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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
15章 作られる未来

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537話 笑顔のために

 平和になったことを示すために、王女姉妹主導でパレードをすることになった。今は開催の直前。


 参加者は全員集まっており、今回の作戦に参加した人ばかり。俺の知り合い以外も居るが、今は知り合いで集まっている。というか、パレードでも集まる予定だ。


 こういうところから派閥ができていくんだろうという気はするが、知らない人と仲良くパレードするのも難しい。妥当なところなんだと思う。


 ミーアはみんなを見回して、ゆっくりと口を開いていく。


「さて、行きましょう、みんな。王家の威信を、示す時よ」

「大げさなようで、事実なんですよね。ここで民衆に示すことが、大事なんです」


 ミーアもリーナも、かなり明確に意図を持ってパレードを実行しているようだ。当たり前のことではあるのだが、その当たり前が案外難しい。


 なんだかんだで、思いつきで行動することってよくあるからな。そういう意味では、王女姉妹はとても優秀だと言える。


「じゃあ、気合いを入れていかないとな。といっても、手を振るくらいだが」

「それが一番大事なのよ。この人達がいれば大丈夫。そう思ってもらうことがね」

「話すべきことは、私たちが話します。いつも通り、合わせていただければと」

「分かった。みんなも、よろしく頼む」


 そう言って、俺は周囲に頭を下げる。知り合いはみんな、反応を返してくれた。ひとまず、俺の役割は決まっている。果たせるように、頑張らないとな。


 本番になると、まずは集まった民衆の前に立っていく。通りを回る前に、一度演説をする流れだ。


 俺たちはミーアとリーナの後ろに並んで、姿勢を正して立っている。ミーアとリーナが、息を吸った。


「レプラコーン王国には、多くの災難が訪れました。ですが、私たちは決して屈しません!」

「私たちの手で、あなた達に安寧を。未来を。希望を。それが、王家の務めです」


 民衆たちは、静かに聞き入っている。特にミーアは、人気が高いようだからな。それもあって、しっかりと聴衆に届いているのだろう。


 そのまま、ミーアは声を張り上げて話していく。リーナも、しっかりと遠くまで届く声を出していた。


「レプラコーン王国は、倒れません。より強く、立ち上がるでしょう!」

「ここに居る多くの英雄たちが、あらゆる敵に勝利を収めるでしょう。無論、私たちも戦います」

「その中心となるのが、かのフィリス・アクエリアスすら認める最強。レックス・ダリア・ブラックなのです!」


 ミーアに腕で指し示され、俺は前に出ていく。儀礼用の剣を振り上げて、予定通りの宣言をする。


「必ず、俺たちの手で王家を、国を、民を、守り抜いてみせよう!」

「レックス! レックス!」

「私たちの英雄よ! 私は見たの!」


 ひとり、ふたりと声を上げていく。それから、爆発的な歓声が巻き起こっていった。大きな流れになっていて、かなりコールが響いている。


 その間、俺はずっと剣を掲げ続けていた。ちょっと疲れたのは、俺だけの秘密だ。


 演説が終わった後は、馬に引かれながら、豪華な荷台のようなものに乗って笑顔で民衆に手を振っていく。その間、軽く雑談をしていた。


 護衛なんかもいて、民衆は声の届く距離に来られない。暇なのもあって、話は進んでいく。


「バカ弟も、案外サマになってたじゃない。馬子にも衣装ってやつね」

「カミラさんも、素直ではありませんわね。いつもとは印象が違うのは、確かですけれど」

「お兄様は、いつでもカッコいいの! ね、お兄様!」


 カミラがいつも通りの厳しい態度を取って、フェリシアが合いの手を入れる。なんだかんだで、ふたりとも声が優しい。ツンケンされても、からかわれても、俺がふたりから大事にされているとよく分かる。


 メアリは元気いっぱいに、俺を褒めてくれる。無邪気に慕ってくれるのは、素直に癒やされるところだ。


「……課題。レックスは、もっと人々の前に立つ練習が必要」

「フィリスとて、最強の魔法使いとして何度もやってきたことだからな。私には、教えられないが」

「僕たちにも、いずれ必要になるのかな。レックス様でも難しいなら、厳しいよね」


 フィリスが俺の不慣れを指摘して、エリナが軽く同意する。こういうところでも、俺を導いてくれているんだよな。本当に、ありがたい師匠だ。魔法だけ、剣だけを見てもいいだろうに。人生を導くような存在であってくれる。どれほど得難いことか。


 ジュリアはちょっと不安そうにしている。俺としても、分かるところだ。人前に立つのは、戦いとはまるで別種の難しさがある。


 特に知り合いでもない人ばかりだから、いまいち対応が分からないんだよな。以前は嫌われてばかりだったし、今なら大丈夫なのかも気になる。


 まあ、慣れていくしか無い。絶対に必要なのは、間違いないからな。


「逆に、私たちが先に覚えれば、なでなでと抱っこを狙える」

「レックス様に教えるってことよね。それは……素晴らしいわ……」

「あたしなら、お役に立てると思いますよ。立場がありましたから」


 サラとシュテル、そしてラナは俺に先んじようとしているみたいだ。実際、誰かに教えてもらうのは大事だからな。身につけて教えてくれるというのなら、なでなでと抱っこくらい安いものだ。


 まあ、仕事の一環にもなるのだし、ちゃんとした報酬も必要ではあるが。誰に任せるのかも含めて、よく考えていこう。


「近衛騎士とも、連携を取ることになるでしょう。手を取り合うことも、大事ですね」

「ふふっ、レックス君は人気者だね。その調子なら、きっと他の人たち相手でも大丈夫だよ」

「私としても、手伝わせてもらおうかな。レックス君が好かれるのは、嬉しいものだよ」


 ハンナが穏やかな声で話し、ミュスカとセルフィは俺を励ましてくれている様子。こういう時に手伝ってくれる仲間がいることこそ、俺の何よりの財産だ。


 なんだかんだで、みんなが俺を大事にしてくれている。その分、俺もみんなを大事にしないとな。それが、お互い様というもの。


 友達として、ちゃんと助け合っていきたいものだ。一方的に借りを作るだけじゃなく、返せるように。


「あたくしだって、負けていられなくってよ。ねえ、レックスさん」


 ルースは俺に対抗意識を持っている様子。こういうところでも、高め合えるのは良いことだ。良いライバル関係として、お互いの成長につながっていくだろう。


 魔法使いとして、貴族の当主として。そしてひとりの人間として。ルースには、そう簡単に負けていられない。良い勝負になった方が、俺たちにとって良い影響があるだろうからな。


「みんなの笑顔は、良いものだな。こうして見られる機会を、増やしたいものだ」

「レックスさんも、お人よしなことです。前から分かっていましたが、変わりませんね」

「私たちが、みんなを導くのよ。笑顔があふれる未来へね」


 ミーアの言葉に、俺は深く頷いた。仲間だけじゃなく、この国の未来も大事だからな。


 俺たちは、平和を守らなくちゃいけない。その誓いを、パレードに集まってくる民衆に向ける笑顔に込めた。

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