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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
12章 未来のために

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406話 大きな決意

 マリンとの交流も、二日目になった。朝にミルラから報告を受けたところによると、報酬の話はすぐにまとまったのだという。ひとまずは、順調に進んでいるだろう。


 とはいえ、あまり長居もできない。肝心の研究を邪魔するだろうし、俺にだって他にやるべきこともあるからな。ブラック家に関しては、ジャンに運営を任せているようなものとはいえ。


 アカデミーの中だけでも、できる限り交流を広げていきたくはある。とはいえ、今のところの第一優先はマリンではあるが。二兎を追う者は一兎をも得ずの考えも、大事だよな。最終的には、バランスの話になるだろうが。


 今日も前日と同様に、学校もどきの生徒たちと一緒にマリンのところに来ている。


「マリンさん、他にも発明できているものはあるんですか?」

「僕も気になるかも。なんとなく、マリンさんのすごさは分かるつもりだし」

「魔法を込めておいて、後で発動する道具ならあるのです。少し大きいので、持ち運びはできないのですが」


 シュテルから話を切り出して、和やかに会話が進んでいる。相性が良さそうで、何よりだな。特にシュテルは、積極的に交流を進めてくれているようだ。


 この調子で、できるだけ仲良くなってもらいたいものだ。そうすれば、スカウトにだって近づくだろう。それに、雇うとなればジュリアたちとの関係性も大事になってくる。人間関係が崩壊するようなら、大問題だからな。


 ひとまず、ミルラは俺を紹介してくれる程度には仲が良い。だから、今のところは問題ないと言えるのだが。


 それにしても、マリンの発明は本当に有用だな。俺も闇魔法で似たようなことができるが、誰でも運用できることの価値は大きい。本当に、よそに渡したくないレベルの才能だ。


 本音を言えば、マリンが評価されていないのに感謝したいくらいだ。だから、スカウトの可能性が見えているんだからな。


「レックス様の本気が込められるのなら、戦略が変わる」

「その通りよ! レックス様ほどの魔法が他の人でも運用できるとなれば、どんな要塞でも落とせるわ!」


 俺の全力が撃てれば、まあ大抵の要塞は粉砕できるだろうが。中にいる人ごと吹き飛ばしていきそうでもあるよな。下手をしたら、ミサイル爆撃以上の被害が出るのではないだろうか。


 そう考えると、あまり実現してほしくない可能性ではある。とはいえ、もう現物がある段階だから、研究を止めても遅いだろう。ならいっそ、どう対策するべきかを現物を見ながら考えるのが妥当だろうな。


「話に聞くより、レックス様は凄まじいのです……」


 マリンは目を見開いている。要塞を落とせる個人とか、現実感が薄いのは分かる。俺だって、あまりにも強すぎると思っているくらいだからな。


 とはいえ、自分の力だからまだマシではあるが。これが敵なら、俺は落ち着いて眠れなかっただろう。


「シュテルの言うような運用は、あまりされてほしくはないが。実際、どの程度は可能なんだ?」

「理論上は、大魔法でも可能なのです。実証は、ここに大魔法使いを連れてこないとできないのです」


 フィリスの五曜剣(チェインブレイド)が込められるようなら、それこそ戦略兵器と言って良いのではないだろうか。そこまでできているのなら、やはり闇に葬ろうと考えるのは得策ではないな。


 いっそ、相互確証破壊みたいな関係になったりしないだろうか。あれもあれで、権力を持った個人の暴走が怖い概念ではあるが。もう完成しているのだから、どう付き合うかを考えるべきだろう。それは間違いない。


「そうか。闇魔法については、込められそうか?」

「同じく、理論上は可能なのです。ただし、当然ですが実証はまだなのです」


 本当に、かなり研究が進んでいるみたいだ。とんでもない才能だということが、あらためて分かる。ミルラといい、軽んじられているというのが信じられないくらいだ。


 明らかに傑出した存在なのだが、どうして見過ごされてきたのだろうか。まあ、魔力を持っていない人は軽んじられるというのは、経験的にはよくあることではあるのだが。悲しい話ではあるが、都合が良いのが余計に悲しいところだな。


