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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
11章 示すべき価値

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397話 ハンナ・ウルリカ・グリーンの狙い

 ルース殿が抱えた問題に協力し、わたくしめ達は解決まで導きました。とはいえ、わたくしめが役に立ったとは言い難くもあるのですが。


 とはいえ、わたくしめは次について考える時間を得たのです。近衛騎士としての仕事など、片手までこなせるものばかりでしたから。だからこそ、近衛騎士の質が低いことが分かるというものです。誰一人として、尊敬できる相手など居なかったのです。


 ただ周囲に威張り、ろくな任務もこなさず、あまつさえ民衆に金銭や接待を要求する始末。王家の恥と言っても過言ではなかったのです。


「やはり、近衛騎士たちは見苦しいですね……。いい加減、付き合いきれません」


 ですから、わたくしめは近衛騎士であることを捨てても良いと思ったのです。仮に今の立場を失ったとしても、知ったことではない。むしろ、汚名を背負わずに済むというもの。


 わたくしめが尊敬できる相手は、近衛騎士たちが軽んじる中にいる。そんな状況を甘んじて受け入れるほど、わたくしめは寛大ではない。


 近衛騎士とは、もはやわたくしめにとっては侮辱すべきものでしかなかったのです。


「実力もなく、努力もしない。そのまま、他者を見下すだけ」


 そんな存在を、誰が尊敬するのでしょうか。これまでのわたくしめは、愚かだった。近衛騎士という名に憧れて、実情を理解していなかったのですから。知っていれば、目指しなどしなかった。


 ただ、情報収集を怠ったわたくしめの落ち度でもあります。だからといって、近衛騎士たちが素晴らしいなどとは、口が裂けても言えないのですが。


 愚かでくだらない、ただのガラクタ。わたくしめにとっての近衛騎士など、ゴミ同然のものだったのです。


「ミーア様にもリーナ様にも、ふさわしくありません」


 今の近衛騎士が両殿下の側ではべるなど、許されることではありません。両殿下は才能もあって努力家で、強い信念を持った方々なのですから。


 やはり、今の近衛騎士は不要な存在なのです。そう確信できました。もう、迷う必要などないのです。生きているだけで害悪となる存在が、近衛騎士と名乗る。大罪という言葉ですら生ぬるい。死んでも償えないほどの、重い罪なのです。


「排除するためには、どうすれば良いでしょうか。しっかりと、検討しなければ」


 安易な手段では、それこそ両殿下の名に傷をつけてしまいますからね。とはいえ、今の近衛騎士をのさばらせるよりはマシだとは思いますが。ただ、両殿下は光のもとで生きていてほしいと思うのです。皆の憧れる存在であってほしいと思うのです。


 もちろん、友人として側にいる中で、両殿下の人格を知っていきました。きっと、王家の責務を煩わしいと考えているのでしょう。ですが、その面倒な責務を果たそうとしている。ですから、わたくしめも支えたいのです。


 わたくしめのやるべきことは、近衛騎士に名誉の戦死をしてもらうこと。きっと、そのためにわたくしめは近衛騎士になったのです。


 計画を進めるためにも、少しずつ形を持たせていく。わたくしめは、具体的になるように考えを進めていきました。


「やはり、難しい任務にあたって死んでもらうことが理想でしょうか」


 とはいえ、本当に難しい任務だと分かっているならば出撃などしないでしょう。分かりきったことです。誇りなど持ち合わせない愚か者なのですから。


 ですから、難しい任務を用意するだけでは厳しいのです。どうにかして出撃させるためには、なにか手を打つ必要がありますね。


「簡単な任務だと誤認させた上で、油断している近衛騎士たちは倒れる。そのように進めたいものです」


 雑な仕事をするのは目に見えていますからね。ただ、仕事をした形だけ取られないように、策は必要ですが。首を上げることで任務の達成とする程度の縛りは、最低でも必要でしょう。


