達成すべき誓いなのだから。全身全霊をかけるなんて、当たり前だ。


 原作での事件は、とても大変だろう。その前に、いま起こっている事件の黒幕も探るべきだ。前途多難だな。それでも、未来をつかみ取ってみせる。

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