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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
12章 未来のために

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407話 方針を立てて

 マリンがスカウトを受けてくれたので、ブラック家でどんな役割を果たすかについて話す必要がある。その相手は、当然ミルラだ。俺の秘書として右腕として、多くを担当してくれているからな。


 いずれはジャンにも紹介したいところだが、まだ通話を使うには早いだろう。顔見せもせずにうまくやっていくには、この世界で通話は広がっていない。良い話し合いには、ならないだろう。


 ということで、三者面談のような形になっている。ジュリアたちは、アカデミーの中を見て回るつもりらしい。ミルラの手でパスのようなものを用意されていたので、見学する分には問題ないはずだ。


 ジュリアたちは、戦闘能力が高いし自衛能力もある。それに、俺の贈ったアクセサリーに込めた防御魔法や探知魔法もあるからな。まず大丈夫だろう。


 ミルラとマリンは友人どうしらしいし、実際緊張している雰囲気はない。まあ、これから上下関係のようなものができてしまうのだが。うまくやってもらいたいものだ。


「マリンさんも、レックス様に仕えることになったのですね。めでたいことでございます」

「ミルラさんは、初めからそのつもりだったはずなのです。感謝しているのです」

「レックス様に見出された以上、最大限の成果を出すのは当然でございますから」

「ずいぶん前から、仕えていたのですよね。ふむ……」

「ふふっ、とても楽しく仕事をさせていただいていますよ」


 マリンはミルラをじっと見て、ミルラは胸を張って笑顔を浮かべていた。楽しく仕事ができているようなら、何よりではあるな。まあ、本人の前でつまらないと言うはずはないだろうが。


 とはいえ、かなり精力的に動いてくれているのは感じる。少なくとも、やりがいを感じているのは事実だろう。そして、忠誠心もかなり高そうだと思う。俺の望みを叶える方に、できる限り先手を取ってくれる印象だからな。


 ミルラは本当に動きが早いので、事前に俺の行動を想定して準備をしているはずだ。分かりやすいようで、少し恥ずかしくもあるが。


「あらためて、ミルラ。マリンを紹介してくれたこと、感謝している」

「当然のことでございます。レックス様の望みを叶えることこそ、私の役目でありますれば」


 そう言って、ミルラは頭を下げる。本当に忠臣と言っていいよな。ミルラが居なければできなかったことは、いくらでもある。感謝をもっと形にしたいところだが、遠慮しそうでもあるのが悩ましい。


 ミルラの働きに応えるだけの報酬なんて、渡せているのだろうか。本人は納得している様子ではあるが、気になるところだ。


 今回だって、マリンという破格の才能を紹介してくれたわけだからな。その利益は、もはや金額では表せないだろう。


「マリンほどの才能なら、もっと早く会いたかったものだが。とはいえ、成果があって初めて理解できたのも否定はできないな」

「でしたら、早くなって数ヶ月だったのです。魔力バッテリーが完成したのは、その時期ですから」


 すぐにマリンから答えが返ってくる。いくら才能があったとしても、俺には判断できない。研究に対する見る目なんて、あるわけがないのだから。


 そうなると、ミルラが今まで紹介してこなかった理由も分かるというものだ。ミルラ本人ですら、価値を理解できていなかった可能性もある。いくらなんでも、本人の前では聞けないが。


 もっと早い段階から投資をしていればという考えも、思い浮かばなくはない。だが、現実的ではなかったのだろう。


「ふむ、難しいものだな。ミルラの紹介だったとして、全面の信頼を置けたかどうか」

「仕方のないことなのです。今は全面の信頼を置いてくれる。それで十分なのです」


 どこか遠い目をしながら、マリンは語っている。認められなかった日々のことを考えているのかもしれない。


 これから、しっかりと褒めていくのも大事だろうな。今の俺は、自分を偽らなくて良いのだから。


 ひとまずは、マリンに仕事を振ってからになるだろうが。流石に、生きているだけで偉いみたいな褒め方は侮辱と思われるだろう。だからこそ、成果に対しての言葉が重要になるはずだ。


「まあ、何度か失敗するだろうとも思っているが。研究というのは、そういうもののはずだ」

「はいです。百回失敗して、それでひとつ成果が出れば多いくらいなのです」


 実感がこもっている。本人が言うのなら、それで正しいのだろう。新しい研究であればあるほど難しい。当然のことだ。魔力バッテリーは、少なくとも一般には広まっていない。それを実用化するまでにも、相当苦労したのだろうな。


