472話 メアリの努力
メアリはずっと、お兄様のことが大好き。だから、離れなくちゃいけない時は悲しいの。
マリンさんたちを連れてきた時も、なんだか忙しそうにしていたから。あんまりお話もできなくて、不満を言いたい気分の時もあったり。
でも、仕方ない部分もあるの。お兄様にだって、お仕事がある。それをやらなきゃいけないってことくらい、メアリにも分かるんだから。
それなら、メアリがお兄様に時間を作ってあげれば良い。お仕事を手伝って、メアリとの時間を増やしてもらえればいいの。
だから、メアリは魔法の練習を頑張ることに決めたの。お兄様の代わりに戦えるように。その時間で、メアリを可愛がってもらうために。
「メアリ、もっと強くなりたいの。お兄様に、勝てるくらいに」
お兄様より強くなれば、きっといっぱい敵をやっつけられるから。お兄様は、なんだかいつも敵に狙われているから。
本当は、そんなの相手しないでメアリを可愛がってほしい。でも、分かるから。メアリを守るためにも、頑張ってくれているんだって。
だから、お兄様の邪魔なんてできないの。それなら、メアリがお兄様のお手伝いをするしかないの。
そんな事を考えていたら、お兄様はフィリス先生と戦う機会を用意してくれた。勝つつもりだったけど、メアリの魔法も真似されて、もっとすごい魔法を使われちゃった。
「フィリス先生には、負けちゃったの。まだ、メアリは弱いの」
戦いが終わった後は、自分の部屋で反省会をしたの。どうすれば勝てたかなって。でも、今のメアリじゃ無理だってなった。
本気の魔法が簡単に真似されるんだから、もっと強い魔法を覚えていなくちゃダメだったの。だからメアリは、フィリス先生の魔法を真似できるように、練習を頑張ることに決めたの。
そうしているうちに、メアリについての噂が流れ始めたみたい。メアリの属性が増えて、そこには秘密があるんだって。お兄様にもらった力だから、本当ではあるの。
「なんか、メアリが狙われてるの? じゃあ、練習に良いかも!」
そんな事を考えていたの。実際に人に魔法を使えたら、どれくらいがちょうど良いのかも分かるから。戦いに使うのなら、最後には戦いで試す必要があったの。
メアリが出かけた時に、ちょうど良い相手が現れたの。新しい魔法の実験に、使ってあげたの。フィリス先生みたいに、魔力をぎゅっと固める新しい魔法のために。
そのおかげで、いろいろなことが分かったの。魔力が集まっている時には、無理にぎゅってするだけじゃダメだって。しっかりと魔力を合わせる感覚が大事だったの。
だから、もっと先に進めるって分かった。メアリは、まだ強くなれる。そう分かって、笑顔になれちゃった。
家に帰ってからも、ずっと魔法について考えていたの。
「いっぱい魔法を使って、もっともっと強くなるんだから!」
メアリが目指すのは、世界で一番だから。一度負けたからって、諦めたりしないから。
だって、お兄様にもらった力だから。なりたかった五属性になれたから。それで弱いままなら、ウソだもん。
メアリは、ずっと頑張っていくの。新しい魔法を覚えて、今ある魔法も強くして。
「お姉様よりも、フィリス先生よりも、どこまでも!」
ぎゅっと手を握って、メアリは誓ったの。絶対に、誰よりも強くなるって。そのためなら、どんなことでもしてみせるって。
何度でも戦うし、みんなみんなやっつけちゃうの。
他の誰かの魔法だって、しっかり勉強もするの。だって、メアリは本気だから。真似でもいいから、強くなりたい。
最強になることが、メアリの一番大事な目標なんだから。もちろん、お兄様との時間は別だけどね。
そんな事を考えていたら、思いつくことがあったの。
「せっかくだから、お兄様の魔力も使えないかなあ?」
それができれば、もっと強くお兄様を感じることもできる。今でも体にお兄様の魔力がいっぱいだけど、もっともっと。
だから、すぐに試してみたの。いつも魔力を動かすような感じで、お兄様の魔力を動かせないか。
でも、なかなか動かせなかったの。ちょっとつながる感覚があったくらいで。
「うーん、ちょっと難しいの。今すぐは、無理なの」
お兄様の魔法も使えれば、メアリの魔法も強くなると思ったんだけどな。ちょっとだけ、下を見ちゃったの。
