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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
12章 未来のために

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423話 確かめるべきこと

 魔道具に関して、ブラック家の中でも運用実験が進んでいる。今のところは、大きな事故も起きていないようではある。とはいえ、油断は禁物だろうな。


 前世では、電池が爆発するような事件が起こったりもしている。同じ仕組みではないから同一視はできないとはいえ、事故に警戒する理由としては十分だ。


 だからこそ、闇魔法を込めておくのは役に立つ。人を守ったり、屋敷を守ったり、被害を事前に検知したり、いろいろとできるからな。


 ひとまずは、長期的に様子を見るしか無い。事前に事故の可能性を想定した実験をしているとはいえ、予想外のところで起きるものなのだから。


 とりあえず、俺はブラック家の中を見て回っている。いろいろな場所で魔道具が使われており、変化を感じるところだ。


 そんな風に歩いていると、はしゃぎ声のようなものが聞こえた。そちらに向かうと、メアリが棒を持って泡のようなものを飛ばしている。とても楽しそうに棒を振り回しながら駆け回っていて、微笑ましい。


 一応、風呂場のようなところで遊んでいるみたいだ。配慮してくれていて、ありがたい限りだな。


 そんなメアリは、足音で気づいたのか、こちらを見てくる。俺の姿を確認して、ぱっと笑顔を広げていった。


「あっ、お兄様! これ、面白いよ! お兄様も、遊んでみる?」


 そう言って、こちらに棒を突き出してくる。察するに、泡を出して遊ぶ道具なのだろう。もしかしたら、本来は別の用途なのかもしれないが。水を好きな形にする実験の過程で生まれたと考えるのが、まあ妥当なんじゃないだろうか。


 とはいえ、本気で遊び道具としてメアリに渡された可能性はある。たまたま遊び道具として便利そうなものができたからかもしれないし、もしかしたら遊び道具としての方向性も検討していたのかもしれない。


 まあ、聞いてみればある程度推測はできるだろう。なら、とりあえず聞いてみるか。


「マリンからもらったのか? 確かに、面白そうではあるが」

「ううん、クリスさんにもらったの! 試してほしいって!」


 クリスからということは、あのふたりもブラック家の人間と関係を作ろうとしているみたいだ。そういうところで社交性が出てくるよな。


 的確にメアリに遊び道具を与えるあたり、人間関係の面でも優秀みたいだ。最初の印象は正しかったようだ。


「なるほどな。確かに、応用すればいろいろと便利そうだ」

「今はお仕事の話は良いの! メアリと遊んで!」


 メアリは勢いよく、また棒を突き出してくる。よほど俺に遊んでほしいみたいだ。まあ、最近はブラック家から離れてばかりだったからな。寂しい思いをさせたのだろう。


 だったら、しっかり遊んでやらないとな。全力で楽しむのが、メアリのためになるはずだ。


「ああ、分かった。これを使えば良いんだな?」


 棒を受け取り、軽く魔力の流れを調べる。どうにも、振り回したら泡が出る構造ではあるみたいだ。ただ、魔法使いはそこに干渉することもできる。本来なら誰でも使える道具としては失格であるし、事故の可能性も増えるのだろう。


 だが、魔法使いにとっては良い遊び道具となるのも事実だ。魔力に干渉すれば、より泡を出すこともできるからな。


 とはいえ、せっかくの遊び道具に魔力を侵食させるのも勿体ない。ということで、俺は普通に泡を出していく。動かした時の反応を見つつ、振り方を工夫していく。イメージとしては、ちょっと遠心力を利用するみたいな感じだ。