 まあ、魔力バッテリーの製造法を買えるというだけでも、マリンの存在価値としては十分だ。あまり成果を急かさないようにしないとな。


「なるほどな。先に言ってくれたのは、ありがたいことだ。さて、今後はどうしたものか」

「魔力バッテリーの改良か、量産か、はたまた他の研究かでございますね」


 ミルラが相手だと、本当にやりやすいな。俺の考えていたことを、完璧に理解してくれている。


 魔力バッテリーを小型化したり耐久力を上げたり容量を拡大したりすれば、運用の幅が大きく広がる。量産できれば、様々なことに使うことができる。


 そして他の研究は、どこまでも可能性が広がっていく。無論、何の成果も出ない可能性だってあるが。どれを優先するかは、本当に難題だ。どれにもメリットとデメリットがあり、そして同時におこなうのは難しいだろう。


 まあ、本人の意志もある。こちらで勝手に決めるようなことでもないな。というか、どれが得意かだって大事になってくる。やはり、本人に聞くのが第一になるな。


「そういうことだ。マリンはひとりしか居ないから、すべてを同時にこなすのは不可能だろう」

「はいです。とはいえ、必ずしも私がこなす必要のないこともあるのです」


 マリンの言葉で、ハッとした。確かにそうなんだよな。すでに発明されたものなら、他の人でも作ることは可能だろう。なら、組織を作って量産するという手もあるはずだ。


 ただ、どうやって人を集めるのかという問題もあるし、信頼できるのかという問題もある。それでも、可能性を広げる考えではあるだろう。


「確かに、量産であれば仕組みを伝えた誰かに任せる手もあるか。とはいえ、外部に漏らしたくないな」

「レックス様の魔法で監視の仕組みを作ることも、ひとつの手でございます」


 情報を盗まれて、敵対派閥にでも使われるのが最悪の未来だ。だからこそ、スパイには気をつけなくてはならない。魔法以外が軽んじられているとはいえ、油断は禁物。


 それこそ、銃が発明された以上に戦場を変えかねないのが魔力バッテリーだ。極端な話、数人くらい殺してでも止めるべきことだろう。それでも、総合的には犠牲が減るのは確実だと思えてしまう。まあ、やらずに済むのならそれが一番ではあるが。


 感覚が麻痺しているのは否定できないが、これまでの経験で殺さないという選択の難しさを理解してしまっている俺がいる。こちらを殺そうとしてくる相手に甘い態度を取ると、余計に被害が増えるという経験則があるんだよな。


 できることならば、殺したくはない。今でも変わらない気持ちはある。だが、仕方ないと諦めている部分もあるんだ。


「あまり取りたい手段ではないが、代案がなければやるべきだな。そこで手を抜けば、多くの問題が起こるだろう」

「そのあたりは、ミルラさんたちに任せるのです。私にできるのは、研究だけなのです」


 研究一筋でコミュニケーションに難があるタイプだと、困ってしまう。ただ、マリンにはその心配はない。だからこそ、できる限り研究に集中できる環境づくりも大事になるな。そうしておけば、適切に報告してくれると思える。


「マリンくらい接しやすいのなら、まあ十分か。なら、後は二択だな」

「できることならば、大規模な魔力バッテリーの活用に動きたいのです。もちろん、指示には従うのです」


 そうなると、マリンの発明から思い浮かぶものは。やはり、最初に出会った時のからくり人形だな。それを大規模にするのなら、工場が作れないだろうか。


 魔力バッテリーが多く生産できたのならば、とにかく使い道を考えるための実験もできる。悪くないんじゃなかろうか。


「なら、あの人形の技術を応用して、道具を自動で作るための大規模な施設は作れないか? それこそ、魔力バッテリーとか」

「分かったのです。では、そのように動くのです。これから、よろしくお願いするのです。ね、レックス様」


 マリンは笑顔で頷いた。ひとまず、方針を立てることはできた。後は、実現に向けて動いていかないとな。アカデミーでも、さらなるスカウトができると良いだろう。


 これからも、やるべきことは多い。俺はマリンに頷き返しながら、あらためて気合いを入れた。

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