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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
14章 抱え込むもの

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506話 手を出す意味

 ミュスカやセルフィとの話が終わった頃、ジャンからすぐに帰ってくるように頼まれた。ミーアを初めとした関係者に伝えるだけ伝えて、転移で帰る。


 すると、ジャンとミルラが深刻そうな顔をしていた。こちらを見て、すぐに話し始めた。


「兄さん、報告があります。暴動が起きそうな動きがあるんです」


 なるほど。確かに俺がいるべき状況かもしれない。どう対処するにしろ、方針くらいは必要だろう。


 領民に大きく影響することである以上、ジャンやミルラの独断で対処して良い限界を超えている気もする。実質的には多くを任せるだろうが、それでもだ。


 少なくとも、俺が許可して行動するべきことのように思える。だから、呼び出されたようだ。


 まあ、まずは状況の確認からだ。まさか、兆候を確認してただ見ていたわけではないだろう。自分の裁量で収まる範囲で、なにかしているはずだ。


 そうでなければ、俺がすぐに動けない状況では何もできないことになってしまう。今回のように転移でどうにかできるならまだしも。


「なるほど。お前たちで打てる手は、打っているのか?」

「もちろんでございます。人員や施設の防衛ができるように、配置を済ませております」

「とはいえ、兄さんの指示を仰ぎたいところではありますね」


 ふむ。最低限のことはできている様子だ。なら、どこまでやって良いかを聞いているのか。


「方針を出すためには、情報が必要だ。分かることを教えてくれるか?」

「農具や刃物を不自然に買っている集団がいるという程度ですね。規模は、そう大きくないかと」

「今のところは、大規模な計画とは言い難い状況でございます。ただ、今後どうなるかは不明となっております」


 そうなってくると、敵は小規模な集団ということ。扇動者が居るにしろ、領を揺るがすレベルのことはできていない。少なくとも、今はまだ。


 とはいえ、暴動が起きる流れが繰り返されるのも良くない。早い段階で、潰しておきたいところではある。


 ただ、何も起こしていない段階で捕らえたりするのも、それはそれで問題が起きそうだ。暴動のきっかけを俺が作ることになりかねない。


 とにかく、小規模ということだけは分かった。もう少し、詳しく聞いてみるか。


「ふむ。個人や一集落の暴走程度の話ということか?」

「その通りです。事前に対処することも簡単ではありますが、兄さんはどうしたいですか?」

「私どもは、レックス様のお心に従う所存でございます」


 ジャンやミルラに任せるのも、手段ではあるだろう。小規模な動きなら、俺が何も言わずとも対処しても良いかもしれないし。


 ただ、ふたりともかなり残酷なことをするタイプでもあるんだよな。せっかく方針を聞いてくれているんだし、ちゃんと示すのも大事か。俺が居ない時の行動の方針にもなるはずだ。


「基本的には、人員の安全を最優先にしてほしい。分かっているとは思うが、ちゃんと言っておく」

「かしこまりました。とはいえ、農具や刃物程度でしたら、特に何もせずとも被害は出ないかと存じます」

「闇魔法で守るだけの準備はしていますからね。それを抜くのは、現状の敵では不可能に近いかと」


 俺が絶対に避けたいことだけは、避けられそうだ。それなら、任せても良いのかもしれない。俺の仲間さえ無事で居るのなら、それ以外の優先順位はあまり高くないからな。


 とはいえ、民に被害が出ることも避けたい。暴動の動き次第では、無実の民が巻き込まれる可能性もあるからな。ただ、どこまでやって良いのかが問題になる。


 銃刀法みたいなものは、特に無い。だから、事前に捕らえる口実なんかは用意できなさそうに思える。ジャンやミルラなら、何か思いつくかもしれないが。とにかく、俺のできることは方針を提示することだけだ。それをやろう。


「なら、できるだけ止められるように動きたいところだな。それで良いか?」

「事前に始末せず、でございますね。承知いたしました」

「となると、噂を流したり警告したりする程度ですかね。罪状をでっち上げれば、話は早いんですけど」


 農具や刃物を買っているだけでは、捕まえられる領地でもない。なら、手段として実行できるのはジャンの意見となるだろう。


 だが、そこまでして良いのだろうか。冤罪をふっかけることが当たり前になるのは、さすがに良くないと思うんだよな。大規模なテロとかを止めるとかなら、考えることではあるが。


 今の段階では、被害予測はそこまで大きくない。そうなると、まだ打つ手ではないな。


「正規でない手段は、よほどのことがない限り避けたい。それを前提に行動するのは、良くないからな」

「分かりました。防げるかどうかは怪しいですが、大事なところに被害を出すことはあり得ません」

「こちらで暴動の動きを誘導するのも、ひとつの手でございますね」


 どうしても、こういう状況だと後手に回ってしまうな。倫理的な問題や法的な問題を無視すれば、今の段階でも潰せるのだろうが。


 なら、正規の手続きで潰せるようにしていくのも悪くないかもしれない。とはいえ、具体的な線引をどこにするのかが問題だ。


 何でも摘発できるような法にするわけにもいかないし、バランス感覚が大事だよな。


「暴動を計画した段階で捕らえる法を作るのも、無くはないか。ただ、基準をどうするかだな」

「今からでは、今回の暴動には対処できません。今すぐにすべきことではありませんね」


 確かに、今の段階では暴動への対処を優先すべきか。法律の話は、中長期的な構えになるだろうからな。目の前の問題の方が、優先順位は高い。


 となってくると、後は何ができるだろうか。今の俺には、思いつかないな。まあ、最悪の事態は避けられそうなのだから、それで最低限のことはできているのだが。


「まあ、そうか。なら、ひとまずは今の方針で終わりそうだな。何も起きなければ良いんだが」

「情報を引き出す備えも、しておきますね。裏があれば、厄介ですから」

「最終的な処分も、考慮させていただきます。おそらくは、死罪になると存じますが」


 確かに、ジャンやミルラの言うことも大事だな。暴動が起きた前提にはなるだろうが、その後の話も大事ではある。


 罰則に関しては、何でもかんでも死罪は避けたい。とはいえ、武器を持って暴動を起こしたのなら死罪が妥当だという判断も分かる話だ。少なくとも、首謀者は殺すことになるだろう。


 とはいえ、暴動の規模や被害、目的にもよるだろう。今すぐに決まるものではないな。


「更生に期待できれば、それが理想ではあるが。まあ、情報次第ではあるか」

「では、そのように。特別な何かがない限り、こちらで最後まで済ませておきます」

「レックス様のお手を、わずらわせはいたしません」


 さて、どうなるか。大きな問題にならないと良いのだが。

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