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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
13章 狙われるもの

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445話 当たり前にあるもの

 現状の対策として、魔道具に関しては情報をつかませることに成功したようだとの報告を受けている。だから、魔道具を狙って攻撃される可能性は低くなったと言っていいだろう。無論、まだ完全に安心はできないが。


 ただ、だからこそ危険が増したものがある。メアリ本人やシュテルについてだ。ただ、露骨にシュテルを守ってしまうと、それこそが真実にたどり着くきっかけになりかねない。


 それらをジャンやミルラと一緒に考えた結果、ひとところにまとめて、それで守りやすくしたらどうかとの流れになった。要するに、何らかの建前でメアリとシュテルを一緒にいる時間を増やすという方向性だ。


 シュテルを始めとした学校もどきの生徒たちは、アストラ学園に受かる程度の魔法を使える。そこで、メアリの護衛という体で集めてしまう形にした。ジュリアたちも一緒にするのは、シュテルだけだと違和感が大きくなりそうだからだ。シュテルは、学校もどきの生徒の中では弱い方だからな。


 ということで、そのための話をするためにみんなを集めた。学校もどきの生徒たちとメアリとで、ある程度人払いをした部屋で話し合いをすることになる。


 集まったみんなを見回して、俺はさっそく本題に入った。


「ひとまずは、ジュリアたちをメアリの護衛とさせてもらいたい。構わないか?」

「うん、状況は聞いているから、大丈夫だよ! 僕たちに任せて!」

「抱っことなでなでが付いてくるのなら、問題ない」

「レックス様のために、粉骨砕身いたします!」

「メアリひとりでも、別に負けたりしないんだけどな」


 ジュリアは元気いっぱいに受け入れて、サラは淡々と要求を持ち出してきて、シュテルは相変わらず過激な忠誠心が見て取れる。三者三様の態度があって、個性を感じるところだ。いつも通りの雰囲気があって、安心できる部分もある。


 そしてメアリは、口をとがらせながら不満をこぼしている。五属性使いなのもあって、自分の実力に自信があるのだろうな。とはいえ、護衛というのは強いから必要ないというものでもない。立場があるのなら、余計にだ。


 メアリもいつかは、ブラック家としての立場を背負うことになるだろう。だから、今のうちから慣れておくのは悪いことじゃないはず。ひとまずは、説得しよう。俺はメアリに目を合わせた。


「まあ、そういうものだと諦めてくれ。貴族というものは、立場もあるんだ」

「お兄様は、ひとりでいろんな所に行くのに。メアリ、そんなに子供に見える?」


 首を傾げながら問いかけられた。それを言われると、弱いんだよな。いくら俺が強いからといって、だったらメアリは弱いのかという話になってしまうし。


 ただ、転移があるから身軽という側面もある。これが普通に馬車なんかで移動していたら、確実に護衛やら何やらが着いてきただろう。それで納得してもらえるかは、怪しいが。


 さて、どうしたものか。いや、変に理屈で説得しようとするからダメなんだ。俺の素直な気持ちを、言ってみよう。


「メアリの強さは分かっているつもりだ。それでも心配だという気持ちも、分かってくれると嬉しい」

「仕方ないから、お兄様の言うことを聞いてあげる! でも、家にこもったりするのは嫌!」


 こちらに向けて一度頷き、それからそっぽを向いてしまった。外出を禁止してしまうと、こっそり出ていかれるかもしれない。それが一番怖いんだよな。いくら贈ったアクセサリーがあるとはいえ、万全の備えとは言えないんだから。


 だったら、妥協点を示すべきだろう。必ず護衛を連れて行くこと。報告をすること。それだけ守ってくれれば、俺の方でも対処しやすくなる。それでいこう。


「そういうことだ。出かける時には、サラかシュテルを連絡によこしてくれ」

「分かったよ! 僕が一番強いからね。メアリ様の護衛には、ちょうど良いんじゃないかな」

「私もサラも、メアリ様よりは弱いですからね。戦力として考えられても、厳しいのが現実です」

「シュテルがおとなしい。珍しい。なでなでが欲しいとしても、譲らない」


 サラはやはり鋭いな。シュテルはおそらく、最近俺が言ったことを気にしているのだろう。シュテル自身の安全も大事にしてほしいということを。完全に改善はされていないが、意識されているだけでもありがたい。


 そんなシュテルは、サラを少しだけにらみながら返す。


「サラの分くらい、邪魔したりしないわよ……。私もいただけるのなら、嬉しくはありますけれど……」

「メアリも頑張ったら、お兄様に抱っこしてもらうの!」


 そう言って、メアリはこちらに飛びついてくる。シュテルは、その姿をじっと見ていた。なんだかんだで、羨ましいのかもしれない。シュテルは遠慮しがちだからな。こう言うと、俺の抱っこを求めている前提みたいで恥ずかしくもあるが。


 ただ、実際にそこそこ当たっていると思うんだよな。シュテルのことにも、しっかり気を回しておこう。


「まあ、それくらいならいつでも良い。抱っこなんかのために、無理はしないでくれよ」

「抱っこなんかなどと! あらゆる財宝よりも、価値のあるものです!」

「財宝じゃお腹は膨れないし、抱っことなでなでの方が良い」

「食べ物とかなら、抱っこより優先するんだね。まあ、元気じゃないと楽しめないか」

「美味しいものも、お兄様に抱っこしてもらいながら食べればいいの!」


 シュテルは極端だが、サラもサラで結構重いのかもしれない。要するに、普通の生活さえ送れている前提なら俺の抱っこが大事みたいに聞こえる。まあ、何度も何度も要求されているあたり、価値は感じているのだろうが。


 とはいえ、メアリの言うように食事時にまで抱っこしていたら、どうやって食べれば良いのか分からない。下手をしたら、俺がみんなに食事を食べさせるだけになるかもしれないとすら思える。


 可愛らしい要求ではあるものの、一応は抗議をしておくか。


「一応、俺だって食事をしたいんだからな……? 食べさせる分には、構わないが……」

「あはは、食べる暇もなくなっちゃうの、あり得そうだよね……」

「私はそのように、レックス様にご迷惑をおかけしません。ね、サラ」

「レックス様は、なんだかんだで喜ぶ。私には分かる。だから抱っこ」

「メアリも! お兄様、サラちゃんだけじゃないよね?」


 サラがこちらに引っ付いてきて、メアリも飛び込んできた。ふたりを抱きしめてなでながら、俺はシュテルの方を見る。目を合わせると、じっとこちらを見ていた。やはり、後でフォローした方が良いかもしれない。


 というか、両手が埋まっていて大変だ。休まる時間なんて、あったものじゃない。


「レックス様、本当に人気者だよね。大変そうかも……」

「サラ、少しくらいは遠慮というものを……」

「気にするな、シュテル。実際、俺も嬉しいからな」

「じゃあ、なでなで祭り。レックス様が疲れるまで、なでてもらう」

「ずるい! お兄様、メアリも! いっぱいなでて!」

「あはは、やっぱり食べる暇もなさそうだね……」


 サラもメアリも勢いよく要求してきて、俺は受けざるを得なかった。ただ、こういう日常を楽しんでいるのも、俺の確かな本音だろう。


 メアリに関する問題も無事に乗り越えて、またこんな日常を何の憂いもなく過ごせるようにしないとな。なでる手に力を込めながら、俺はこの時間を守るという決意を固めていた。

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