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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
12章 未来のために

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410話 サラの幸福

 私はレックス様の供回りとして、アカデミーへとやってきた。私達の目標としては、ブラック家で雇えそうな人を探すこと。私個人の目標も、似たようなもの。レックス様に仕える存在を探すことは、同じ。


 ただ違うのは、私が愛される邪魔になりそうな人を、ちゃんと私の下に置くこと。レックス様とはそう簡単に会えないように、距離を作ること。レックス様の大切な人は、あまり増えてほしくない。


 私の利益だけじゃなくて、レックス様が心配だという気持ちもある。大切な相手のために、どこまでも頑張ってしまう人だから。これ以上増えてしまえば、負担も増えていく。だから、私達ふたりにとって好都合になる。


 とはいえ、完全に誰とも接しないままでは、レックス様の魅力を伝えるのは難しい。そのために、ある程度の妥協は必要。ということで、私は一歩目を踏み出した。


 アカデミーにいる学生と近づいて、レックス様に仕えてもいいと思わせる。そこから、流れを広げていく。計画通りに、私は可愛がられることに成功した。レックス様の人柄を伝えることも。


 今の私は、自室で今後の計画を考えている。どうすることが最適解か、しっかりと事前に固めておくために。今回の結果で変わった状況に、どう対応するかを決めるために。


「まずは、友達ができた。ここが、とっかかりになる」


 私を可愛いと持ち上げていた女子生徒たち。対等とは言い難いけれど、別に構わない。私には、もう友達も仲間もいる。ジュリアやシュテル、アストラ学園で出会った人たちも。だから、わざわざ新しい何かを求めるほど飢えてはいない。


 少し下を見ながら、私は言葉として思考を整理する。頭の中に抱えておくより、まとまりやすいから。


「レックス様の評判を上げるためには、使えるものを使う」


 私自身も、マリンさんも、ミルラさんも、新しい友達も。何より、レックス様も。きっと、それが一番いい。


 レックス様は、なんだかんだで甘いところが多い。だからこそ、私たちで隙間を埋めるのも大事なこと。私たちの敵なら殺せるけれど、そうじゃない人は傷つけたくないみたいだから。


 なら、敵が減るように動くのが大事。レックス様が人間だって、ちゃんと伝えることが。


 そのためには、本物のレックス様を見せる相手は必要。教授だけでなく、生徒の側にも。だから私は、友達を作ってレックス様に紹介した。そこから、少しでも評判を広げるために。


「あの人達は、必要経費。レックス様と親しくなっても、仕方ない」


 本音を言えば、レックス様と新しい人が親しくなるのは嫌ではある。けれど、新しいつながりの一切を閉じてしまえば、他ならないレックス様が困る。それは避けるべきこと。


 私とレックス様が幸せになるために、必要なこと。それは、しっかりと実行する。レックス様の部下として、仲間として、大切に思う存在として。


 そのためには、あまり排除しすぎてはいけない。許容範囲を決めて、内側にいれる人も大事な要素。


「アカデミーにレックス様の味方を増やす。生徒と教授の両輪から」


 マリンさんとミルラさんが、教授の側。そして私の新しい友達が、生徒の側。どちらからも攻めることで、レックス様の評判を広めていく。私にとって、大事な戦略。


 私の立場なら、生徒に近づく方が効率が良い。きっと、教授はミルラさんが攻めてくれる。マリンさんもいる。任せる方が、うまく進む。


 ひとまずは、生徒で仲の良い相手を増やしていくのが課題。とはいえ、友達は今回のふたりで十分かもしれない。私の友達というだけで重用されるのなら、友達が多くても困るから。


 とにかく、レックス様の配下を増やす。でも、私より近づけさせない。とても、大事なこと。


「できることならば、私の下に置きたい。レックス様とは、あまり接してほしくない」


 レックス様を遠い存在とすることで、わざわざ直接話そうと思わせない。それが理想。神くらい偉大な存在だと思わせれば、そう簡単に仲良くしようとなんてできないはず。


 とにかく、レックス様は天上の存在。少なくとも、身内以外にとっては。それが、私の進めるべき未来。


「レックス様の味方も増やす。私の邪魔者も減らす。どっちも大事」


 レックス様の未来のためには、味方の存在は大事。私の未来のためには、親しい人が増えすぎてはダメ。その両方をしっかり満たすために、頑張っていくべき。


 私を本気で愛してくれる人なんて、きっとレックス様しかいない。だから、譲る気はない。例外は、身内だけ。


「なでなでも抱っこも、もっと先も、奪わせたりしない」


 優しい手も、穏やかな目も、温かい心も。全部、私がもらう。ただの他人に、邪魔なんてさせない。レックス様に仕えるのは良い。でも、そこまでで十分。もっと深い関係なんて、必要ない。