 ただ、任務の出し方を失敗すれば、そこらの人を殺しかねない。近衛騎士とは、あまりにも愚かなのです。とはいえ、もっと先に考えるべきことがありますね。そもそもどうやって難しい任務を用意するか。最大の課題を解決しなければなりませんから。


「ただ、都合が良い任務が転がっているかが問題ですね」


 どうにかして、任務を用意しなければなりません。必ずしも自作自演である必要はありませんが。一見簡単に見える任務があれば、そこに死の罠を潜ませるだけでよいのです。


 ただ、あまり策を練りすぎると、露見の可能性もありますからね。慎重に行動すべきであることに、変わりはありません。


「誰に手伝ってもらえれば、実現できるでしょうか……」


 わたくしめだけで思いつくものは、有効な策とは言えませんでした。成功するとは思えないものばかりが浮かんできたのです。


 ならば、他の誰かに手を借りなければなりません。無論、信頼できる相手にですが。わたくしめを裏切らない人など、限られていますからね。


「ひとまず、通話を使って密談してみましょう。両殿下やミュスカ殿、ルース殿あたりでしょうか」


 ハッキリと信じられるのは、そのあたりでしょうか。レックス殿は信じられますが、話を持ちかけない方が良いでしょうからね。わたくしめの策を知れば、苦しむでしょうから。


 密談に関しては、簡単ですね。レックス殿の生み出した魔法は、誰にも真似できませんから。会う必要もないまま会話ができる。とても有効な魔法を生み出していただけたものです。感謝したいですね。


 ミーア殿下やリーナ殿下は、案外残酷な側面も持ち合わせています。わたくしめには、見せてくれていますから。ですから、きっと協力してくれると思うのです。


 残りのミュスカ殿やルース殿は、わたくしめの大切な友人です。そして、共犯者となれる人です。ということで、四人に通話していったのです。


 それからしばらくして、わたくしめには転機が訪れました。ミーア殿から、通話が来たのです。


「ふむ……。闇魔法使いが、突然現れたと。でしたら、近衛騎士に対処してもらいましょう」


 そのように、ミーア殿下と策を練っていきました。闇魔法使いであることを知っているのは、わたくしめとミーア殿だけなのだとか。つまり、狙い目です。


 あまつさえ、闇魔法使いは多くの財を抱えているのだとか。ちょうど良いと思わざるを得ませんでしたね。きっと、今の近衛騎士たちは敵を殺して罪を奪おうとするのでしょうから。その強欲を、自らの死であがなうのです。


 ですから、闇魔法使いを倒しに向かってもらいましょう。ただの市民だと知られている方に対して、ね。


「レックス殿をバカにするくらいなのですから、闇魔法使いだって倒せるでしょう?」


 もし仮に、突然闇魔法使いに襲われたりしてもね。それでこそ、あなた達の言動に見合うのです。ですから、身の程を思い知っていただきましょうね。きっと、悔いる間もなく死ぬのでしょうけれど。


「さて、わたくしめも準備をしなくてはいけませんね。ただ近衛騎士を殺しただけでは、ダメなのですから」


 ミーア殿下とリーナ殿下を守る騎士は、絶対に必要ですからね。わたくしめは、新しい騎士を導かなくてはならないのです。実力と高潔さを兼ね備えた、真の騎士になるように。


 わたくしめにできるか、不安ではあります。ですが、進むべき道は決まっていますから。ならば、突き進むだけです。


「レックス殿、手伝ってくださいね。わたくしめも、あなたのために頑張りますから」


 闇魔法使いを倒してもらいましょう。近衛騎士にできなかったことを、あなたが達成するんです。ですから、きっとあなたの名だって広まるはずですよ。これまでの近衛騎士より素晴らしい人としてね。


 ですが、わたくしめだって負けません。あなたの隣に立てる様に、わたくしめの価値を示すのです。


「あなたと胸を張って友達だと言えるように。わたくしめは立つのです」


 立派な騎士になって、きっとあなたを支えますからね。ですから、ずっと友達でいてください。わたくしめを、見捨てないでください。


 お願いですからね、レックス殿。

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