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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
14章 抱え込むもの

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486話 ソニアの心配

 サラちゃんと仲良くなったことがきっかけで、私たちはレックス様に仕えることになった。初対面の時は、悪い印象ではなかったかな。それでも、博打だと思いながら選んだ道ではあるんだけれど。


 だって、ブラック家だし。サラちゃんだって、ただの可愛い子とは限らないし。レックス様だって、表だけは取り繕えるのかもしれなかったから。


 アカデミーの人間を評価するって言って、なにかひどいことに利用される。そんな心配だってあったんだ。最悪、ボロ雑巾みたいになった挙げ句に殺される。そんな覚悟までしながら、私は選んだ。


 本当は怖かった。レックス様は、私たちをただの道具として使うんじゃないかって。サラちゃんも、協力をしているんじゃないかって。


 それでも選んだのは、アカデミーに居続けても未来がないって思ったから。どうせ真っ暗闇なら、せめて希望が見える方に進みたかったんだ。


 結果としては、レックス様は当たりだった。私の能力も人格も、全て認めてくれる。大事な仕事を、信じて任せてくれる。そして何より、本気で私たちの幸せについて考えてくれていたんだ。


 もらったアクセサリーは、その証。闇魔法が込められていて、ちょっとした危険くらいなら問題ないんだから。うっかり刃物が刺さりそうになった時も、無傷で済んだ。効果を報告したら、心配そうな顔をしていたっけ。


 だから私は、心からレックス様を信じるって決めたんだ。今の姿が演技だというのなら、騙されても良い。それなら、仕方ないよ。私は、確かに夢を見ていたんだってだけだから。


 今の私は、今までの人生で一番の幸せを手に入れている。それだけは、確かな本当だから。


「レックス様、相変わらず優しいよね」


 もっとうぬぼれていても、何もおかしくはないんだけど。物量を圧倒できるだけの力を持っていて、周囲からも持ち上げられている。だから、支配的な言動を取るのが普通だと思うんだ。好かれるのが当たり前だって対応をしたりね。


 例えば、メイドたちに無理やり手を出したりとか。奴隷に高圧的になったりだとか。私たちに成果を出すように厳しく要求したりとか。


 どれもなくて、本当にびっくりしちゃうよ。私たちが幸福であることを、何よりも望んでくれているように見えるから。もっと、自己中心的でも普通だと思うんだけどね。


 たぶん、レックス様は特別なんだと思う。あんまり、同じ人間だって思わない方が良いくらいには。実際にそういう態度を取ったら、きっと悲しそうな顔をするんだろうけれどね。しょげちゃう姿が、目に浮かぶようだよ。


 だから、私はレックス様が大好きなんだ。これからもずっと、一緒に居たいと思うくらいには。


「私も、もうちょっと仲良くしたかったりして。今でも、仲が良いとは思うけれど」


 当主様に敬語を使わなくて良いなんて、かなり変な話ではあるよね。仲が良い証だと思いたいけれど、誰にでも許していそうだという気持ちもあるよ。


 私としては、いろんな話をしたいかな。仕事の話も、くだらない話も。私のことを話してみたいし、レックス様のことを聞いてみたいとも思う。やっぱり、もっとお互いを知って良いはずだよ。


 きっと、レックス様は嬉しそうに聞いてくれるんだろうな。それが分かるから、話題がたくさん思い浮かんじゃう。話したいことなんて、どれだけでもあるんだ。


「話していて楽しい男の子って、初めてかもね。うん、良い相手だよ」


 からかったら、可愛い反応を返してくれる。それでいて、大切な誰かが傷つきそうになったら、目の色が変わるんだ。


 普段のレックス様は、言ってしまえばカッコよくはないかな。顔はいいけれど、そういうことじゃなくて。本当に、普通の優しい人って感じだと思う。ちょっと天然っぽいところも含めて、可愛いっていう言葉が近いかな。


 けれど、戦う人としての冷たさや覚悟も持ち合わせている。私たちのために、本気になってくれる。それが、すごいところ。


 落差っていうのかな。違う顔を見せてくれるところが、とっても良いと思うんだ。もっと他の顔も見たいって気持ちになっちゃう。


 そんなレックス様が、私を見る目。一番好きなところは、そこかな。何度でも見たいって感じるんだ。


「軽く見るわけでもなく、上だと思うわけでもない。私をまっすぐに見てくれる」


 部下だから、弱いから。そんな理由で私を下に見たりしない。年上だから、知識があるから。それで極端な尊敬をしたりもしない。ただ目の前にいる私を、私として大事にしてくれる。とっても素敵なことだよ。


 きっと、だから私はあるがままでいられるんだ。本当の私を、レックス様に見せられるんだ。安心して、自分を委ねられるんだ。


「私の主がレックス様で、本当に良かったよ」


 私がつかみ取った、唯一のもの。なんて、言ってみたりして。知識や技術だって、大事な財産だけどね。それがなくちゃ、レックス様と出会うきっかけすら生まれなかったから。アカデミーで優秀な成績を取っていたことは、無駄じゃなかったんだ。


