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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
10章 一歩のその先

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354話 願いを通して

 ついにカールが動き出したようだ。ということで、すぐにルースとともに転移する。ミュスカとハンナが同じ場所に居たので、そこに向かって。とりあえず、ふたりは無事なようだ。ケガすらしていない。ひとまずは安心できた。


 後はスミアだが、別の場所にいるようだな。さて、どうやって助けに行こうか。あるいは、助けが必要な状況かも確認しないとな。


「ミュスカ、ハンナ、状況はどうなっている!?」

「今のところは、抑えられているかな。とはいえ、何人か犠牲者は出てしまっているよ」

「強引に突き破れば、まとめて始末は可能なのでありますが。ただ、後始末に困ります」


 軽く探った感じ、カールの配下の兵が暴動を起こしているような状態みたいだな。犠牲者も出ているとなれば、早く終わらせたいところだ。本当に、面倒なことをしてくれたものだな。


 だが、冷静にならなければな。ホワイト家の中で動きが起こっている以上、雑に力を振るえば、味方にも被害が出る。味方でなくとも、中立の存在とか、ただ普通に働いているだけの人とかも。


 とりあえずは、慎重に動きたいな。今のところ、小康状態にあるようだ。急がなければ犠牲が増えるような状況ではないように思える。むしろ、誰を殺すべきかをハッキリさせておいた方が犠牲は減りそうな印象だ。


 屋敷に罠を仕掛けているのだから、それを利用すれば、うまく目的の相手だけを殺せるんじゃないだろうか。腕の見せ所ではあるのだが、プレッシャーがすごいな。判断を間違えれば、余計に人を殺してしまうのだから。


 ルースは落ち着いた様子なので、少しだけ安心できる。今のような状況だって、想定していたのだろうから。まずは、ルースの意見を聞いてみたいな。


「そうね。あたくしの味方に死なれては困るもの。慎重に動かなくてはね」


 とりあえず、良かった。敵を殺すために、他の人間ごと拠点を吹き飛ばそうとか言われなくて。そういう案を出されていたら、流石に反対していたと思う。


 まあ、今は先のことを考えるべきだよな。まずは、状況をちゃんと整理しよう。


「カールはどこに居るか、分かるか?」

「執務室だね。スミアさんも、隣にいるみたい」


 スミアが居るということは、捕まえられたのだろうか。なら、できるだけ早く救出しないとな。カールのそばに居るのなら、ひどい目に会いかねないし。


 まあ、一応確認しておくか。スミアがどういう状況か、しっかりと知っておきたい。


「隣にというのは、人質としてか?」

「いえ。カールに協力している様子でありましたな」


 ハンナの言葉を聞いて、耳を疑った。まさか、スミアが裏切っていたとでもいうのか? ウソだと信じたいが、いくらなんでも冗談を言っているとは思えない。ということは、本当にスミアはカールに協力しているのだろう。


 どうして、スミアは裏切ったんだ? 俺達と楽しそうに時間を過ごしていたのは、演技だったのか?


「そんな、スミアが……」

「言っている場合ではありませんわよ、レックスさん。アイボリー家も、動き出したようですもの」


 つまり、連動しているということ。偶然というのは、考えにくいよな。ということで、魔力を通してアイボリー家の様子をうかがっていく。領地の境あたりに大勢が集まっているような感覚があった。恐らくは武装しているように感じる。


 ということは、こちらに向けて軍を動かすような狙いがあるのだろう。カールの反乱と合わせてということになるな。


「なら、同時に二か所で……。やはり、カールとアイボリー家は共謀していたのか」

「そうね。だから、あたくし達も分かれる必要があってよ。以前の予定通りね」


 予定通りということは、同時に動く可能性が高いと思っていたのだろう。実際、そうなっている。ルースの先見の明が光るところだ。


「私とレックス君は、アイボリー家に対処しようね。ふたりでの、共同作業だね」


 ミュスカはそう言って微笑みかけてくる。しっかりと、アイボリー家の計画を潰さないとな。そうじゃないと、ルースが危ないのだから。


「ずいぶんと物騒な共同作業もあったものだ。だが、ルースのためにもやり遂げないとな」

「ええ、任せるわよ。こちらは、あたくしとハンナさんでどうにかするわ」


 予定では、スミアも味方のはずだったのだがな。本当に、悲しいことだ。せめて理由が知りたいが、難しいだろうな。ルースが許すとは思えないし、そもそも戦いになるだろうから。あまり手加減はできないだろう。


「分かった。無理はするなよ。いざとなったら、俺を呼んでくれ。盤面をひっくり返してやるさ」

「私一人を置いていくなんてこと、しないよね? ね、レックス君」

「ああ。すぐにアイボリー家を片付けて、お前と一緒にルースに手を貸すだけだ」


 手段を選ばなければ、簡単に倒せるだろうからな。周囲が敵ばかりだと、ある意味で楽だ。とはいえ、余裕がある内は、アイボリー家で計画を主導している人間だけを殺したいものだが。


 まあ、理想論であって、現実的ではない。敵兵だってある程度は殺さないと、逃げることすらしないだろう。戦いというのは、嫌なものだ。だが、みんなの命を背負っているんだ。敵を殺してでも、仲間を守る。もう決めたことだ。


「まったく、あたくしを信用できていないのではなくて? どうとでもなるわ」

「そうでありますな。わたくしめ達とて、武人でありますゆえ。不覚は取りませんよ」


 ふたりとも、堂々としている。まあ、実力的には問題ないと思う。真正面から戦う分には、ルースとハンナに勝てる存在がいるとは想定しづらい。


 とはいえ、悪質な手段を使われたら例外がある。贈ったアクセサリーの防御魔法があるとはいえ。どうしても、心配になるな。


「だが、スミアが裏切っているんだよな? かなり深いところまで、知られていないか?」

「問題なくてよ。予定通りだもの。あたくしの戦場を、目に焼き付けておくことね」


 まっすぐにこちらを見ながら、胸を張って告げられる。まあ、信じることしかできない。なら、信じるだけだよな。とはいえ、俺にだってできることはある。なるべく早く、アイボリー家での問題を解決することだ。


「それは、帰ってこないとできないな……。まあ、さっさと終わらせるよ」

「私だって一緒なんだからね。全部ひとりで解決しようとしないこと!」


 ミュスカに注意される。とても大事なことだ。俺ひとりでできることと、ミュスカと協力してできることはぜんぜん違う。それに、みんなに頼れと言われているからな。


 実際、俺ひとりで全部解決できるわけがない。みんなに頼ることは、絶対に必要なんだ。ルースもハンナも、ミュスカにも。


「もちろんだ、ミュスカ。しっかり頼らせてもらうよ」

「あたくし達のことはあたくし達で終わらせてよ。だから、安心なさいな」

「わたくしめとて、近衛騎士でありますゆえ。ご心配めされるな」

「ああ、任せた。それじゃあ、行ってくるよ。ミュスカ、準備は良いか?」


 ミュスカはしっかりと頷いた。そして、笑顔で元気よく拳を握る。やはり、ミュスカは心を落ち着かせてくれる存在だな。


「もちろんだよ。レックス君こそ、準備は良い?」

「当然だろ? じゃあな、ルース。吉報を持ち帰るよ」

「その頃には、あたくし達の華々しい勝利を知ることになるでしょうね。どちらが先か、競争よ」


 不敵に笑いながら、ルースは言っていた。そして、手を上げて去っていく。それを見ながら、俺はミュスカとともに転移した。

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