だけど、つながる感覚もあったんだから。まだ、諦めるには早いの。まだまだ、先は遠いけれど。
「でも、この調子で練習するの。メアリは最強になるんだもん」
お兄様の魔法と、メアリの魔法。ふたつを合わせれば、ただの五属性よりもずっと強くなれるはず。そんな気持ちは、消えなかったの。
それに、メアリとお兄様の魔力がつながる感覚も、とっても良かったから。お腹の奥がきゅーってする感じが、すっごく強かったから。
やっぱり、お兄様はメアリを幸せにしてくれる。また、そう感じたの。
「お兄様の魔力、もっといろんなところに感じたいな」
今は、体の表面だけだけど。お腹の奥も、頭の中も、ぜんぶぜんぶ。そうすれば、頭がビリビリするのとか、胸がドキドキするのとか、もっと強くなるはずだから。
お兄様とメアリは、とっても深くつながっちゃうんだから。どんな恋人だって、負けないくらいに。そう考えただけで、いっぱいやる気が出てきちゃった。
「うん、やっぱり頑張るの。強くなるのも、お兄様を感じるのも」
強くなれば、お兄様を守れる。そうすれば、もっともっとお兄様との時間も増える。きっと、魔力だっていっぱい送ってくれるの。
お兄様をいっぱい感じていられたら、メアリはとっても幸せだから。そのために、絶対に諦めたりしないもん。
「お兄様の一番には、メアリがなるんだから」
もっともっと、好きになってほしいの。抱きしめてほしいの。キスだって、してほしいの。
今はまだ、お兄様はメアリを妹だって思っているけれど。いつか、特別になってみせるんだもん。女の子としても、好きになってもらうんだから。
お兄様こそが、メアリの幸せなの。それを、もっと分かってほしいの。だから、メアリは強くなるんだ。
「守ってもらうだけじゃ、レディには足りないの。支え合ってこそ、だよね?」
お兄様が、よく言っていることなの。メアリだって、お兄様を助けたいから。
やっぱり、お兄様が笑顔だと嬉しい。悲しそうだと、メアリだって悲しいの。だから、メアリはお兄様を笑顔にしてみせる。
きっと、お兄様のためじゃない。メアリのため。だけど、それでいいの。お兄様だって、喜んでくれるんだから。
そのために、まずは強くなるの。魔法の練習だって、毎日続けているんだから。ちょっとずつ、上手になっていったんだ。
「魔力とひとつになるのも、難しいの。でも、諦めないもん」
ただ魔力を集めるだけなら、ダメみたい。魔力をちょっと薄くして、でもつなげる感じ。とっても細かく使わなくちゃいけないの。
それに、魔力どうしを近づけようとすると、弾かれそうになっちゃう。まだ、全然成功しない。
「みんな、魔力とひとつになっているの。メアリだって、負けないんだから」
お姉様も、フェリシアちゃんも、ラナちゃんも。フィリス先生も、お兄様も。みんなできているの。だから、もっともっと頑張らないと。メアリが、一番になるんだから。
「うん、魔法を使う機会が増えたら、嬉しいの」
練習がいっぱいできれば、試せることもいっぱい。それなら、いろんな技が使えるの。魔力とひとつになるためにも、やりたいことはたくさんなんだから。
「もっともっと、敵がいっぱいこないかなあ?」
そんな事を願いながら、魔法の練習を頑張っていたの。少しずつ成長しながら。敵で試したことを、いろいろと変えながら。
「動く的に当てる練習も、悪くないの。やっぱり、敵がいてよかったの」
たぶん、ひとりで練習していたら、もっと時間がかかっていたの。だから、とっても運が良かったの。わざわざ噂を流してくれて、ありがとうって言いたいくらい。
でも、お兄様が心配するのなら、それは悪いこと。やっぱり、敵はやっつけちゃわないと。
「まだまだ、先は遠いの。でも、戦いは良い練習なの」
実際に戦いで使うと、全然感覚が違ってくるの。だから、新しい発見もいっぱいあるの。メアリ、やっぱり戦った方が良いの。
お兄様だって、ひとりで戦うだけじゃ疲れちゃう。メアリも強くなれる。これが、一石二鳥ってやつなの。
「待っててね、お兄様。メアリ、どこまでも強くなるんだから!」
そして、もっともっとお兄様と仲良くなるんだから。
だから、お兄様。ずっと、メアリを見ていてね?