 本当は、ずっと言い訳なんじゃないかと思っていた。魔法の代わりとして、ただ自分を慰めているだけなんじゃないかって。


 でも、今は違う。確かに成果を残せている。レックス様の役に立てている。認められているんだよ。


「これなら、ずっと続けていけそうだよね。運営も、順調みたいだし」


 ブラック家が潰れちゃえば、全部終わることではあった。だけど、その心配は少なくて済みそうだよ。ゼロとは言わないけれど、悲観的にならなくて良いくらいではあるから。


 レックス様が強いという事実は、とても大きい。敵対する人を、物理的に潰せるから。それが怖い人は、うかつに手出しできない。あまり成果を残しすぎると、後が怖かったけれど。レックス様が当主である限りは、大丈夫だって言えそうだね。


 だから私は、ただ目の前の仕事に集中できるんだ。余計なことを考えたりせずにね。


「できる限り結果を残して、恩返ししたいよね」


 優れた魔道具を作ることが、私の役割。それでなら、ちゃんと成果を出せる自信はあるよ。私の積み重ねた知識は、確かに役に立っているから。


 レックス様も、面白い発想を出してくれたりする。私より専門的な知識は薄いみたいだけど、私が思いつかない意見が出てくるからね。やっぱり、理想の主かも。


「こうして楽しく仕事ができるのも、レックス様のおかげなんだし」


 だからこそ、レックス様には幸せになってほしいよ。私が今感じている幸福くらいのものは、味わってほしい。


 そのためなら、大抵のことはできるよ。邪魔者を排除することだって、必要ならね。


 とはいえ、レックス様は犠牲が増えることは望まないだろうけれど。そこは、気をつけておくべきかな。


「まずは、仕事で結果を出すのが一番だよね。でも……」


 別の形で恩返しできるのなら、それも悪くないと思うよ。レックス様の望みが何か次第ではあるけれど。


 たぶん、大抵のことは許しちゃうと思う。それくらい、恩を感じているから。


「レックス様が、私を女の人として見るのなら。別に良いんだけど……」


 私の体を求めるというのなら、受け入れても良いと思うんだ。痛いこととか無理矢理とかなら話は別だけど、まず無いし。


 というか、体くらいで返せるだけの恩かというと、かなり怪しいよね。


「でも、ないか。かなり年上だし、乗り気でもないみたいだし」


 私やクリスが結婚したいって言っても、反応は微妙だし。ってことは、あんまり異性としては見られていないんだと思う。まあ、それは良いんだけど。レックス様の気持ちが、いちばん大事なんだし。


 とはいえ、寂しくないと言えばウソになるかな。私のことを、そこまで魅力的に感じていないのかもしれないから。


 人として大事に思ってくれていることは、疑ったりしていないよ。ただ、異性としての魅力だって認めてほしいって気持ちも、少しはあるんだ。


 でも、レックス様はあんまり興味を持っていないみたい。だから、仕方ないかな。


「ところで、レックス様はどうやって発散しているんだろ?」


 たぶん、もう来ているとは思うんだよね。そういう年齢ではあるし。だとすると、ムラムラすることとかもあるはず。


 もしかして、立場とか何かとかで耐えているのかな。そんな可能性も、頭に浮かんだよ。


 あり得るかと言えば、無くはないかな。レックス様の責任感は、分かるつもり。だから、ちゃんと責任を取れない相手に手出しなんてできないと思っているんじゃないかな。


 それってつまり、溜め込んでしまっているということ。当たっているとすると、ちょっとね。


「ずっと我慢しているのなら、あんまり良くないんじゃないかな?」


 だったら、責任を取らなくても大丈夫な範囲で発散させてあげるとか。あるいは、責任を取ることを捨ててもいい理由を用意してあげるとか。


 それなら、私だってレックス様の役に立てるんじゃないかな。


「ふむ、悪くないかもしれないよ」


 少しも困っていないというのなら、話は別だけれど。たぶん、我慢していると思うんだよね。性欲が無いかと言えば、そんなことはないみたいだし。私たちのからかいに、ドキドキしている様子はあるから。


 だったらいっそ、どこまでも誘惑しちゃうとか。レックス様が、我慢できなくなるくらいに。


「私が本気で誘惑したら、言い訳する理由にもなるんだし」


 誘惑する私が悪いみたいな感じで、ね? レックス様は理性的だから、そこまで行くには相当強く誘惑しないといけないと思うけれど。


 いっそ、色々と触れさせるくらいが手段になってくるんじゃないかな。


「レックス様も男の子だから、必要だと思うんだよね」


 たぶん、本当は欲望だってあるんだよ。それでも、抑え込んでいるだけ。だったら、我慢の限界が来て失敗しちゃう可能性もあるわけだし。


 いざという時に耐えられるように、私が解消してあげる。それは、大事なことじゃないかな。


「それに、私もちょっと気になっていたりして……」


 いくらなんでも、その気がない相手にできることじゃないからね。結婚したいって気持ちも、本音ではあるのだし。現実的じゃないと思っているだけで。


 レックス様が私を激しく求めるのなら、きっと私は満たされるはずだよ。そして、レックス様は苦しさから解放される。


「これって、お互いに得のある取引ってやつじゃないかな?」


 よく、レックス様が言っていること。だから、私も体現してみるだけだよ。それが、レックス様の配下としてやるべきことだよね。


 かなり良い案だと思うんだけど、どうかな?


「レックス様は、どう思うんだろうね」


 もし乗り気になるのなら、誰にも見せたことのない私を見せてあげるんだけどな。


 今だけ、レックス様だけだよ。対価は、あなたが私を見てくれること。


 それで、どうかな?

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