表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
14章 抱え込むもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

500/569

499話 リーナの願い

 私は、レックスさんと共に王国で奴隷に仕事先を与えるという計画を動かすことになりました。


 レックスさんの手を借りて、魔道具の仕組みの一部を使うことになります。魔法を強化できる道具を作るのが、現状の目標ですね。


 この手を打つことによって、間違いなく奴隷の上に対する一手になることでしょう。それを、レックスさんは喜んでいるようでした。相変わらず、お人好しというか。呆れてしまいそうなくらいです。


 まあ、そんなレックスさんだったからこそ、私を救うことができたんでしょうけれど。だから、別に否定はしません。私とは考え方が違うとは思いますが。私にとって大切なのは、身内だけですから。有象無象なんて、むしろ消えてほしいのが本音です。


 だって、そうでしょう。私を出来損ないの姫と言い続けてきた貴族も民衆も、今となっては掌を返そうとしている。腹立たしいという程度ではありません。いっそ、むごたらしく死んでほしいくらいです。


 とはいえ、実利の面では否定すべき部分が多いです。だからこそ、わざわざ死なせたりしない。それどころか、手助けすることすらあるんですよ。


「飢えた人が増えると困るのは、確かに事実なんですよね」


 私としても、良くない展開が待っているでしょうから。今の私としては、王国に滅んでほしいとは考えていません。ですから、ことさらに国力を弱めるような真似は避けたいんです。


 どうせなら、王国が覇権を取っても良い。その程度には考えています。わざわざ狙うほどのことではありませんが、状況としては悪くないですから。


 統一国家にまでなってしまえば、私の目標は遠ざかってしまいそうですけれどね。まあ、無いでしょう。そこまで実現できるような国なんて、未来永劫存在しないはずです。


 人類にできることだというのなら、長い歴史のどこかで実現していないとおかしいんですよ。有史以来、ただの一度も世界を統べる国は生まれなかった。それが答えというだけ。


 だから、相応に国力を拡大することを狙っていくのが、私としても狙うべきことです。奴隷を救うのも、その一環でもありますね。


「王国が倒れたら、私の計画はすべて崩壊してしまいますし」


 私の立てている計画は、すべて私が今の立場であることが前提ですから。レプラコーン王国を潰すことは、選択肢にはありません。


 一応、大切な存在もいますからね。レックスさん以外にも、大事だと思える友達はいます。そんな人たちを不幸にする意味もありませんし。


 レックスさんを争う恋敵ではありますけど、協力した方が良いと思うんですよね。良くも悪くも、レックスさんは王国の民と考え方が違う。それを縛り付け、価値観を歪めるためにも。


 ひとりでは押し切れないことも、人数がいれば押し切れるんです。それこそ、重婚とかですね。どの道、私とレックスさんが素直に結ばれる道は無さそうですから。なら、いっそ複数の妻を持つことでレックスさんを逃げられなくする。悪くないでしょう。


 そして、レプラコーン王国の姫という立場は便利に使えます。多くの貴族にとって、上に立つ存在なんですから。レックスさんの妻としても、上位を目指せるでしょう。


 だから、私は王国を大事にするつもりですよ。私の道具としてね。


「亡国の姫という立場だと、流石に問題が多いですからね」


 ただの一個人として、レックスさんのもとで生きる。そんな人生に、憧れる気持ちはありますが。王族として生まれた時点で、不可能です。


 逃げ出してレックスさんに保護されたとして、彼が逆賊になる可能性もありますし。亡国の姫になったのなら、命を狙われるのが当然です。そうでなくても、利用価値を見出されるでしょう。


 ですから、私が一番幸せになれる道は、王族としての立場を最大限に活用する道なんです。生まれた時点で、決まりきっていたこと。


 なら、その前提で最善を目指すだけ。妙な夢を見ていては、手に入る幸せさえ逃してしまうでしょう。


「というか、レックスさんだって大変なことになるでしょう。何もかも、問題だらけです」


 王国が潰れるということは、その一部であるブラック領にも、大きな負の影響があるということですから。レックスさんだって、とても困ってしまうはず。


 私には、王国を壊すという選択はない。私の欲しい未来を手に入れるためには、王国は必要な財産なんです。


 ですから、奴隷たちも本気で救うつもりではありますよ。少なくとも、王国に悪影響を与えない程度までは。


「ただ、一手に複数の意味を込めてこそ、ですよね」


 レプラコーン王国や奴隷への善意だけで策を練ったわけではありません。私にとって優先すべきことは、他にあるんですから。


 私は、全力で姉さんを支えます。この国を、姉さんが支配できるように。だけど、それが全てではありません。


 奴隷を救うということは、ただ王国の未来のために打つ手ではないということ。それだけです。


「もちろん、レックスさんや私の名声が高まることも大事です」


 そうすれば、未来のために打てる手が広がっていくでしょう。名声というのは、とても強い武器なんです。人を殺す大義名分を、容易に得やすくする道具なんです。


 私が悪だと断じれば、それが悪と大勢が認識する。名声が極まれば、そんな手も打てるでしょう。もちろん、まだ届いていない領域ですし、届くかも分かりませんが。


 それでも、名声を稼ぐということも悪くない。それも、ひとつの目的ですね。


「気になるのは、奴隷でも報われるという噂が流れたら、他国の民はどうするのかです」


 もしかして、成り上がりを目指して王国にやってきたりしないでしょうか。どうせ苦しい人生しか待っていないのなら、せめてもの夢を見て王国を選ぶ可能性もありますよね。


 そうなってしまえば、多くの問題が発生するでしょう。別の国の人間なんて、価値観も文化も違う。自分の国と同じように生きようとして、周囲から排除される。そんな未来も、あるでしょう。


