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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
12章 未来のために

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415話 つながっていく出会い

 アカデミーから人材がやってきて、ジャンやミルラ、マリンが面接をしている。俺は最後の段階で合否を決める立場にある。とはいえ、実質的には素通しみたいなものになる予定だ。基本的には、よほどやらかさない限りは採用だな。


 そんな中で、面談に来た人を見て驚いた。前にアカデミーで話したサラの友人だったからだ。卒業まではアカデミーにいるみたいなことを言っていたし、来ないと思っていた。


 ふたりとも同時に入ってきて、こちらに明るく手を振っている。親しみを感じさせて、少し微笑ましくなった。


 おそらくは、ミルラあたりが気を使ってくれたな。俺が知り合いだと、知っていたのだろう。


 俺は心からの笑顔を浮かべながら、ふたりと向き合った。


「レックス様、私たちも来ちゃったー」

「サラちゃんは、ここにはいないみたいだね。ちょっと、残念かも」


 楽しげに、ふたりとも話している。一度会っただけではあるが、かなり打ち解けられているかもしれない。サラとも仲良くしていたし、社交性が高いのだろう。


 とはいえ、少しだけ残念そうに見えるのも確かだ。本当に、サラを気に入ってくれたのだろうな。ありがたいことだ。俺が好かれるよりも嬉しいくらいかもしれない。


 せっかくだから、交流を深めてほしいところだな。サラとしても、親しくなった相手と会えたら嬉しいはずだ。


「別の仕事を任せてはいるが、会う機会もあるはずだ。ブラック家から集めた人たちの上役みたいなものだからな」

「そんなに偉いんだ……。サラちゃん、すごい……」

「可愛いのに、アストラ学園に通えるんだもんね。すごいのは、そうか」


 感心したように、ふたりは口を開けたり頷いたりしていた。なんというか、感情豊かだなと思える。見ていて心地いいというか。


 こんな感じなら、能力が低くても仕事場を明るくしてくれることに期待できそうだ。面接官が認めたこともあるし、相当良い人がやってきてくれたな。できる限り、仲良くしたいところだ。


「アカデミーに通えるお前たちも、十分すごいんだからな? あまり気後れする必要はない」

「レックス様と比べたら、私だってただの平民みたいなものなんだけどねー」


 跡取りになれない貴族の娘みたいなものだろうか。それなら、平民とあまり変わらないという自己認識も頷ける。まあ、大学みたいな場所に通える時点で、本当の意味での平民ではないのだろうが。


 少なくとも、この世界で学校に通える余裕のある子供はそう多くない。奨学金みたいな制度があるかも怪しいからな。だから、ある程度は裕福なのだろう。


 とはいえ、貴族として成り上がることも難しい立場ではあるはずだ。少なくともこの国では、魔法の実力が重要視されるのだから。


「そういえば、自己紹介をしてなかったかも。私は、ソニア・ミーリア・ブロンドっていうんだ」

「私は、クリス・エイン・メイズだよー。よろしくね、レックス様」


 ソニアはおしとやかな感じで、クリスは元気な感じだな。ふたりとも、いわゆる女子学生のイメージに近い。前世にいたとしたら、学生にモテモテだっただろう。


 今の世界だと、少なくとも貴族からはモテないのだろうな。残念ではあるが、都合がよくもある。親しみやすくて勉強もできるとなれば、どれだけいても困らない人材だろう。


「ああ、よろしく頼む。困ったことがあったら、気軽に言ってくれ」

「やっぱり、ラナちゃんが懐くだけのことはあるんだねー」

「うんうん。思っていたより、ずっと優しいかも……」


 かなりこちらを持ち上げてくる。本心に見えるのだから、こちらも気分が良くなってきそうだ。仮に演技だとしても、それができるだけで評価は高い。人間関係の潤滑油になってくれそうだからな。


 本当に、サラも良い相手を友達にしてくれたものだ。心から感謝したい。


「とはいえ、人目があるところでは気をつけてくれよ。一応、雇い主というていなんだから」

「分かりましたー。レックス様に、頑張って仕えますねー」

「誠心誠意、ご奉仕させていただきます……」


 クリスの言い方は普通だが、ソニアの言葉はちょっといかがわしく聞こえてしまう部分もある。とはいえ、ちゃんと態度を変えてくれる意志はあるみたいだし、まあ十分だろう。


 仕事ぶりを見てみないことには確信できないとはいえ、かなりの拾い物に思える。俺も、少しくらいひいきしても良いかもな。ブラック家に定着してくれるのなら、良い戦力になってくれるんじゃないだろうか。


「その調子なら、うまくやっていけそうだな。あまり窮屈をさせないようにしたいところだ」

「大丈夫だよー。研究もちゃんとやってるし、ちょっとは分かるつもりだからー」

「そうだね。むしろ、アカデミーよりも楽しそうかも……」


 クリスもソニアもかなり乗り気に見える。ちょっと前のめりになっているくらいだ。姿勢が軽く崩れているあたり、本気っぽい。


 やる気があるのなら、こちらでも手助けしていこうか。サラの友達ということを抜きにしても、優先度合いは高くなりそうな相手だからな。


「なら、何よりだ。ひとまず、お前たちには魔力バッテリーの作り方を覚えてもらう。良いか?」

「うん、話は聞いているよー。魔力をためておいて、他の道具で使うんだよねー?」

「使い道についても、考えてみたいな……。せっかく、研究をしているんだからね」


 仕事の内容についても、しっかりと理解しているようだ。本当に、感心させられる。ただ言われた仕事をこなすだけではないという意志まで感じて、とてもありがたい。


 このレベルの人材が多く集まってくるのなら、最高なんだけどな。まあ、ふたりが優秀なだけだとは思う。期待しすぎても、困るだけだろうな。


「確約はできないが、お前たちの望む仕事ができるように努力はするよ。とはいえ、成果を出してくれないと厳しいが」

「うん、大丈夫だよー。いっぱい気を使ってもらって、ありがとうねー」

「こんな感じだけど、私たち、本当に感謝しているんだ。ちゃんと、私たちを見てくれるから……」


 少し熱っぽい目をこちらに向けてきている。言葉が本心からのものなら、苦労がうかがえてしまう。俺のやった程度のことで、本当に感謝しているだなんて言わせてしまうのだから。魔法を使えないという色眼鏡で見られてきた可能性が高い。


 いや、演技だとしても苦労しているのだろうな。そうやって相手の機嫌を取ってこなければ、うまく生きてこられなかったという証なのだから。ここでは、良い生活を送ってもらいたいものだ。


「おいおい、まだ仕事も始まっていないぞ。気が早いな、ふたりとも」

「ふふふ、始まっていないうちから、分かっちゃうんだよ」

「うんうん。もう明らかに、他の人とは違うよねー」


 にこやかに、こちらに向けて好意的な視線を向けてくる。この調子で打ち解けていって、しっかり仕事をこなしてもらいたい。


 サラと会えるくらいの立場になってくれれば、俺としても頼れるだろう。みんなにとって、良い未来のはずだ。


「なら、良いが。これから、よろしく頼むぞ。どうかその力で、俺を支えてくれ」

「分かったよー。私たちに任せちゃってー」

「そうだね。レックス様のところなら、頑張れそうだと思うかな」


 そう言って、ふたりは笑顔を見せてきた。クリスとソニアという新しい出会いは、明るい未来に繋いでくれる。そんな予感とともに、俺も笑顔で返した。

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