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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
14章 抱え込むもの

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498話 ミーアの民

 私は王女として、この国で行き場を失っている奴隷に働き口を与える政策を実行することにしたわ。


 レックス君と協力して、新しい事業を起こす。もちろん、ただ奴隷たちを助けるためだけに考えた手段ではないけれど。


 王国としては、完全に職を失う民が増えるのは、確かに避けたいところではあるわ。とはいえ、人数は限られている。必要な犠牲と考えても、成立する程度の話でもあるの。


 だからこそ、私は現在の奴隷に起きている問題を解決するために動くと決めたのだけれど。大勢に大きな影響はないからこそ、好き勝手に動けるから。


「良い機会ね。私とレックス君の名声を引き上げるために、しっかりと役立てましょう」


 奴隷を救ったということ、国内の戦力を高めるということ、新しい商売で成り上がる機会を用意したこと。どれも、私たちの信望を高めるために使えるでしょう。


 民に慕われるということは、確かな力になるの。私のすることだからと信じられるようになれば、細かい配慮の必要性が下がっていくのだから。


 もちろん、私の味方をする貴族にも利益をもたらせるように気を配るわ。大切なことは、私の味方でいることを都合が良いと思わせることよ。


「単純な力なら、私たちは周囲を押し切れるわ。だからこそよね」


 私とリーナちゃん、レックス君が協力しただけで、大抵の貴族は領土ごと消し去れるわ。それだけの力を、私たちは持っている。


 だから、ある程度の損得勘定ができるのなら、私たちに本気で敵対なんてできないの。だって、周囲の存在ごと吹き飛ばされたら終わりなんだから。


 とはいえ、それだけの力を持っていると広まれば、恐怖を抱かれることもあるでしょう。今のレックス君が、そうであるように。


 だから、私たちにとって大事なものは、人望になってくるのよ。ちゃんと私たちの味方でいる限り、破滅しないという信用よね。


 そのために、私は今回の事業を構築したの。周囲に利益をもたらしつつ、融和をする意志があると示すために。


「今の私たちに本当に必要なのは、実利じゃなくて名声だもの」


 力はすでに持っている。金銭だって、必要となれば用立てられるわ。私が慕われている限り、多くの手段を取れるのだから。そもそも、圧倒的な力を背景にする手もあるもの。どうとでもなるところよ。


 だからこそ、今の私たちは足場を固めなくちゃいけないの。多少の金銭や利益を吐き出してでもね。


 私が何を狙っているか、分からないのならそれで良いわ。ただ自己利益を追求するのなら、私が作った流れに乗るのが必然だもの。


 魔法を強化できる道具があるとなれば、貴族は手に入れようと躍起になるでしょう。それは、メアリちゃんの事件も証明しているわ。


 つまり、事業の中核を握っているものが最後に笑うのよ。そう、私が。


 強さや金銭を求める限り、私の策にはたどり着けない。理解していたとしても、強欲な人たちを敵に回せないでしょう?


 動き出した時点で、もはや手のひらの上なの。だから、存分に私たちが作る道具を求めて良いのよ。


「ふふっ、うまく引っかかってくれると良いんだけど」


 最終的に、私に心臓を握られることになるでしょう。道具である以上、経年劣化や耐久性の問題もあるもの。一度手に入れただけでは済まないのが、魔導を増幅する道具の肝。


 力を求める限り、私の事業に協力するしかない。逆らうのなら、奪ってあげれば良い。単純なことよね。


 もし技術を盗もうとしたところで、本筋はそこではないというオマケ付き。二重三重の策を仕込んでこそ、よね。


「潜在的な敵も、あぶり出したいところね。もう、露骨にレックス君とは敵対できないもの」


 レックス君と敵対すればどうなるか。彼が示し続けてきたわ。単純な力で、葬り去られるだけ。だからこそ、多少なりとも頭が回るのなら、レックス君の機嫌を取るしかないの。


 とはいえ、レックス君を完全に周囲から排除するという手段も取れなくはないわ。もちろん、彼の周囲が防ぐでしょうけれど。


 最終的には、表向きレックス君の味方をしておくというのが答えになるでしょう。そうなってくると、内部で何かを企むはずよ。だからこそ、今のうちに当たりをつけておかないとね。