 別に、どちらに転がっても良いんです。融和できるというのなら、受け入れましょう。対立するというのなら、名声のための糧になってもらいましょう。それだけのこと。


「特に、力が全ての帝国とか、面白いことになりそうですよね」


 力が弱くて、排斥される存在は居る。それらの人が、奴隷でも報われるという噂でどう動くか。ある程度は、想定できるというものです。


 弱いからこそ、制御も排除も比較的楽ではあるでしょう。その点も、悪くないですね。


「生産量に関しては、私の魔法で土壌を変えるという手がありますし」


 毎日毎日、限界まで魔力を吐き出し続けました。狂いそうになる痛みに耐えながら。全身の肌を剥がすよりも、なお痛いでしょう。それでも、私は毎日続けたんです。レックスさんに、必要とされるために。


 その甲斐あって、私は強くなりました。並大抵の魔法使いなら、千人いても万人いても、手間取らずに殺せるでしょう。


 だから、私の魔力で天変地異を引き起こすこともできる。それを利用して、国を良くする。私の名声も高まりますし、力も示せます。悪くない。


 まあ、魔法との合一とかいう技を覚えてしまったフィリスとの差は近づいていないんですけど。だけど、今はまだ気にしません。私の計画には、十分な力を持てていますから。


 当面は、難民が来ても飢えないだけの食料生産を実現することですね。そこから、すべてが繋がっていくんです。


「難民が増えれば、帝国が王国を憎んだりしないでしょうか」


 いくら弱い人を軽んじようとも、その存在は必要不可欠なんです。国家を運営する上では、どの道。生産に従事する存在、やりたくない仕事を任せられる存在。そういう人が居てこそ、国は成立するんですから。


 ただ武力だけを高めた国の末路など、考えるまでもありません。とはいえ、短期的には別です。そこも、私たちの狙い目ではありますけれど。


「仮に憎まずとも、調略だと言い張ってくれたりしそうですよね」


 そして、王国を攻めようとする。それを打ち破れば、名声は高まるでしょう。帝国の価値観は、力が全て。だからこそ、頂点に立てる存在が明らかになるのでしょう。


 悪くないですよ。帝国を贄に捧げるだけで、私の望む未来が近づくんですから。


「帝国は、というか皇帝は、自分の力に自信を持っているようですが」


 戦いで頂点に立ってこそ、皇帝になれる。そんな国ですからね。なまじ周囲を打ち破ったからこそ、強さには自信がつくのでしょう。


 それは、フィリスも私も姉さんもレックスさんもいない世界での最強だということを、知らないまま。


 帝国の皇帝は、五属性使いだという情報は流れてきています。ですから、一般的には圧倒的な強者なのでしょう。


 ですが、調べた限りでは才能に奢るだけの存在。おそらく、カミラさんやエリナさん、ハンナさんにも敗れる程度でしょうね。ましてや、その先には。


「情報操作の可能性を考えても、私の敵ではなさそうなんですよね」


 手の内を隠すというのは、戦いでは基本です。ですが、隠そうとすれば見えるものもあります。レックスさんが、闇魔法の可能性を隠しきれていないように。


 その考え方からして、帝国の皇帝には強い切り札はない。あったとして、私には届かない程度の技に見えます。魔力との合一にたどり着いているのなら、絶対にその可能性は隠そうとする。だからこそ、そこまでたどり着いていないことが見えるんです。隠そうとする痕跡すら、見えませんから。


「そして何より、レックスさんの敵には足りないでしょう」


 魔力と合一したところで、今のレックスさんに通じるものではない。ですから、結局のところ皇帝は敗れ去る。


 もし仮に正面での強さがあるというのなら、毒でも何でも使いますけどね。表向きはレックスさんが正々堂々と破った形となるように、演出しながら。


 どれほど強さを隠していたとしても、未来は決まっているんですよ。


「だからこそ、レックスさんが成り上がるきっかけになるんです」


 うまくやれば、レックスさんに帝国を支配してもらうこともできるでしょう。皇帝として立つことも、あり得ます。


 二の矢三の矢を打つつもりではありますが、かなり大きく目標に近づけるんです。


「王家の姫をふたり妻とするとなれば、並大抵では足りませんからね」


 国の主になったところで、足りるかどうかは怪しい。だからこそ、レックスさんにはどこまでも高みに登ってほしいんです。


 そのために、他国だって利用してみせましょう。国を滅ぼそうとも、私は成し遂げてみせます。


「まずは一歩、しっかりと実現を目指しましょう」


 しっかりと、奴隷に関する事業を成功させましょう。まずは、そこから始まるんですから。


 レックスさんに、私をもらってもらう。その未来まで、私は立ち止まりませんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