「なら、せっかくの機会だし試してみないか? まずは、軽い魔法からでも」

「そうですね。協力、感謝するのです」

「俺としても、マリンには期待しているからな。先行投資と思えば、安いものだ」

「評価していただけるのは、本当に嬉しいのです。私としても、良い付き合いをしたいのです」


 そう言って、マリンは微笑んでくれる。かなり良い感触なので、このまま話を進めても良いんじゃないかと思える。


 まあ、とにかく実験が終わってからだな。そこを軽く扱ってしまえば、スカウトは受けてもらえないだろう。


「なら、まずはその一歩だな。その装置は、どこにある?」

「少し待ってください。持ってくるのです」


 マリンは後ろを向いて歩き出そうとする。重いものを運ぶのなら、俺の出番だろう。男ということを抜きにしても、闇魔法で身体強化みたいなことをできるからな。俺が適任のはずだ。


 ということで、歩くマリンについていく。


「持ち運びができないと言っていたじゃないか。俺が運ぶよ。気をつけてほしいことを言ってくれ」

「あまり強い衝撃を与えると、壊れてしまうのです。逆に、それくらいなのです」

「ふむ。戦場で運用するには、不安要素が多いな。むしろ救いと言えそうではあるが」

「レックス様は、戦争はお嫌いなのですか?」


 首を傾げながら、問いかけられる。どういう意図だろうな。まあ、ここでごまかさないと関係が築けないようなら、いずれ崩壊するだろう。なら、本音を話すのが妥当だ。


 軽く息を吸って、俺はマリンに言葉を返していく。


「無いに越したことはないと思っている。無論、必要なら戦う覚悟はあるが。実際に、何度も戦ってきた」

「僕たちも、何度も助けられたもんね。そもそも、拾ってもらえたから今があるわけで」

「そうね。レックス様、私の感謝は消えることなんてありません。未来永劫、あなたに尽くします」

「感謝は大事。私も感謝している。だから、なでなでして」

「ふふっ、本当に仲が良いのです。レックス様の人望かもしれませんね」


 マリンが笑顔を浮かべていた。この感じだと、ジュリアたちにも助けられたかもな。やはり、味方がいるという事実は大きい。あらためて感じるところだ。


 まあ、打算で仲良くしたいと思っているわけではないが。当初は打算を持っていたのも事実だが、今は本当に大切な相手だと思っている。マリンとも、そうなりたいものだ。


 マリンが足を止めて、大きくなったシリンダーのようなものの前に立つ。子供くらいなら入りそうな大きさをしていた。


「さて、これか。では、いくぞ」

「軽々と……。びっくりしたのです……」


 そのまま運んでいき、前日にも使った広場へと向かっていく。そこに装置を置いて、マリンの説明を聞いていく。まあ、簡単だ。魔法を装置の中に打ち込めばいいらしい。


「さあ、これに魔法を込めれば良いんだな。闇の刃(フェイタルブレイド)! どうだ?」


 魔法を撃つと、装置に吸収されているようだった。そのまま静かになり、しばらく。問題が起きているようには見えない。


「少し待ってほしいのです。……ふむ。良さそうなのです。……発射!」


 マリンが操作すると、闇の刃(フェイタルブレイド)が飛んでいき、やがて爆発して大きなクレーターのようなものを作った。


 完全に、俺の魔法と同じことができている。その気になれば、制御を俺の手に取り戻せそうなことも分かった。つまり、敵の魔法を奪う用途で使うのは厳しいだろうな。俺の魔法を奪われる可能性も低いということなので、良い悪いは半々くらいではあるか。


 マリンの嬉しそうな顔を見て、俺の決意は固まった。やはり、スカウトしたい。そう考えて、軽く深呼吸をする。そして、マリンの目を見ながら話していった。


「うまく行ったみたいだな。なあ、マリン。これからも、実験に協力したいと思う。だから……」


 俺が言い切る前に、マリンは俺の唇に人差し指を当てる。そして、柔らかい笑みを浮かべた。


「そこから先は、私から。レックス様。あなたに、私の研究を役立ててもらいたいのです」

「なら……!」

「はい、よろしくおねがいします。私は、あなたに仕えたいのです」


 一礼して笑う姿は、きっとこれから先も忘れないだろう。マリンという心強い味方を得られたことで、ブラック家の勢力も拡大していくはずだ。


 今後が、楽しみだな。素直に、そう思えた。俺も、心からの笑顔を浮かべられた。

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