 私を抱きしめて、なでて、結ばれる。その先の幸せに、他人なんていらない。苦しい時からずっと支え合ってきた存在だけでいい。心からレックス様の味方と言える相手だけになら、まだ許してもいいけれど。


 少なくとも、ただレックス様の外面だけを見るような存在にだけは、絶対に譲らない。どんな手を使ったとしても。


 ただ、レックス様への好意は大事。そこだけは、間違えるべきじゃない。


「どうも、私は小動物みたいに思われる。だから、懐いている姿を見せる」


 動物が懐く人は、良い人。そんな風に思われやすい。なら、私の小ささだって使ってみせる。レックス様が優しい人だと、しっかりと伝えるために。


 でも、本当の優しさまでは届かなくて良い。ただ定型的な立派な人だと思わせれば、それで十分。


「レックス様の悪評があるのなら、それだって利用するだけ。動物に優しい人を演出する」


 やんちゃな男が猫に優しくしていたら、実は良い人だと思われるように。私の存在を、猫として使うだけ。


 レックス様は、私がなでなでを求めたら応えてくれる。その事実だって、道具にするだけ。


「この調子で、なでなでの機会を増やす。できれば、もっと先も」


 私が頑張ったことは、見ていてくれる。今回だって、しっかりと褒めてくれた。だから、私はただ成果を出すだけでいい。それだけで、もっともっと褒められる。抱きしめてくれる。なでてくれる。


 本当に、良い主を持った。それは、これから先だって変わらないこと。でも、変えられることもある。


「レックス様の妾になれれば、もっと大切にされるはず」


 自分が抱いた人を、雑に扱える人じゃない。だからこそ、しっかりと機会をうかがっていく。レックス様に触れてもらって、女を感じてもらうのが理想。


 きっと、まだ妹みたいに思われている。だけど、いつか必ず意識してもらう。そうさせるだけ。


「ひとまずは、あの人達ともっと仲良くなる。その友達も、紹介してもらう」


 レックス様の活動が広がっていけば、私の活躍も伝わる。だから、しっかりと愛嬌を振りまいていく。可愛い相手としてでいい。人形みたいでもいい。とにかく、懐に入り込めばいい。


 私がきっかけでレックス様に仕えるのなら、レックス様に近づける必要もなくなる。その意味でも、効率が良いこと。


「レックス様を好きになる相手は、増やす。レックス様のそばには、置かない」


 レックス様は活動が広げられて嬉しい。私は褒められて嬉しい。レックス様がよく言っていることは、しっかりと守るだけ。


「私の利益とレックス様の利益を、ちゃんと両立する」


 私とレックス様が、お互いに幸せになる。そのために、私は全力を尽くす。私自身のために。大好きな人のために。


 だから、しっかりと周囲を利用していくべき。私たちの未来は、その先にあるから。


「見ていて、レックス様。私は、あなたのために頑張る」


 きっと、どこまでも見ていてくれる。だから、全身に力が入る。頑張ろうって、心から思える。


 こんなに努力が楽しいのは、レックス様のおかげ。誰かのために頑張る幸せは、褒められる喜びは、レックス様が教えてくれたことだから。


「抱っこもなでなでも、もっともっといっぱい」


 くっついているだけで、頭から爪先まで幸せで満たされていく。そんな相手、きっと誰も出会えない。だから、レックス様に尽くす。それこそが、私の生きる意味。


「むふー、レックス様は、きっと可愛がってくれる」


 レックス様のためなら、私はなんだってする。どれだけだって努力する。他人だって利用する。演技だって、こなしてみせる。


 だから、ずっと私を抱きしめてほしい。それだけが、私の望むこと。

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