 レックス君の名声を奪おうとする人が、怪しいところ。しっかりと、目を向けましょう。


「ブラック家の敵は、私の敵でもあるのだもの。ちゃんと、排除しないとね」


 私の恩人と知っていて敵対するのなら、王族を無視するということ。ブラック家の名前だけで排除しようというのなら、まともに見る目を持っていないということ。レックス君の力を恐れるのなら、私だって恐れるでしょう。


 どの感情から来ていたところで、私にとっては始末すべき存在でしかないわ。そもそも、私の目標はレックス君と結ばれることよ。彼の敵なんて、いらないの。


「王族というのは、面倒よね。好きな相手と結ばれるだけのことですら、手間取るのだもの」


 そういう意味では、ただの民が羨ましいと思う瞬間も否定できないわ。ただ、今の私だからこそ、レックス君と今の関係を作れたんだもの。もしもなんて、いらないわ。


 ただ、しっかりと未来は変えていかないとね。私たちにとって理想の世界につながるように、たくさんの手を打っていきましょう。


 私とレックス君は、必ず手を取り合うの。他の知り合いとも、一緒にね。王族としての立場として、ね。


「でも、だからこそ祝福される未来もあるわ。悪を打ち破ることでね」


 王家は、民の困りごとを解決するのが大事な役割。もちろん、個人が困っているという程度の話ではないけれど。


 疫病による間引きなんて、分かりやすい話よね。病気の当事者にとっては、たまったものではないのでしょう。だけど、放っておけば民が困る。だから、解決するのよね。感染者を殺してでも。


 同じように、民という集団が困ることを解決する。あるいは、そう見せるのが大事なことなのよ。


「私たちの敵は、民衆にとっての敵。そうなるように、立ち回っていきましょう」


 民が憎むというのは、なかなかに面倒な事態を招くのよ。極端な話、反乱が起きたりしてね。


 レプラコーン王国では、平民には魔法使いは少ない。だから、そう簡単に成功しないでしょうけれど。とはいえ、弱い貴族なら話は別よ。


 そして、民衆だけでは打倒できない存在が悪だとすれば。それこそ、王家の役割よね。


「私腹を肥やそうとして、私の事業を邪魔する悪者。それを排除すれば、信望が高まるもの」


 だからこそ、私たちの敵には悪でいてもらいましょう。情報操作も、大事なことよ。


 例えば、ちょっとだけ不作が起きたとしましょう。その時に、普段は重税を課している領主が居れば。彼が私腹を肥やしているからこそ、民は困っているのよね。だからこそ、排除すべき。そういう感じで焚きつけるのは、大事な手だわ。


「ふふっ、良い感じね。結果として、私の民は救われるんだから」


 悪者が倒されて、民は喜ぶでしょう。実際に、利益をもたらしてあげましょう。そうすれば、悪人より私を慕うようになるわよね。


 実際にどんな現実があったかなんて、民は気にしないわ。分かりやすい物語こそを、求めているの。正義の王族が、腐敗した悪を倒すというね。


 だからこそ、単純であることが大事なのよ。私腹を肥やしているなんて程度の、ね。


 ちゃんと、あなた達の敵は排除してあげるわ。だから、余計なことは考えなくていいの。


「レプラコーン王国の民は、私たちの味方をしてくれないとね?」


 そうでなくては、私の民とは呼べないわ。私腹を肥やす存在でしかないの。分からないのなら、残念な話ね。


 だけど、私を慕ってくれるのなら民として扱うわ。守るべき存在として、ね。


「大切な労働力で、私の立場を支える存在だもの。相応に、大事にしましょう」


 酷使なんて、しないわ。そんなこと、無駄だもの。丁寧に扱うことこそ、能力を発揮させるコツでもあるのだから。


「私に感謝する心があるのなら、ちゃんと幸せにしてあげるわよ」


 そう。余計なことを何も知らないまま、手のひらに収まる幸せをあげるわ。ありふれた日常を、当たり前に生きる。そんな幸せをね。


 身の丈に収まらない欲望を抱くということは、私腹を肥やすということよ。分かるわよね。


「私とレックス君の結婚を祝福する存在は、必要だものね?」


 だから、私の民には相応の幸福をあげる。


 レックス君と私が結ばれる未来で、存分にお祭り騒ぎをさせてあげましょう。


 私とレックス君の未来は、幸せに包まれたものになるわ。ね?

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