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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
13章 狙われるもの

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468話 詰めへと向かって

 黒幕の正体がブラン家という公爵家だと明らかになった。とはいえ、まだ完全な証拠はない段階だ。今は王女姉妹たちとも協力しつつ、どうやって打ち破るかを考えている。


 ひとまず、俺の集めた情報は王女姉妹とも共有している。そして、実際に調査やら何やらで動いてもらっているところ。


 そんな状況の中で、ミーアとリーナから通話が飛んできた。つまり、進展があったのだろう。すぐに出る。


「レックス君、調子はどうかしら? 私は、順調に進んでいるわ」

「心労もあるでしょうけれど、そろそろ解消されそうじゃないですか?」


 いつものように、ミーアは明るく、リーナは落ち着いた様子で声をかけてくる。相手の方も、調子は良さそうみたいだ。


 わざわざ順調だと通話してくるあたり、かなり手応えがあるのだろう。定期報告という感じではないからな。


 それなら、次に向けて動き始められそうだ。まずは、前提条件から確認しておこう。


「ということは、ブラン家は完全に黒だったのか?」

「ええ! 後は、メアリちゃんたちが動けるような策だけね」

「そこが一番面倒ではあるのですが。けれど、もちろん考えていますよ」


 俺たちの方でも、メアリを餌にして黒幕を釣る計画をしている。おそらくは、その方向性だろう。


 そうなると、ブラン家がメアリを誘うようなことができる形だと都合が良い。明らかにメアリを狙っていたとなるなら、大義名分にもなる。


 敵がメアリを襲ったという事実さえあれば、後は動機をでっち上げてしまえば良い。だから、良い感じにスキに見える動きがしたいんだよな。さて、ミーアたちはどう考えたのか。


「聞かせてもらって良いか? どういう手段を取るつもりなんだ?」

「アストラ学園で、魔法の発表会みたいなことをしようと思うの」

「それで、メアリさんを呼び寄せるということですね。黒幕も、です」


 ふたりの案は、良い感じだと思える。メアリを狙うのなら、対面した状況で動いてもおかしくはない。周囲に目撃者がいる状況で動いたのなら、それこそが証拠になる。


 極端に短絡的ではないとしても、メアリを狙っていると疑わせる行動をしてくれるとありがたい。いずれにせよ、敵を釣るという意図に即した策だな。


「ああ、なるほどな。ブラン家当主がメアリに近づく機会を作るのか」

「ええ。メアリちゃんが優勝するように、参加者は調整するわ」

「それこそ、私が参加しなければ済む話ではありますけれど」


 よほどのことがない限り、五属性使いであるメアリが優勝するだろう。そして、優勝者に敵が近づくように場を整えているということになるはずだ。


 実際、メアリは相当な強者だ。どんな基準であれ、魔力と自己の合一にまでたどり着いていなければ厳しいだろう。そもそも、五属性なんて他には居ないだろうからな。俺の知っているだけなら、フィリスとリーナしかいない。


 フィリスは教師だし、リーナは王家の人間。参加しない理由としては十分だ。となると、調整はそれなりに楽だろう。


「八百長を疑われないように、でも差が明らかになるように、だわ」

「露骨すぎると、敵も警戒するだろうからな」

「そういうことね。だから、ある程度の準備期間は設けるつもりよ」


 いきなりメアリが現れたとなれば、都合が良すぎると判断してもおかしくはない。王家が大々的に動いているとなれば、参加者も多くなるだろう。だから、真実味が出てくる。


 そうなってくると、布告した段階で敵の動きを封じられるかもしれない。目の前に餌がある状況で、他の手段も取りづらいだろう。なら、一石二鳥かもな。


「機会が目の前にあると分かれば、敵も焦らないかもな」

「王家が開催することになるもの。邪魔をするのなら、こちらで潰すわ」

「あまりにも愚かだと、策が通じないんですよね。まったく、面倒です」


 リーナはため息をついている。王家の面子を潰すような行動をするとは考えにくいが、あり得なくもない。当初の手段に固執するのは、珍しくはないからな。


 となると、まだ気を抜ける段階ではないということ。まあ、敵がいる時点で気を抜くべきではないか。


「じゃあ、こちらでは襲撃にも警戒だけはしておくか」

「ええ、お願いね。一応、周囲を固めておくつもりではあるのだけれど」

「自分が疑われていることくらいは、分かっていてほしいものですね……」


 リーナは面倒くさそうに言っている。仮にも公爵家の人間なんだし、言うほど愚かだとは思えない。まあ、俺に全部潰される程度の策を練っている相手でもあるのだが。


 とはいえ、突拍子もない行動をするレベルのバカは怖いというのは、分かる話だ。俺にも、何度か経験があるからな。


「さすがに、そこまで軽率ではないんじゃないか?」

「軽率じゃなかったら、レックスさんの戦力くらい分かっているんですよ……」

「そうね。今までの活動だって、完全に隠せるわけじゃないもの」


 ふたりの言葉は、否定できない。こちらでも隠す努力はしているとはいえ、転移なんかに気づかれていてもおかしくはないのだし。あんまり対策らしい対策をされていないのは感じるところだ。


 もちろん、こちらの油断を誘うための策という可能性もなくはない。ただ、愚かだという方が可能性が高いことも理解できてしまう。


「まあ、確かに。俺が動いていることは、察しの良い人間なら分かるか」

「言ってしまえば、レックスさんを敵に回そうとする時点で……」


 呆れたように言われた。まあ、真正面から戦って俺に勝てるやつなんて、そうは居ないだろう。だからこそ、普通は徹底的に対策を取るものではあるはずだ。


 とはいえ、闇魔法自体がかなりレアな魔法ではあるからな。直接的に魔法を防ぐというのは難しいだろう。それこそ、フィリスですらできないのだし。なら、ある程度は仕方ないと言えるのか。


 ただ、犠牲になった者にとっては、たまったものではないだろう。完全に無駄死にでしか無いのだから。


 まあ、対応策が思い浮かばないかと言えば、違うと答えるのだが。


「俺だって個人だから、限界くらいはあるぞ。そこを付かれたら、怪しいかもな」

「私なら、狙う相手なんて決まっているんだけどね。レックス君には、分かるかしら?」

「まあ、俺の大切な人を同時に狙うよな。俺だってそうする」

「レックスさんの手が回らないくらいに戦力を集められるなら、もう国を落とせるんですよ」

「そうね。私たちだって、レックス君の仲間なんだもの!」


 思わず頷いてしまった。俺の味方は、戦力的にも権力的にも強い存在が多い。フィリスなんて、万軍を叩き潰したとかいう描写があったくらいだ。


 他にも、五属性のリーナ、光属性のミーア、無属性のジュリアなんかも居る。属性の壁を超えたカミラやフェリシア、ラナだって。


 権力という意味では、王女姉妹は言わずもがな。公爵家のルースも居るし、ブラック家そのものも割と強い。他にも貴族が何人も居るし、かなりの勢力ではあるよな。


「確かに、王家や公爵家まで仲間だもんな。並大抵の戦力なら、簡単に潰せるか」

「だからといって、手を抜くつもりはないけれど。メアリちゃんのために、頑張るわ!」

「こちらとしても、必要なことですからね。ブラン家も、手間を増やしてくれたものです」


 こうして、俺やメアリのために頑張ってくれる仲間がいる。そんな人たちのためにも、策を成功させて終わらせたいものだ。

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