 5つ泡が出てきて、ひとまずは満足といったところ。メアリは、目を輝かせていた。


「すごーい! お兄様、もう泡を5個も使えるんだ!」

「メアリは何個使えるんだ? 見せてくれよ」

「10個くらい、へっちゃら! 見てて!」


 そう言って、メアリは棒を振り回していく。その中で、水の魔力を調整しているのを感じた。泡ができやすいように、魔力にまとまりを作っている。


 メアリ自身の魔力も足しているようで、かなりの出力になっている。それでも壊れないあたり、相当頑丈だ。


 泡は15個くらい出ていて、それぞれがしっかりと浮かんでいる。正確に制御できている証だ。


「本当にすごいな。さすがだ、メアリ」

「これでも、すっごい魔法使いだもん! お兄様よりも、強くなるんだから!」


 胸の前で両手を握りしめている。まさに気合いが入っているという感じで、微笑ましい。いつか、本当に夢を叶えてほしいものだ。その時は、きっと笑顔で祝えるだろうな。


「ああ、応援しているよ。それを使えば、魔力制御がうまくなるかもな」

「うん! ちょっとだけ、魔法を細かく使えるようになったんだ!」

「それは良いことだ。本当に追い抜かされる日を、楽しみにしているぞ」

「もう、お兄様! そういう時は、お前には抜かせないって言うの!」


 ふくれっ面になりながら、こちらに指をさしてくる。いわゆるライバル的な言葉だな。確かに、それっぽい。そういう演出も、大事かもしれない。少し反省すべきかもな。


「確かに、定番の展開だな。悪かったよ、メアリ」

「むー! お兄様は優しいけど、乙女心が分かってないの!」


 そのまま、また頬を膨らませていった。メアリは足音を立てて去っていき、俺は見送っていく。怒らせてしまったのかもしれないが、ここで追いかけるべきかは悩ましい。ひとりになりたいのなら、そうすべきだからな。


 とはいえ、また顔を合わせた時には謝っておこう。それだけを決めて、とりあえずメアリの去っていった方へ向かっていく。部屋に帰っている様子だから、ドアの閉め方で決めようと考えて。


 そうしたら、鼻歌交じりに部屋に入っていく姿が見えた。なんか、機嫌を取り戻したらしい。ということで、俺はまたブラック家の見回りに戻った。


 今度は、ウェスとアリアが掃除をしている姿が目に入った。雑巾に勝手に水がつく棒を使っている様子だ。


 一段落ついたのを確認して、俺はふたりへと声を掛ける。


「ウェス、アリア。お前たちも、魔道具を使っているんだな。どうだ?」

「かなり便利ですっ。値段にもよりますけど、ずっと使いたいですねっ」


 明るい笑顔で言っているし、相当便利なのだろう。バケツで水を運ぶ手間を省けるだけでも、だいぶ違うからな。


 やはり、生活を便利にする道具として使えるのならば、それが一番だとは思う。ただ、どうしても他の運用も思いついてしまうし、実際そうやって使われることになるはずだ。特に、争いの道具として。


 まあ、今は考えるべきではないか。とりあえず、ふたりの所感を聞いていくのがいいだろう。


「そうか。どれだけの耐久度があるかも、気になるところではあるな」

「月に一度変えなければならないようなら、実用は難しいですからね」

「そういうことだ。ふたりの意見が、今後の改善に役立つはずだ」

「なら、もう少し長いと嬉しいかもしれませんっ。今だと、かがまないといけないのでっ」

「私としては、折りたためると良いですね。持ち運びに便利になります」


 ふたりの意見は、とても大事なことだな。棒が短いから、少し腰を曲げて拭く必要がある。そうなると、負担が大きい。そっちの意見は、まあすぐに解決できそうだ。重さの問題は、多少あるかもしれないが。


 折りたたみの方は、まあ要相談だろうな。内部の機構がどうなっているか次第で、かなり変わってくるところだろう。


「分かった。伝えておくよ。実際に使った人の意見は、大事だからな」

「ありがとうございます。より良い意見が伝えられるように、精進しますね」

「わたし、そんなに良い意見が言えないかもしれませんっ」


 アリアもウェスも、俺の役に立とうとしてくれているのが強く伝わる。だが、だからこそ無理はしてほしくない。


 俺としては、今のままでも十分満足している。ふたりが立派なメイドであることは、ほんの少しだって疑っていないのだから。


「ああ、ありがとう。ただ、自然体で大丈夫だ。意見を言うために使い方を変える必要はないからな」

「確かに、実運用での情報が必要になりますからね。おかしな運用だと、ズレが出ますか」

「そういうことだ。だからウェス、何も心配しなくていいぞ」

「分かりましたっ。ご主人さまのために、ただ仕事をすれば良いんですねっ」

「私も、同じようにすれば良いということですね。かしこまりました、レックス様」

「ああ。今後とも、俺を支えてくれ。お前たちが居るから、俺は安心して過ごせるんだ」


 そう言うと、ふたりは穏やかな笑顔を見せてくれた。今後も、ふたりとの関係を大事にしていきたいものだ。そのためにも、できるだけ便利な魔道具ができればありがたい。


 急かさないようにしつつ、しっかりと意見を伝えていこう。そう考えながら、俺はふたりの笑顔を見ていた。

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